全国でカメムシの大量発生が続く|農作物への影響が深刻化
2025年夏、富山県や広島県を中心にカメムシの大量発生が報告され、農業関係者は重大な被害を懸念しています。特に稲作への影響が顕著で、コメの品質低下や生産量減少の恐れが高まっています。また、神戸市でも農協と連携し、田んぼでのカメムシ調査と対策が強化されています。
富山県の状況:過去最多・平年の6倍に達する異常発生
富山県では2025年7月現在、カメムシの発生が平年の約2.5倍から、6月の段階ではなんと平年の6倍にものぼる異常な増加を見せています。県内全域の水稲周辺や畦畔、雑草地で高い密度で発見されており、6月時点の調査では捕獲数平均が13.5匹(平年5.4匹)に達し、前年の14.1匹に近い水準です。
この大量発生の背景には、春から続く高温傾向があるとみられています。また、イネ科雑草の除草が不十分な田んぼ周辺は特に生息密度が高いため、雑草管理の徹底が課題となっています。カメムシは稲の穂を刺して吸汁することで、黒い斑点が入る「斑点米」を引き起こし、コメの等級や市場価値を下げるリスクが懸念されています。
こうした状況を踏まえ、富山県農林水産総合技術センターは2025年7月24日に「病害虫発生予察注意報第3号」を発表しました。今後さらに増殖する可能性が高いとして、農家や関係機関に防除対策の徹底を呼びかけています。
広島県も2年連続の注意報発令 水稲被害が懸念される
広島県でも、2024年に引き続き2025年も水稲を狙うカメムシ被害への注意報が発令されており、2年連続で警戒が強まっています。農業関係者は害虫の発生動向を注視し、被害の拡大防止のための迅速な対応を呼びかけています。
広島県は水稲の生育期に合わせて定期的な調査を実施し、発生地域の特定や被害防止策の情報提供に努めています。これにより農家の適切な防除作業が促され、被害軽減に向けた取り組みが進められています。
神戸市では調査強化と品質管理に注力
神戸市でも農協や関係機関が連携し、田んぼでのカメムシ発生状況を詳細に調査しています。コメの品質低下をもたらす斑点米の発生防止のため、早期発見・早期対策を重点に置いた取り組みが求められています。
具体的には、発生密度の高い田んぼにおける草刈りや水管理、適切な農薬散布のタイミング調整などを推奨し、カメムシ被害の影響を最小限に食い止める努力が続けられています。
カメムシ大量発生の原因と今後の見通し
- 高温傾向の継続:春から夏にかけての記録的な高温がカメムシの成長・繁殖を促進しています。
- 雑草管理の不徹底:イネ科雑草がカメムシの越冬・増殖場所となっているため、雑草除去の不足が発生増加の一因となっています。
- 越冬個体数の増加:前年からの越冬個体数が増え、それがさらに今年の大量発生を生んでいる可能性があります。
農林水産総合技術センターやJAなどの指導のもと、草刈り・除草・耕作管理・農薬適用管理を早急に徹底し、被害軽減に向けた体制強化が急務です。これらの対策を怠ると、斑点米の発生による収入減・品質評価の低下といった影響が農家の経済状況を直撃する恐れがあります。
農家・消費者双方にとって重要な問題
カメムシ被害は、単に生産者の収量減だけでなく、消費者が手にするコメの品質低下ももたらします。特に「斑点米」は見た目が悪く、食味にも影響が出るため市場価値が下がりがちです。そのため、農家の適切な管理とともに、消費者の理解も必要です。
地域社会と行政、農業関係者が一丸となって防除や情報共有を進めることが、今後の被害拡大防止に欠かせません。富山、広島、神戸の事例は、日本各地でのカメムシ対策の重要性を改めて示しています。