3メガバンクが普通預金金利を一斉に0.3%へ引き上げ――日銀利上げで33年ぶりの高水準に
日本の大手銀行である三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の「3メガバンク」が、普通預金の金利を年0.3%へ引き上げる方針を固めました。
この水準は、日銀の利上げを受けたもので、およそ33年ぶりの高水準といわれています。金利引き上げの実施は来年2月からが予定されています。
長く続いてきた「超低金利時代」に、ようやく目に見える形で変化が出てきたことで、家計や企業の資金運用にとっても大きな転換点となりそうです。
普通預金金利0.3%とは?これまでとの違い
まず、「普通預金金利0.3%」という数字がどれくらいの水準なのかを、これまでとの比較で見てみましょう。
- これまでの3メガバンクの普通預金金利:年0.2%前後
- 今回の引き上げ後:年0.3%
たとえば、三菱UFJ銀行の普通預金金利は、日銀の政策金利引き上げを受けて2025年3月以降に0.1%から0.2%へアップし、その後も引き上げが続いてきました。今回さらに0.3%になることで、ここ数十年で見てもかなり高い部類となります。
数字だけ見ると「0.2% → 0.3%だから、たった0.1%の違い?」と感じるかもしれませんが、金利はもともとの水準が低かっただけに、「5割増し」ともいえる変化です。
実際の利息で考えると、次のようなイメージになります(税引前・概算)。
- 普通預金100万円を1年間預けた場合
- 金利0.2%:利息 約2,000円
- 金利0.3%:利息 約3,000円
これまでは「預金してもほとんど増えない」と感じていた方にとっても、少しずつですが利息の存在感が戻りつつあると言えます。
なぜ今、金利が上がるの?背景にある日銀の利上げ
今回の普通預金金利引き上げの大きなきっかけとなっているのが、日本銀行(日本の中央銀行)による利上げです。
日銀が政策金利を引き上げると、それに連動して市場の金利も上がり、銀行同士のお金の貸し借りや、国債の利回りなども上昇します。その結果、銀行が預金者に支払う普通預金や定期預金の金利も、少しずつ引き上げられていきます。
これまでは、長い間「ゼロ金利」や「マイナス金利」に近い政策が続いてきました。そのため、メガバンクの普通預金金利は、年0.001%や0.001%台といった、ほとんど利息が付かない水準だった時期もあります。
そこから少しずつ政策金利が引き上げられ、2025年時点では、メガバンクの普通預金金利は0.2%前後が「業界標準」の水準とされるようになってきました。今回の0.3%は、その「標準」からさらに一歩進んだ動きです。
3メガバンクがそろって0.3%にする意味
今回のポイントは、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行という、国内を代表する3つのメガバンクが、ほぼ足並みをそろえて普通預金金利を0.3%に引き上げるという点です。
メガバンクは、日本の家計や企業の多くが口座を持つ「基準」となる存在です。
3行が同じ水準にそろえることで、
- 「普通預金金利の基準は0.3%」という空気感が生まれる
- 他の大手銀行や地方銀行、ネット銀行にも、金利引き上げのプレッシャーがかかる
- 家計の金利に対する関心が高まり、預金や運用の見直しが進む
といった効果が期待されます。
すでに、インターネット銀行の中には、普通預金金利を0.2~0.6%程度に設定しているところもあり、「預金金利で銀行を選ぶ」動きは強まりつつあります。今回、メガバンクが0.3%まで引き上げることで、「利便性と金利のバランス」で銀行を選ぶ人も増えそうです。
ネット銀行や他行との比較:0.3%は高い?低い?
では、0.3%という金利水準は、ほかの銀行と比べてどうなのでしょうか。2025年時点の代表的な例をもとに、簡単に整理してみます。
- 3メガバンク(引き上げ後):普通預金金利 0.3%
- 一部の大手銀行・地方銀行:普通預金金利 0.2%前後
- ネット銀行(条件なしの通常金利):0.2~0.5%程度
- ネット銀行(各種条件を満たした優遇金利):0.3~0.6%以上のケースも
こうして見ると、0.3%という水準は、
- メガバンクとしてはかなり高め
- ネット銀行を含めた全体では中位~やや高め
といった位置づけになります。
ネット銀行には、「給与振込」「クレジットカード引き落とし」「投資信託の利用」など、いくつかの条件を満たすことで、普通預金金利が0.3%以上に優遇されるサービスもあります。一方で、メガバンクは全国に店舗があり、ATM網や対面相談など、安心感や利便性の高さが強みです。
今回メガバンクが0.3%まで金利を引き上げることで、
- 「店舗や相談窓口の安心感を重視しつつ、ある程度の金利も欲しい」
という人にとって、選択肢としての魅力が増すと考えられます。
家計への影響:預金が少しずつ「お金を生む」存在へ
普通預金金利が上がると、私たちの家計にはどんな影響があるのでしょうか。
預金金利の基本をおさらいすると、普通預金とは、
- いつでも自由に引き出せる
- 給料振込や公共料金の引き落とし口座にも使える
- 元本が保証され、預金保険制度により一定額まで保護される
という、日常生活に欠かせない預け先です。
その金利が0.3%になることで、これまでよりも「預けておく意味」が少し高まります。
もちろん、物価が上がっていけば、預金の利息だけで「資産が増えた」とは言い切れない面もあります。しかし、同じ普通預金であれば、金利が高いほど手元に戻ってくる利息も増えます。
特に、ある程度まとまった金額を長期間預ける人にとっては、「どの銀行に預けるか」という選択が、今後はより重要になっていきそうです。
定期預金や他の商品への波及も
普通預金金利が引き上げられると、多くの場合、定期預金など他の預金商品の金利にも影響が及びます。
実際、三菱UFJ信託銀行では、2025年12月時点で、スーパー定期などの定期預金金利が、1年物で0.275%、3年物で0.35%、5年物で0.40%といった水準になっています。
また、ネット銀行や一部の銀行では、キャンペーンなどで定期預金の金利を0.5%以上に設定しているケースもあり、金利環境全体が少しずつ「金利を意識する時代」に戻りつつあることが分かります。
普通預金金利の上昇は、
- 「いつでも引き出せるお金」を置く場所
- 「しばらく使わないお金」を増やすための預け先
をあらためて考えるきっかけにもなります。
これから預金者が気をつけたいポイント
今回の3メガバンクの普通預金金利引き上げを受けて、預金者として意識しておきたいポイントを整理してみます。
- 金利は銀行ごとに違う
同じ「普通預金」でも、銀行によって金利水準は大きく異なります。メガバンクが0.3%に上げたとしても、ネット銀行や一部の地方銀行では、それ以上の金利が設定されている場合もあります。 - 金利は「変動」する
普通預金金利は、多くが「変動金利」です。日銀の政策や市場金利の動きによって、今後上がることもあれば、下がることもあり得ます。 - 利便性や安全性とのバランスを考える
金利だけでなく、ATMの使いやすさ、アプリの操作性、相談窓口の有無など、使い勝手も大切です。
「メインバンクはメガバンク、金利重視の預け先はネット銀行」といった使い分けも選択肢になります。 - 税金も忘れずに
預金の利息には、原則として20%の税金(国税15%・地方税5%)がかかります。
たとえば、金利0.3%で1年間に3,000円の利息がついても、税引後に手元に残るのは約2,400円となります。
「預金金利を意識する」時代への一歩
長らく日本では、「預金してもほとんど増えない」状況が続いてきたため、預金金利をあまり気にしてこなかった方も多いかもしれません。
しかし、今回のように3メガバンクがそろって普通預金金利を0.3%へ引き上げるというニュースは、「お金の置き場所を考え直すきっかけ」になり得ます。
今後も、日銀の政策や市場金利の動き次第で、預金金利は変化していきます。
預金は、元本保証という大きな安心感がある一方で、金利水準によって「増え方」が大きく異なります。
これからは、「どの銀行に、いくら、どの期間預けるか」を意識しながら、預金と上手に付き合っていくことが大切になっていきそうです。



