発達障害の子どもたちを支える新拠点「はーとのもり」が長崎市に開設

早期療育と包括的支援を実現する施設がスタート

長崎市は、子どもの発達に関する悩みや不安に寄り添うための新たな拠点として、10月1日に「こども発達センター『はーとのもり』」をオープンしました。茂里町の障害福祉センター内に設置されたこの施設は、発達や成長に関する課題を抱える子どもたちとその家族を総合的にサポートするための重要な機関として、大きな期待を集めています。

愛称の「はーとのもり」は、「ハート(心)」と「森(茂里町)」を組み合わせた造語です。子どもたちの個性が芽を出し、森のようにのびのびと成長できる場所になってほしいという願いが込められています。この名称には、発達障害のある子どもたちが、それぞれのペースで自分らしく成長していくことを応援したいという、関係者たちの温かい想いが反映されているのです。

診療と療育を中心とした多面的なサポート体制

「はーとのもり」の特徴は、単なる相談窓口ではなく、診療・療育機能を備えた包括的な支援施設であることです。施設内には診療所が設置されており、小児科医による診察を通じて、発達に課題がある子どもや発達について心配を抱える保護者からの相談に対応しています。医師のカウンセリングを通して、それぞれの子どもに必要な支援を提案することで、個別のニーズに合わせた対応が実現しています。

診療体制の充実も重要な特徴です。従来の課題であった診療待機期間の解消を目指して、1日5診体制を導入し、より多くの利用者が適切な診察を受けられる環境を整備しました。この体制により、保護者たちが抱える不安が少しでも早く軽減されることが期待されています。

さらに、「はーとのもり」では保育士、言語聴覚士、公認心理士などの専門職を増員し、運動機能やコミュニケーション能力など、子どもの成長を多角的にサポートする「早期療育」を重視しています。複数の専門家が子どもの発達を評価し、医師も含めた情報共有を行うことで、療育の相乗効果につなげるという、チーム医療のアプローチを取っているのです。

児童発達支援センター「さくらんぼ園」との連携強化

長崎市内には、「はーとのもり」と連携する児童発達支援センター「さくらんぼ園」も運営されています。この施設では、就学前の発達につまずき、遅れ、偏りがある子どもたちが通園しており、それぞれの子どもに合ったプログラムや支援内容が提供されています。

「さくらんぼ園」では、子どもだけで通園する「単独通園」と、親子で週に1度通園する「親子通園」の2つの方式を用意しており、一人ひとりの発達段階に合わせてクラスを編成しています。園児たちが最初に向かう「プレイルーム」では、保育士たちが子どもたちの一人ひとりの育ちや生活の様子、行動の様子を注意深く観察し、どんな支援がその家族に合うのかをスタッフで話し合いながら支援を進めているのです。

このように「さくらんぼ園」では、長期的なチームサポートを視野に入れた、個別のニーズに応じた丁寧な関わりが実現しています。園の運営方針は、単に発達支援のための技術を提供するだけではなく、子どもたちと家族の全体的な幸福度の向上を目指しているのです。

社会全体での発達障害への理解が広がる中での施設開設

「はーとのもり」の開設は、発達障害に対する社会的な理解が広がる中で実現しました。発達障害についての認識が高まるにつれ、発達に不安を抱える子どもを持つ保護者の数も増加しており、これらの家族をサポートするための拠点の必要性が急速に高まっていたのです。

「はーとのもり」では、発達や育児に関する包括的な相談対応に加えて、障害福祉サービスの利用支援や、講演会・講座を通じた普及啓発活動も展開しています。市民への理解啓発を積極的に行うことで、発達障害のある子どもたちが地域社会の中で安心して生活できる環境づくりに取り組んでいるのです。

「つないでいく役割」としての機能

「さくらんぼ園」の園長は、施設の役割について「育児と療育支援の間だったり、保育園と家庭の間にあったり、つないでいく役割ができたらと思う」とコメントしています。このように、「はーとのもり」と「さくらんぼ園」は、保護者と療育支援、保育環境と家庭生活など、異なる領域を結びつける橋渡し役を担っているのです。

また、施設では研修の開催や訪問支援等を通じた指導・助言を行い、発達支援に携わる人材の質の向上にも力を注いでいます。このことにより、施設利用者だけではなく、地域全体における発達支援の水準向上も実現しようとしているのです。

子どもたちが安心して生活できる地域社会への願い

「はーとのもり」の目指す姿勢は、発達が少し気になったり、不安を持ったお子さんたちが気軽に来てもらえるような場所になることです。この言葉に込められているのは、発達障害のある子どもやその懸念がある子どもが、診断や治療を恐れることなく、自然な形で相談・支援を受けられる環境を作りたいという強い想いなのです。

長崎市では、子どもの発達支援についての問い合わせを受け付けており、発達に関する不安や悩みを持つ保護者は、気軽に相談することができるようになっています。「いろんな親子が『はーとのもり』に来て、安心して地域で生きていけるようになるといい」という願いの実現に向けて、この新しい拠点は、今日も子どもたちとその家族を温かく見守り続けているのです。

発達障害への社会的な理解が進み、早期療育の重要性が認識されるようになった今、長崎市の「はーとのもり」のような施設の開設は、全国的な課題解決の一つのモデルとなる可能性を秘めているといえるでしょう。

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