資生堂から生まれた「ファイントゥデイ」に関する最新ニュース
〈2度目の上場延期〉なぜ今「ファイントゥデイ」は決断したのか
パーソナルケアブランドとして知られる「TSUBAKI」や「uno」などを展開する、元資生堂のファイントゥデイホールディングスは、2025年11月5日に予定されていた東京証券取引所のスタンダード市場への上場を2度目となる延期を発表しました。この決定は、投資業界と消費者の双方に大きな波紋を呼んでいます。
この背景には、近年の日経平均株価の活況がある一方、「株式市場の動向などを総合的に勘案した結果」と公式に説明されています。実際、2024年にも同社はプライム市場での上場計画を撤回し、スタンダード市場への変更後も再び延期に至っています。今回の判断は、資生堂および出資する英国投資ファンドCVCキャピタルパートナーズにとっても想定外の展開でした。
「ファイントゥデイ」の成り立ちと事業の強み
ファイントゥデイホールディングスは、資生堂のパーソナルケア事業が独立した形で2021年5月に設立され、資生堂とCVCの共同出資でスタートした企業です。
- ヘアケアブランド:「TSUBAKI(ツバキ)」
- スキンケアブランド:「専科(SENKA)」
- メンズ用:「uno(ウーノ)」
現在はアジア11カ国・地域で展開し、日本国内外で高いシェアを誇っています。研究開発から生産、マーケティングまでを一体化した事業運営を強みとしており、生活者の日常に寄り添う商品展開に力を入れています。
2025年12月期の業績予想では、売上高1133億円(前年比5.5%増)、営業利益136億円(同6.9%減)、純利益77億円(同679.1%増)を見込んでいました。従業員数は2024年で2326名(臨時雇用者173名)と、規模も大きい企業です。
投資ファンドCVCの”誤算”と支配株売却検討
今回の上場延期に伴い、支配株比率を保有する投資ファンドCVCが売却を検討しているという報道が広がっています。投資的観点からみても、日経平均株価が好調な中での上場延期は異例と言えます。
ファイントゥデイの親会社であるCVCは、上場による資金調達や出口戦略を目論んでいたものの、市場状況や評価価格との乖離が懸念材料となったことから、現状の株式市場では計画通りの上場が難しいとの判断に至った可能性が示唆されています。
市場と消費者への影響
資生堂という国内最大級の化粧品メーカーから分離したファイントゥデイの上場延期が続くことで、パーソナルケア市場全体の投資熱やブランド価値への影響も小さくありません。IPO(新規株式公開)を通じた資金調達、新規投資家獲得が難航すれば、今後の商品開発やグローバル展開にも一定の制約を与えかねません。
- 投資ファンドの出口戦略が予想通り進まない可能性
- 既存ブランドの拡大や新規ブランド立ち上げへの資金調達手段に影響
- 消費者向けサービスや商品の質への波及も懸念
ファイントゥデイが支配株売却を検討
日経平均株価が堅調な中、ファイントゥデイの投資ファンドCVCによる支配株売却の検討が進められる可能性があると報じられています。これにより、ファイントゥデイの経営戦略や資本構成に大きな変化が生じるかもしれません。
CVCはグローバルファンドとして多数企業への投資実績があり、資生堂からパーソナルケア事業を買収した時も、事業価値の最大化と将来的な上場を見越した戦略でした。しかし、株式市場の不透明感や上場評価価格への懸念から、計画通りの実現が難しくなり、他の売却先を模索している可能性が高まっています。
資生堂による自主回収――品質管理への対応
2025年11月7日には、資生堂が製品の自主回収を発表しました。資生堂は国際的にも高い品質管理基準を持つ企業ですが、今回は一部商品の原料や生産過程で問題が判明し、消費者への安全配慮から自主的な回収に踏み切りました。
回収の対象となった商品や詳細な理由、消費者への対応などは資生堂公式サイトやプレスリリースで随時更新されています。こうした迅速な情報発信と対応は、企業の信頼性確保に貢献しています。
- 資生堂の品質管理体制は業界屈指
- 自主回収は消費者保護の観点から重要な措置
- 発表後も積極的な情報公開とサポートを継続
背景にある国内外市場の変動と未来の展望
資生堂をはじめとする国内化粧品業界は、この数年間、急速なグローバル展開やSDGs推進、アジア市場の成長など積極的な経営戦略を打ち出してきました。ファイントゥデイのようなパーソナルケア事業のスピンアウト・上場戦略はその代表例です。しかし、世界的な金利変動や経済情勢の不安定さが株式市場にも強く影響し、IPO計画自体が難航するケースが増えています。
今後は市場動向や消費者ニーズを見極めつつ、事業や資本戦略の柔軟な再構築が求められるでしょう。
消費者が意識しておきたい点
- ファイントゥデイや資生堂のブランド商品は今後も品質維持が最優先
- 市場変動にともなう経営判断が、消費者サービスや商品提供に波及する可能性がある
- 最新情報は企業公式サイトや報道で随時確認がおすすめ
まとめ――企業価値の再定義に向けて
本ニュースは、資生堂グループのパーソナルケア事業分社化・独立企業としての「ファイントゥデイ」が直面する現代的な経営課題を深く伝えています。企業の資本構成や上場戦略は、時代や市場ニーズによって臨機応変な対応が求められること。そして、品質維持や消費者保護への意識が常に重要であることも改めて浮き彫りとなりました。
今後は、市場の動向と消費者ニーズの双方を見極め、より健全な企業価値創造に向けて挑戦が続くことになるでしょう。


