長妻昭が語る――生活保護基準再改定案とその影響
生活保護の再改定案がもたらす波紋
2025年11月9日、政府による生活保護基準の再改定案が示され、大きな社会的議論を巻き起こしています。特に注目されているのは「最低でも2.5%減」という減額案で、これに対して生活保護の当事者や支援団体、専門家から強い反発の声が上がっています。「生きてはいけないと言われているよう」といった切実な意見をはじめ、日々不安な思いで生活をしている受給者が多い現状が浮き彫りとなりました。
厚労省案とその背景
厚生労働省が発表した案では、一部世帯には補塡措置が取られるものの、最低でも2.5%減額に踏み切る方針が強調されています。さらに、物価高騰や賃金上昇が社会経済情勢に反映されているにも関わらず、この減額案は「最低限度の生活を保障する」という生活保護の本旨からも疑問視されています。政府関係者は「国民の消費水準や社会経済情勢を総合的に勘案し、必要に応じて改定を行う」と説明しますが、実際には物価上昇や社会的格差の拡大という現実に追いつかず、強い懸念が広がっています。
生活保護基準引き下げと司法判断
- 2012年の衆院選で自民党は生活保護費給付水準の10%引き下げを公約。
- 自民党政権復帰後、三度に渡る基準引き下げが実施され、2013年から2015年まで減額措置が続く。
- 生活保護費の減額は「違法」とする最高裁判決(2025年6月27日)が出される。
- この判決を受け、受給者への遡及支給総額は4000億円超になる可能性が指摘されている。
長妻昭の発言――政治的背景と責任
長妻昭(元厚労相・党代表代行)は、過去の基準引き下げについて「野党だった自民党が民主党政権を追い落とす意図で生活保護基準引き下げを公約に盛り込んだ」と証言しています。「リーマン・ショック後に生活保護受給者が増加する中で、自民党は『受給者増は民主党政権の責任』と政治的争点化した」と指摘し、政権奪還後は厚労省が忖度せざるを得なくなったと振り返っています。長妻氏はまた、「社会保障、安全保障が揺らげば国や社会の分断につながる」と警鐘を鳴らしました。
彼の主張は、制度運営における政治的な駆け引きが、ひとりひとりの生活に直結する福祉政策に大きな影響を及ぼしてきたことを示しています。長妻昭は「今回の最高裁判決を真摯に受け止め、減額分の補償や遡り支給の協議会設置など、国の責任でしっかり対応すべき」と強く要請しました。
原告・関係者の声――「生きてはいけないと言われているよう」
- 減額措置によって、受給者の「最低限の生活」が厳しく脅かされている。
- 原告および支援者は「本来受け取るべきだった額の支払い」を求め、政府に謝罪を要求している。
- 暮らしの厳しさ、食費・医療費などにさえ困窮する実態が語られている。
実際、今回の再改定案では一部世帯で加算や特例措置が行われるものの、それでも減額となり生活が一層苦しくなるケースが想定されています。特に高齢単身世帯や子育て世帯では、引き上げの恩恵が及ばず、減額や据置きとなる世帯が多いことも明らかになっています。
高市首相の謝罪と政府の対応
この生活保護減額を巡っては、高市首相が公式に受給者らに謝罪する事態となりました。政府はこれまでの減額理由を「社会経済情勢の変化」に求めてきましたが、最高裁判決が違法と認定したことで、政策の根底が揺らいでいます。今後は、減額分の補償や遡及支給に加え、生活保護基準の見直しや制度そのものの再検討が求められます。
今後の生活保護制度の課題と展望
- 最低限度の生活保障をいかに担保するか。
- 物価高騰や社会的格差拡大による生活苦への対応。
特に2025年度以降は消費水準との乖離が深刻化し、現行制度の再検証が必須となるでしょう。
- 国民の「安心・安全な暮らし」のための制度運営と政治の責任。
- 当事者・支援団体と政策決定者の対話と、現場の声を反映した運営。
生活保護を巡る社会的議論のこれから
生活保護制度は、経済的困窮者にとって「最後の砦」であり、社会の安全網として重要な役割を担っています。しかし、近年は制度の引き締めや減額を含む見直しが繰り返し行われてきました。今回の再改定案に対する反発や、判決を受けた補償・謝罪要求は、制度の根幹に関わる重要な課題を突きつけています。
専門家は「経済的ショックや物価変動は生活困窮層を直撃する。セーフティネットとしての生活保護が十分に機能しなければ、格差や分断がさらに拡大する」と警告しています。今後も政策の見直しと現場の実態把握を重ね、誰もが「生きていける」社会の実現に向けた取り組みが求められます。
生活保護制度をめぐる 人にやさしい社会のために
長妻昭の主張や判決を機に、生活保護制度の根本に立ち返り、生活困窮者の現実を真正面から受け止める必要があるでしょう。制度改革は複雑な政治的・経済的背景を持ちますが、暮らしていくうえで「安心」と「尊厳」が守られる社会が、いまこそ強く求められています。



