【世紀の大発見】シジュウカラの「言葉」を証明した東大・鈴木俊貴准教授——動物言語学の新たな夜明け
はじめに――世界を驚かせた日本発の鳥の「言語」発見
2025年10月、東京大学・鈴木俊貴准教授による「シジュウカラが言葉を話す」という発見が国内外で大きな話題を呼んでいます。この研究は日本の自然観察に端を発し、20年にわたる地道なフィールドワークと科学的検証の成果として、多くのメディアや専門家から称賛されています。
動物の「声」に意味があるのでは?という素朴な疑問から始まった研究が、今や世界中の認知科学や言語学、動物行動学の最前線で語られる画期的な発見となりました。
シジュウカラの「言葉」発見まで――鈴木俊貴さんの歩み
鈴木俊貴さん(1983年東京都生まれ)は動物言語学者として東京大学先端科学技術研究センター准教授を務めています。独自の発想と熱意、そして「動物は自分たちの世界をどうコミュニケーションしているのか?」という根本的な興味から、中学・高校時代の生物部活動やフィールド観察に熱中。
大学・大学院で本格的な動物行動学、音声解析を学び、野外調査を重ねる中で、シジュウカラの鳴き声が場面ごとに違い、その行動と密接に関連していることを見つけました。
彼の「気づき」と地道な実証の積み重ねは、動物にも「言語」らしき体系があるという驚くべき結論へ導きます。
シジュウカラの驚くべき「言葉」能力とは?
- キーワードごとの鳴き声: 「ヒヒヒ」=タカ、「ピーツピ」=警戒しろ、「ヂヂヂヂ」=集まれ、「ジャージャー」=ヘビ(危険の警告)など、特定の状況や対象に対応した声を使い分けている。
- 文法の存在: 「警戒して集まれ(ピーツピ・ヂヂヂヂ)」という二語文を用い、語順を逆にすると意味が通じなくなる(「ヂヂヂヂ・ピーツピ」では警戒しない)。これにより、人間の言語と類似した「文法」や構造があることが明らかになりました。
- 意味づけと社会性: こうした鳴き声は、仲間との連携や捕食者への対応、子育て、食べ物探索など、集団で生活する上で大切な役割を果たしており、まるで社会生活を支える「言葉」のように機能していることがわかりました。
- ジェスチャーも加わる多層的コミュニケーション: さらに、鈴木さんは「翼をパタパタ動かす=お先にどうぞ」といった身振り(ジェスチャー)も発見。鳴き声と身振りの「統合」が、人間の非言語コミュニケーションと共通する進化的意義を示しています。
「動物言語学」という新たな学問領域の創設
鈴木俊貴さんが提唱した「動物言語学」という分野は、2022年に本格的な枠組みとして打ち出されて以来、世界の学会で大きな注目を集めています。
- 動物行動学、認知科学、進化生物学、音声学、言語学などの分野を横断し、動物たちはどのように「意味」を伝え合っているのかのメカニズムを解明。
- 「人間だけが言語を持つ」のではなく、動物も複雑なコミュニケーション体系を持ち得るという新しいパラダイムが提唱されたことで、既存の「言語観」を根底から揺るがしました。
こうした成果が認められ、鈴木さんは文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、日本生態学会宮地賞、日本動物行動学会賞、英国・動物行動研究協会国際賞など国内外の科学賞を多数受賞。
世紀の「検証実験」とは――映像で検証された驚きの知能
鈴木さんの研究は、地道なフィールドワークと科学的検証(たとえば軽井沢の森に巣箱を設置、記録装置で数年間観察)を特徴としています。
有名な検証実験の一つは「小枝ヘビ実験」。「ジャージャー」というシジュウカラの鳴き声を録音し、小枝に紐をつけてぶら下げて聞かせたところ、鳥たちが小枝を「ヘビかも」と警戒する反応を示し、声=意味が伝達されたことを証明しました。
また、文法実験では、二語文の語順を入れ替えただけで対応行動が激減するなど、単なる反射ではなく「意味と順序」を理解していることが科学的に裏付けられています。
なぜ「徹子の部屋」出演が注目されたのか?
こうしたある意味「地味」な研究が2025年、ついに「徹子の部屋」で特集。黒柳徹子さんも鳥好きで有名なことから、放送後、大きな反響を呼びました。
番組内では、「鳥の言葉がわかる」方法や機器の紹介だけでなく、実際の実験映像や鳴き声のサンプル、鳥たちが仲間を呼んだり、警戒を伝えたりするリアルな姿が紹介され、一般視聴者にも分かりやすく研究の核心が伝えられたという声が多く寄せられています。
シジュウカラ研究が社会にもたらす意味——人と動物のコミュニケーションの未来
この研究は、動物にも驚くべき知性があること、そして人間が生き物とどのように向き合うかという倫理的・哲学的な問いも投げかけています。
- 動物行動や言語研究の発展にとどまらず、「人と動物の共生」「ペットや野生動物のストレス軽減」「種の保存」などの社会的応用が期待されています。
- 「自分たちとは違う言葉、違う世界を持つ存在と理解し合えるか」という普遍的なテーマ――これこそが動物言語学の真髄です。
- 未来世代の子どもたちにも「いろいろな生き物の視点で世界を考える力」を届けたい、と鈴木さんは語っています。
多様なメディア・著書で広がる動物言語学の輪
- 2025年刊行の自伝的科学エッセイ『僕には鳥の言葉がわかる』(小学館)は発売直後から話題に。
- テレビ・ラジオ番組、講演会などにも多数出演し、研究内容・面白エピソードを分かりやすく紹介。
- 愛犬「くーちゃん」との生活で得た“身近な動物の観察”も研究の原動力になっているそうです。
「動物の声を聞く」ということ――研究者として大切なもの
鈴木さんは研究者を目指す若い人や子どもたちへのメッセージとして、「好奇心と、あきらめずに調べる力」の大切さ、「面白いなと思ったことに素直に向き合い、まず行動してみること」こそが発見の原点だと繰り返し語っています。
まとめ――人間と動物が「わかり合う」ことの可能性
20年におよぶ観察・実験から生まれた鈴木俊貴さんの研究は、「知識としての発見」だけでなく、人間以外の生き物の知性を認めるきっかけとして広く受け入れられています。シジュウカラの世界にあった「言葉」を知ることで、今までとは違う見方で動物と向き合い、人間社会や地球環境を考える一助となるかもしれません。
これからも「動物言語学」を通じて、生きものたちとの心の距離が一歩ずつ近づいていくことでしょう。




