斉藤和義、キャリア30年を超えてなお輝く——ダブルセットリスト『カモシカとオオカミ』ツアーが示す新たな地平
はじめに:30年を彩る挑戦と深化
斉藤和義は、2025年に自身初となる「ダブルセットリスト」ツアー『カモシカとオオカミ』を全国で開催し、キャリア30年以上を経てもなお進化への挑戦を続けていることを改めてファンと音楽業界に示しました。全国23都市34公演を巡る壮大なツアーは、彼の豊かな創作力、音楽的探究心、そしてステージごとに異なる顔を見せるライブ構成力が惜しみなく発揮された一大プロジェクトです。
ダブルセットリストの真意:「カモシカ」と「オオカミ」
このツアー最大の特徴は、各公演ごとに「カモシカ」と「オオカミ」という2種類の全く異なるセットリストを用意した点です。これは斉藤和義自身にとっても前例のない試みであり、毎回異なる物語や感情のうねり、演出の妙を観客と共有することで、従来のライブ体験にはなかった多層的な興奮と感動を生み出しました。
- 「カモシカ」セットリスト:繊細さや内省、温もりといった側面を全面に押し出し、しっとりと耳と心に染み入るような構成。
- 「オオカミ」セットリスト:野性的なエネルギーと勢い、ロックンロールの爆発力を全面に表現したダイナミックなステージング。
両セットリストは楽曲選定のみならずステージセットや演出まで異なり、同じツアータイトルでもまったく違ったライブ体験となる点が大きな話題となりました。
ライブ現場に見る「カモシカ」の繊細さ
ある公演の「カモシカ」セットリストでは、「俺たちのロックンロール」「YOU&ME」「攻めていこーぜ!」などのおなじみの曲に加え、新曲「HAPPY」や「スナフキン・ソング」、「小さな夜」といった穏やかな曲を巧みに配置。ゆったりと始まる中にも芯の通った格好良さがあり、着実に一歩ずつ歩みを進めていくような“内に秘めたドキドキ感”が特徴的です。
バンドのアンサンブルが際立つ「ハミングバード」や、シンプルな編成が曲の切なさを引き立てる「泣くなグローリームーン」など、細部まで工夫を凝らしながら観客を優しく包み込むようなライブを展開しました。
「オオカミ」が魅せた野性的エネルギー
一方の「オオカミ」セットリストは、冒頭からエネルギッシュに突き進む攻撃的な構成が印象的でした。これまでの代表曲に加え、爆発的なグルーヴ感やダイナミズムの溢れる新曲たちがセットに加わり、まるで“野性の解放”のようなステージングに仕上がっています。「オオカミ」公演の音響や照明は、観客とともに一体感を生み、ライブ空間を野外フェスティバルさながらの力強い高揚感で彩りました。
セットリストだけじゃない——会場ごとに変化する演出
驚くべきは、単なる曲順や選曲の違いだけでなく、ステージセットや演出までも「カモシカ」と「オオカミ」でガラリと変えている点です。照明の色合い、BGM、MCでの雰囲気作り、メンバーのパフォーマンスなど、あらゆる要素に斉藤なりの遊び心と細やかなこだわりが詰まっています。
多くのファンが両方の公演に足を運び、「同じアーティストのライブとは思えない」「まるで2度美味しい」と絶賛の声が相次いでいます。
キャリア30年超のベテランに宿る“挑戦心”
30年以上に及ぶキャリアを持ちながら、「ダブルセットリスト」という大胆な試みに挑む姿勢そのものが斉藤和義の矜持と言えるでしょう。このツアーで演奏された楽曲は全部で300曲以上のオリジナルから選ばれており、年月の中で積み重ねてきた経験と歩み、そして今もなお新しい地平を切り拓こうとする意志が色濃く反映されています。
コアなファンのみならず、長い時間をともに歩んできた世代の幅広い観客が足を運び、新旧の代表曲たちが世代を超えて響き合うという、唯一無二の空間が創りあげられています。
観客と共有する“現在進行形の物語”
ライブのMCやパフォーマンスからも垣間見えるのは、「観客一人ひとりと今この瞬間を一緒に築く」という強い気持ち。単に過去のヒット曲を披露するのではなく、その時々の空気感、ファンとの化学反応こそが、斉藤和義流のライブの本質として貫かれているのです。
そして、このツアーでは東京・台北で「カモシカ」と「オオカミ」をミックスしたスペシャルセットリストの公演も開催されました。これは両セットリストのエッセンスを詰め込んだ特別な内容で、両方のファンにとっても待望の一夜となりました。
ファンの声とライブ当日の風景
- 「定番から新曲まで、息をつかせぬセットリスト展開に圧倒された」
- 「会場で涙を流しながら聴いた『泣くなグローリームーン』、忘れられない時間です」
- 「30年の重みも感じたけど、それ以上に“今”を楽しんでいる姿が素晴らしい」
- 「どちらの公演も観られて本当に幸せ。全く違う世界に連れて行ってくれてありがとう!」
おわりに:新たな“ライブ”のスタンダードへ
2025年、『カモシカとオオカミ』ツアーは、単なる記念企画や集大成では終わりませんでした。むしろ、斉藤和義というアーティストが持つ“終わりなき進化”への決意表明であり、“ライブという生き物の無限の可能性”を高らかに示したものだったと言えます。
これからも斉藤和義がどんな新しい景色を見せてくれるのか、多くのファンがその「物語」の先を楽しみにしています。ライブは、まだまだ終わらない。彼の挑戦も、終わらない。