自然災害に備える外国人住民への支援の輪が全国に拡大

近年、地震や豪雨などの自然災害が頻発する中、日本に住む外国人住民への防災支援が全国各地で積極的に行われています。言葉の壁や文化の違いから、災害時に適切な行動を取ることが困難な外国人住民に対して、自治体やNPO団体が連携し、きめ細かい防災教育や支援体制の構築に取り組んでいる状況が注目されています。

新潟県新発田市での先進的な取り組み

2025年9月28日、新潟県新発田市で「在住外国人防災セミナー」が開催されました。このセミナーには新発田市と隣接する胎内市に住む外国人など15人が参加し、災害に備えるための実践的な知識を学びました。

新発田市では、企業の人手不足を背景に、2年前から技能実習生などの外国人住民が増加傾向にあります。一方で、近年の自然災害の頻発を受けて、市では数年前から継続的に外国人を対象とした防災セミナーを開催しており、地域に住む外国人の防災意識向上に努めています。

実践的な防災教育の重要性

セミナーでは、避難所などで配布される防災食の調理実習が行われました。防災食のパッケージに記載されている説明は日本語が多いため、スタッフが丁寧に作り方をレクチャーし、参加者が実際に調理を体験しました。

参加したインドネシア出身の女性は、防災食の調理について「簡単だった」と感想を述べ、選んだメニューについても「ナシゴレン、辛くて美味しかった」と話しており、実践的な体験を通じて防災への理解を深められたことが伺えます。

デジタル技術を活用した情報提供

セミナーでは防災食の調理実習だけでなく、県の防災アプリの使い方についても詳しく説明が行われました。参加者たちは実際にアプリを操作し、自分たちが住む地域の避難所の位置を確認するなど、災害時に必要な情報へのアクセス方法を学びました。これにより、言語の壁を越えてリアルタイムで防災情報を入手できる手段を身に付けることができました。

地域社会全体での受け入れ体制の構築

新発田市市民まちづくり支援課の高澤悟課長は、今回の取り組みについて「外国人の方に安心して暮らしていただいて、私たちも外国人を受け入れる体制をしっかり整えて皆さんに来てもらえれば」と述べています。これは単に外国人住民に防災知識を提供するだけでなく、地域社会全体で外国人を支える体制作りを目指していることを示しています。

災害時における外国人住民の課題

大規模な自然災害が発生した場合、日本人住民でも大きな混乱が予想されますが、外国人住民はさらに深刻な困難に直面する可能性があります。言語の問題だけでなく、日本の防災システムや避難の仕組みに関する理解不足、地域コミュニティとのつながりの希薄さなど、様々な要因が重なることで、適切な避難行動を取ることが困難になることが懸念されています。

全国に広がる防災支援の取り組み

新発田市のような取り組みは全国各地で展開されており、特に外国人住民の多い自治体では積極的な防災支援プログラムが実施されています。これらの取り組みでは、多言語対応の防災マニュアルの作成、通訳ボランティアの育成、避難所での多文化対応体制の整備などが進められています。

やさしい日本語の活用も重要な取り組みの一つです。複雑な防災用語を簡単で理解しやすい日本語に置き換えることで、日本語学習中の外国人住民でも防災情報を正確に理解できるよう工夫されています。

企業と自治体の連携強化

技能実習生や特定技能労働者として日本で働く外国人の増加に伴い、受け入れ企業と自治体の連携も重要性を増しています。企業は雇用する外国人労働者の安全確保の責任を担う一方で、自治体は地域住民全体の防災対策を推進する立場にあります。両者が協力することで、より効果的な防災支援体制の構築が可能になります。

多文化共生社会の実現に向けて

外国人住民への防災支援は、単なる災害対策を超えて、多文化共生社会の実現に向けた重要な取り組みとして位置づけられています。災害時に国籍や言語に関係なく、すべての住民が安全に避難し、支援を受けられる体制を整備することは、真の意味での共生社会の基盤となります。

また、外国人住民自身が防災の担い手として活躍することも期待されています。彼らの母国での災害経験や知識を活かし、地域の防災力向上に貢献してもらうことで、より強靭な地域コミュニティの構築が可能になります。

継続的な取り組みの必要性

今回の新発田市での防災セミナーのような取り組みは、一回限りのイベントではなく、継続的に実施されることが重要です。外国人住民の入れ替わりや、災害に関する新しい知識や技術の普及に対応するため、定期的な研修や情報提供が必要とされています。

さらに、季節ごとに発生しやすい災害の特性に応じた防災教育や、実際の災害発生時を想定した避難訓練の実施なども求められています。これらの取り組みを通じて、外国人住民の防災意識と対応能力の向上を図ることができます。

今後の展望と課題

今後、日本の外国人人口はさらに増加することが予想される中、防災支援体制の充実は急務となっています。AIや翻訳技術の進歩を活用した多言語対応システムの開発、VR技術を使った体験型防災教育の導入など、新しい技術を取り入れた支援方法の開発も進められています。

同時に、地域住民との交流促進や、外国人住民のニーズに応じたきめ細かい支援体制の構築など、人と人とのつながりを重視したアプローチも重要です。技術と人的支援の両面から、包括的な防災支援体制を構築することで、すべての住民が安心して暮らせる地域社会の実現が期待されています。

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