ノースサファリサッポロ閉園へ——20年続いた民間動物園に幕
2025年9月末、北海道札幌市南区の民間動物園「ノースサファリサッポロ」がその歴史に幕を下ろすことになりました。2005年の開園以来、「日本一危険な動物園」と銘打ち、多くの来園者を楽しませ続けてきた同園ですが、違法建築問題への対応を迫られ、閉園を決断したと発表されています。
突然の閉園発表と地域への衝撃
2025年3月10日、園のホームページにて突然閉園が公表され、地元住民や関係者に大きな衝撃が走りました。普段通り営業していた3月9日の時点では、来園者に対し今後の案内はなく、突然の知らせとなったのです。
ノースサファリサッポロは市街化調整区域で無許可建築を20年続けてきたことが判明し、札幌市から行政指導を受け、全ての建物156棟の撤去を求められていました。園側は2029年末までに撤去計画を提出しましたが、先行して営業を終了する判断に至りました。
300匹以上の動物たちが残される現状
閉園時点で園内には300匹を超える多種多様な動物が飼育されています。トラやワニと触れ合える体験型展示を特徴とし、人と動物の距離が極めて近い演出で人気を呼んでいました。
閉園まで残り1週間となり、今後の動物たちの行く末について多くの関心が寄せられています。近隣の旭山動物園などには現段階で相談はないものの、引き取り拒否の姿勢ではないとコメントしており、様々な受け入れ先への調整が進められています。
行政の対応と今後の課題
動物園の閉園に伴い、札幌市は園内の違法建築への対応として立ち入り調査を行いました。『サクセス観光』は、閉園後は動物を他施設へ移動させたうえで、2029年12月までに全ての建物を撤去する計画です。
一方、300匹以上という膨大な数の動物すべての転居先を確保するには、かなりの時間と調整が必要となる見込みで、動物福祉への配慮がどこまでなされるか注目されています。来園者や動物愛護団体からも「すべての動物の行き先が決まったうえでの撤去が望ましい」という声が多く寄せられています。
閉園直前の園内と来場者の声
- 日常通り、動物のえさやりやふれあい体験が行われている。
- 「動物と近くで触れ合える場所がなくなるのは悲しい」という来園者の声。
- 「来てよかった。最後に見ておきたい」「動物が先に保護されるべき」と惜しむ意見。
- 閉園を惜しむ声が全国から寄せられ、閉園前には駆け込み来園者が急増。
ノースサファリサッポロは、来園者がヘビを首に巻いたり、ワニを抱いたりできる“ゼロ距離”の体験型動物園として20年間愛され続けました。その斬新なコンセプトは、全国的にも話題となり、多くの観光客を惹きつけてきたのです。
違法建築問題と民間動物園運営の難しさ
ノースサファリサッポロ閉園の背景には、許可のない市街化調整区域での事業拡大という重大な問題がありました。20年にわたり行政指導を受けながら抗議を重ねてきたものの、最終的に事業継続が困難となりました。
動物園の運営には法律、地域環境、動物福祉など多角的な問題がつきものです。来園者の安全管理や衛生管理はもちろん、違法建築や運営方針との折り合いが難しく、今回のような閉園に至る事例は全国的にも希少です。
残された動物たちの未来
- 300匹以上の動物たちの保護と新たな飼育先の確保が急務。
- 行政、動物福祉団体、他動物園との連携による移動計画が進行中。
- 一部の動物は珍しい種類も含まれ、受け入れ先の確保が課題。
- 「人と深い信頼関係を築いた動物が多く、保護先では新たな環境への適応が求められる」。
「もう人なしでは生きていけない」と言われるほど、人と深く結びついた動物たちが多いことも、受け入れ先での課題となっています。動物たちがこれまで以上に安心して暮らせる場所を確保するために、動物園運営側は行政や福祉団体、他の施設と連携しながら、一頭一頭の未来に向き合う取り組みを進めています。
全国に与える影響と今後への教訓
ノースサファリサッポロ閉園は、民間動物園の運営の在り方や、動物福祉・建築許可問題について、全国の動物園・行政に対して多くの教訓を残すこととなりました。動物たちの命を守り、地域社会と調和した運営を行うためには、法令遵守とともに、計画的かつ柔軟な対応が必要です。
来園者を惹きつける魅力的な体験型事業であっても、動物たちの快適な暮らしと命を守り抜く責任が伴います。閉園を迎える今、ノースサファリサッポロとそこで生きる動物たちの行方が、全国の関心事となっています。
最後に——ノースサファリサッポロの20年と動物たちへの思い
ノースサファリサッポロが歩んだ20年には、多くの挑戦と苦労、そして来園者と動物たちとのかけがえのない思い出が詰まっています。「日本一危険な動物園」というユニークな立ち位置は、多くの人に驚きと楽しみを与えました。閉園を惜しむ声が今も園内に響き渡り、動物たちの新しい居場所が一日も早く見つかることを多くの人が願っています。
今後も動物福祉に十分配慮した保護活動が続くことを祈りつつ、ノースサファリサッポロが地域や社会に残した大きな足跡を見つめ続けたいものです。
ノースサファリサッポロ営業案内(2025年)
- 2025年4月25日~6月30日:10:00~17:00(最終入園:閉園1時間前)
- 2025年7月1日~8月31日:10:00~17:00(8月9日~17日は9:00~17:00)
- 2025年9月1日~30日:10:00~17:00
閉園間際の営業期間にも、多くの来場者が駆け込みで訪れており、多くの思い出を胸に動物たちと過ごす姿が見られます。
おわりに
ノースサファリサッポロの閉園は、多くの人々にとって忘れられない出来事となりました。残された動物たちが新しい環境で幸せに暮らせるよう、関係者全員が最大限の努力を続けていくことでしょう。動物園の歴史を知り、動物との共生のあり方を見つめ直す機会となった今、私たち一人ひとりが命の大切さに改めて気付かされます。