ネタニヤフ首相の国連総会演説、各国の抗議と日本の対応
国連総会での激動の瞬間
2025年9月26日(日本時間9月27日未明)、ニューヨークの国連本部で開かれた国連総会において、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が壇上に立ちました。この演説は、国際社会に大きな波紋を広げる出来事となりました。なぜなら、ネタニヤフ首相の登壇と同時に、多くの国の外交団が抗議の意思表示として一斉に退席し、会場の大部分が空席となったからです。日本を含む少数の国のみが傍聴席に残るという、異例の状況が生まれました。
パレスチナ国家承認への強烈な批判
ネタニヤフ首相の演説の核心は、パレスチナを国家として承認した複数の国々への強い非難にありました。「今週パレスチナ国家を承認した指導者たちは、パレスチナ人にどのようなメッセージを送ったのか。それは非常に明確だ。『ユダヤ人殺害は報われる』というメッセージだ」と発言し、パレスチナ国家樹立という決定を「決して受け入れられない狂気の沙汰」だと一蹴しました。
また、ネタニヤフ首相は、パレスチナ国家の樹立がユダヤ人や世界中の罪のない人々に対するテロを助長することを強く懸念し、「各国の恥ずべき決定がテロリズムを正当化しかねない」と訴えました。
国連議場での各国代表団による抗議退席
ネタニヤフ首相が壇上に上がった瞬間、フランスなどを含む多数国の外交団は一斉に議場を後にし、国連議場の大半が空席となりました。その様子は、イスラエルがパレスチナ自治区ガザで軍事行動を続けるなか、イスラエルに対する国際社会の批判と孤立ぶりを如実に示すものでした。
日本の代表団は、この混乱の中でも議場に留まり、慎重に演説を傍聴し続けていたことが各種報道で明らかになっています。
ニュージーランドの立場――パレスチナ国家未承認、停戦の複雑化懸念
今回の国連総会の流れのなかで、ニュージーランド(NZ)のポジションも注目を集めました。同国は現時点でパレスチナを国家としては正式に承認していません。その理由について、政府関係者は「即時の国家承認は、停戦交渉をより複雑化する懸念があるため」と説明しており、国際社会の圧力や道義的プレッシャーだけでなく、和平への実質的な影響も重視していることを示しています。
演説への国内外の反応――ニューヨークでの抗議デモ
国連総会の外でも、イスラエルやネタニヤフ首相に対する批判の声が高まりました。ニューヨーク市内では大規模なデモが行われ、市民は「ネタニヤフ首相は虐殺者だ」「パレスチナを解放しろ」といったプラカードを掲げて抗議し、「すべての人が自由になるまで、誰も自由にはなれない」と訴えました。演説を忌避する理由として「国際刑事裁判所から逮捕状が出ている人物が演説するのはあり得ない」と主張する参加者もいました。
この大規模デモは、イスラエルによるガザでの軍事作戦への非難と、多くの国がパレスチナ国家を承認したという歴史的変化に伴う世界的な世論の高まりを象徴しています。
ネタニヤフ首相の主張とイスラエルの孤立
ネタニヤフ首相は演説内で、パレスチナ自治区ガザには「ハマスの残党がまだいる」とし、引き続き軍事的圧力を強める方針を示しました。また、国連という国際社会の場で、「イランのテロ軸」や中東地域の安全保障への脅威についても強調し、イスラエルの安全保障政策の正当性を訴えました。
しかし、多くの国の代表団が抗議の退席を選択したことは、イスラエルの国際社会での孤立を強く印象付けるものとなりました。国連総会という公の場で、イスラエルへの批判がここまで顕著に表面化するのは稀なことであり、近年のパレスチナ問題を取り巻く国際的な動向の大きな変化を映し出しています。
パレスチナ国家承認を巡る国際社会の分断
パレスチナ国家承認を巡って国際社会は二分されています。ヨーロッパを中心に複数の国が相次いで国家承認に踏み切った一方、アメリカや多くの西側諸国は条件付きや段階的なアプローチを重んじています。日本やニュージーランドのように、慎重な立場を守り続ける国も多く存在し、今回の一連の出来事は「即時承認」への賛否や「停戦促進へ真に必要な条件は何か」という根本的な問いを国際社会に突き付けています。
- パレスチナ国家承認国:フランスやスペインなどヨーロッパ諸国を中心に拡大
- 慎重・未承認国:アメリカ、カナダ、日本、ニュージーランドなど
多国籍の利害や歴史的事情から、国家承認の是非は極めてセンシティブな課題となっています。
今後の展望と日本の立ち位置
日本はこれまで、中東和平において「二国家解決」の原則を支持しつつも、パレスチナ国家承認には至っていません。今回の国連総会でも、日本の代表団は最後まで議場に残り、中立的・観察的立場を維持しました。これは紛争当事国双方との関係や、中東における日本の独自外交のバランスを考慮した結果といえます。
今後も、国際社会におけるパレスチナ問題への関心は高まると予想されます。今回の混乱と抗議を機に、対立の構図や新たな外交潮流が生まれることは確実です。また、停戦交渉や人道支援の実現に向け、各国がどのような方針転換を図るのか、引き続き注視が必要となるでしょう。
まとめ
2025年9月の国連総会は、ネタニヤフ首相の強硬な姿勢と、それに対する多国籍の抗議退席、そしてパレスチナ国家承認を巡る国際社会の深い分断という、歴史的にも記憶される場面となりました。外交の最前線で日本がどのような役割を果たしていくのか、世界は今も注目しています。