エムポックス重症型、国内初確認 ― 神戸でアフリカ渡航歴ある20代女性が発症
2025年9月16日、厚生労働省は「エムポックス(旧サル痘)」の重症型が日本国内で初めて確認されたと発表しました。
発症したのはアフリカへの渡航歴がある神戸市在住の20代女性。
この出来事は国内における感染症対策の大きな転換点となりつつあり、自治体や医療機関でも警戒が広まっています。
1. エムポックスとは ― 基本的な情報と国内での位置づけ
エムポックスは、オルソポックスウイルス属のエムポックスウイルス(旧名:モンキーポックスウイルス)による感染症です。
1970年にザイール(今のコンゴ民主共和国)で初めてヒト感染が確認され、中央~西アフリカを中心に自然発生してきました。
日本では2022年7月に初となる症例が報告され、感染症法上4類感染症に指定されています。
- 主な感染経路:接触感染・飛沫感染
- 主な症状:発熱、皮疹、リンパ節腫脹など
- 重症化リスク:一般に重症化はまれとされてきたが、死亡例も報告されている
2. 重症型エムポックスの特徴と国内初確認の意義
今回確認されたのは重症型のエムポックスで、これまで国内では見つかっていませんでした。
これまでに国内で報告されたエムポックスの多くは、比較的症状が軽い例がほとんどでした。
重症型エムポックスは以下の特徴を持ちます。
- 重篤な全身症状や臓器障害を引き起こすリスクが高い
- 死亡に至る可能性がある(国内でも2023年に1例、死亡が確認されている)
- 小児や基礎疾患のある人は特に重症化しやすい
国内で重症型が確認された意義は非常に大きく、日本でも状況により重篤な病型が発生しうること、
さらに感染経路や渡航歴、発症から医療機関受診までの対応策など、いっそうの警戒と対策強化が求められています。
3. 症例の詳細 ― 神戸市での発生状況
今回明らかになった症例は、神戸市内の医療機関を受診した20代女性です。
この女性は、最近アフリカへの渡航歴があり、現地で何らかの感染リスクがあったものとみられています。
- 発症までの経過や症状、治療経過の詳細は発表されていません(9月16日時点)
- 患者の隔離・治療は厚生労働省ガイドラインに沿って行われている
- 濃厚接触者の健康観察や検査も開始
エムポックスの発症が確認されたことで、患者が受診した医療機関や周辺地域でも対策が強化されつつあります。
4. 日本国内のエムポックス発生状況(2025年9月時点)
日本国内では2022年7月以降、エムポックスの症例が散発的に報告されてきました。
2025年9月12日の厚生労働省の発表によれば、これまでに254例が公式に確認されています。
例年、主に男性間での感染が多く、女性例は非常に珍しいのが特徴です。
- 症例の多くが首都圏や大都市圏で発生
- 2022年から2025年までに発表済の症例251例中、女性は1例のみ(今回の重症例を含まず)
- 死亡例:2023年に1例報告済み
発生が続いているものの、これまで国内では重症化は稀であったことから、
今後の動向が非常に重要となります。
5. エムポックスのウイルス型とアフリカ型(クレード1)流行の背景
エムポックスウイルスには、主にクレード1(中央アフリカ型)とクレード2(西アフリカ型)の遺伝子型があります。
- クレード1:アフリカ中部で多く流行し、しばしば重症例を引き起こす。致死率が高い。
- クレード2:欧米や日本国内で流行。比較的軽症例が多く報告。
今回の症例は、アフリカへの渡航歴があることやウイルス型の特徴から、クレード1(中央アフリカ型)によるものと考えられます。
この型は重症化リスクが高く、感染管理の強化がますます重要です。
6. 感染予防策と治療法の最前線
国内では、エムポックス患者の増加に備えて、全国の医療機関で治療・予防体制の整備が進められています。
特に以下の点が強調されています。
- 発疹などの症状が出た場合は速やかに医療機関を受診
- 患者・感染疑い者を適切に隔離し、個室で治療
- 感染者との直接的な接触、飛沫に注意。マスク・手洗い・消毒対策を徹底
- アフリカ諸国への渡航履歴がある場合、帰国後2週間は健康観察を推奨
- 医療従事者へのワクチン優先接種や感染管理
治療薬として「テコビリマット」が限定的に使用されてきましたが、2024年12月以降薬事承認され、臨床試験体制のもと提供されています。
重症型への対応には今後さらなる準備と現場の判断力が問われます。
7. 厚生労働省、自治体、現場医療機関の対応と今後の課題
エムポックス重症型が初めて報告されたことで、厚生労働省は全国の自治体や医療機関に対し情報共有と注意喚起を徹底。
速やかな届出とサーベイランスの強化、感染経路不明例にも柔軟に対応できる体制が求められます。
- 直近の感染状況・海外での流行情報の発信強化
- 疑い例、発症例に対する検体検査・報告体制の整備
- 医療機関でのアウトブレイク(二次感染)防止策
- 地域住民への正確な情報提供、不安軽減のための教育啓発
今後は、さらなる感染経路の追跡と重症例への迅速な医療提供が、日本全体の公衆衛生を守るうえでの鍵となります。
8. 一般の皆さまへ―正しい知識と冷静な行動を
エムポックスは、適切な感染対策によって多くの場合拡大を防ぐことができます。
過度な不安や偏見を持たず、正しい情報と分かりやすい予防行動を心がけていただきたいと思います。
- 症状(発熱・発疹・リンパ節腫脹など)に少しでも心当たりがあれば、無理せず医療機関に相談してください
- アフリカなど流行国への渡航歴がある場合は、必ず医師に伝えてください
- 誤った情報や不安を煽るデマなどには注意し、公的機関の発信を参照しましょう
今後も厚生労働省や自治体・医療現場の発表に注目し、国全体で連携して感染症に立ち向かう体勢を築いていくことが大切です。
参考情報・相談窓口
- 厚生労働省ウェブサイト・エムポックス関連情報
- 全国の自治体感染症担当窓口
- 最寄りの保健所
引き続き、皆さまのご健康と安心のための情報を分かりやすくお伝えしてまいります。