バカリズム脚本が生み出す傑作ドラマ『侵入者たちの晩餐』――菊地凛子、吉田羊、平岩紙の演技と共鳴した“ヒューマン・サスペンス”の魅力

バカリズムが脚本を手掛け、多くのドラマファンの間で大きな話題となっている「侵入者たちの晩餐」。2024年1月3日に日テレ系で放送されたこのドラマは、主演の菊地凛子、そして吉田羊平岩紙という実力派女優陣の好演もあり、そのユニークな世界観と、サスペンスフルかつ人間味あふれる物語が高く評価されました。
本記事では、このドラマのあらすじや見どころ、脚本家バカリズムの魅力、さらには近年のバカリズム作品に寄せられた評価など、多角的に「侵入者たちの晩餐」を読み解きます。

受賞歴も輝く、バカリズム脚本の“侵入者たちの晩餐”

「侵入者たちの晩餐」は、「ブラッシュアップライフ」で国内外のドラマ賞を受賞し、脚本家としての新たな地位を確立したバカリズムの最新脚本作品です。特に東京ドラマアウォードの単発ドラマ部門・優秀賞をはじめ、アジアの映像作品の中で最も優秀な作品に与えられる「ContentAsia Awards 2024」のゴールド賞も獲得しています。
スタッフ陣も「ブラッシュアップライフ」と同じチームが再結集。バカリズムらしさ満点のストーリー展開と、重厚な演出が魅力です

あらすじ ― 平凡な日常から“犯罪”への転落、彼女たちの選んだ道

物語は、家事代行サービス「スレーヌ」で働くごく普通の女性・田中亜希子(菊地凛子)が主人公。ある日、彼女は同僚の小川恵(平岩紙)から、社長である藤崎奈津美(白石麻衣)が脱税をしていて自宅に大金を隠しているといううわさを耳にします。
恵は、昔からの友人である江藤香奈恵(吉田羊)を巻き込み、3人で奈津美の自宅に“忍び込む”計画を立ててしまいます。普段は平凡に生きている彼女たちがどうして思い切った犯罪行為に手を染めてしまったのか、そしてその行動の裏側にはどんな思いや葛藤が隠されていたのか――サスペンスフルな展開の中、バカリズム独特の鋭い視点と人間観察力が発揮されます

細やかな心理描写と予想外のどんでん返し、バカリズム脚本の“楽しさ”

バカリズムの脚本の最大の特徴は、キャラクターのリアルな心理を細かく描き出し、視聴者を物語にぐいぐい引き込む点です。
今回も「侵入者たちの晩餐」では、セリフの端々やナレーションに、バカリズムらしいユーモアや人間臭さが散りばめられており、登場人物の思いがより等身大に感じられる工夫が随所に見られます。
さらにバカリズム脚本のもう一つの醍醐味は「大どんでん返し」です。物語の最後に大きなどんでん返しや意外な展開を用意することで、視聴者に鮮烈なインパクトを残します。過去作「ブラッシュアップライフ」や「架空OL日記」でも見られた“意外性”が、「侵入者たちの晩餐」でも大いに活かされています

“侵入”のスリルとヒューマン・ドラマ、出演者が魅せる生きたキャラクターたち

  • 菊地凛子は、柔らかな印象の中に強い意志と葛藤を内包した亜希子を繊細に表現。観る者が共感しやすい、悩み多き等身大の女性像を体現しています。
  • 吉田羊の香奈恵は、3人の中でも現実的で合理的な性格が強調され、微妙な心理の機微を的確に捉えた演技が光りました。
  • 平岩紙は、ブレることなく“普通”を生きようとする中で巻き込まれていく恵の葛藤を等身大で描き、物語に説得力を与えています。

彼女たち3人のコントラストとチームワークが物語の大きな軸。加えて、脱税社長・奈津美(白石麻衣)や他キャラクターとの絡みが更なる人間ドラマを生み、単なるクライム・サスペンス以上の深いヒューマン性を獲得しました

バカリズム脚本の系譜と“侵入者たちの晩餐”の位置付け

バカリズムは「ウェディング・ハイ」や「地獄の花園」、さらには過去の名作「黒い十人の女」など多彩な脚本を手掛けてきました。基本的にはコメディやブラックユーモアの効いた人間ドラマが得意領域ですが、近年は社会派サスペンスやバイプレーヤーの人生に迫るヒューマンドラマにもその手腕を発揮しています。
「侵入者たちの晩餐」は、「架空OL日記」「ブラッシュアップライフ」と並び、バカリズム脚本の成熟した現在地を示す一作といえるでしょう

映画『ベートーヴェン捏造』への注目 :「最後までコメディだと思っていた!」

バカリズム関連の話題として、同時期に公開された映画『ベートーヴェン捏造』も大きな話題に。映画評論家モーさんさんによる「最後までコメディだと思っていたので」とのレビューは、多くの観客が予想外のストーリー展開と人間ドラマに驚いたことを象徴しています。

劇中では軽快な会話劇と独自の笑いが展開されながらも、最後には想像を超えた展開が観る者の心に残ります。社会的な偽造問題や“本当の価値とは何か”を問いかけるメッセージ性もあり、ベートーヴェンという巨匠のまわりで繰り広げられる“人間の滑稽さ”と哀しみが同居する作品です。

『ベートーヴェン捏造』の舞台裏:山田裕貴&古田新太の仲良しメイキングエピソード

また、主演の山田裕貴さんと古田新太さんが共演する映画『ベートーヴェン捏造』の撮影現場では、明るく楽しい雰囲気が印象的だと話題に。公開された2ショット写真や爆笑メイキング映像では、二人が息の合った掛け合いを披露し、現場の温かさやチームワークが伝わってきます。

仲良しムードがそのまま作品の空気感にも反映されており、共演者・スタッフ一体となった映画のものづくりの“現場力”も大きな魅力のひとつです。

現代ドラマ・映画界におけるバカリズムの評価と未来

芸人枠を越えた“作家バカリズム”の評価はますます高まっています。斬新な着眼点や、現代社会の影に隠れた人間心理を掬い取る感受性。そして意表を突くストーリーテリング。「侵入者たちの晩餐」や最新作「ベートーヴェン捏造」に代表されるように、ジャンルの壁を超えた“面白さ”と“深さ”で、日本のドラマ・映画界をリードする存在となりました。

これからもバカリズムの新作に注目しつつ、精緻な人物造形と大胆な物語展開を楽しみにしたいですね。

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