参政党・神谷宗幣氏の「移民国家」発言が波紋——日本社会を揺るがす移民受け入れ論争
話題となった神谷宗幣氏の発言とその背景
2025年9月1日、「参政党」代表の神谷宗幣氏が「日本は移民国家である」と述べ、将来的な外国人受け入れ比率について「上限は10%」という数値目標に言及した発言が大きな社会的議論を呼んでいます(産経新聞報道)。この声明は、従来から「日本人優先」の主張で知られる参政党の政策姿勢と相まって、賛否両論が巻き起こっています。
参政党の立場と成長の経緯
参政党は2020年に神谷氏らによって立ち上げられ、ごく短期間で急成長を遂げた新興政党です。その政策の中心には「日本人優先」や「伝統文化の保守」、「反グローバリズム」、「外国人の待遇制限」などがあります。新型コロナウイルスの感染拡大時には、YouTubeなどのSNSを活用し既存政党への不信感や生活不安の高まりも背景に、若年層や保守層、低所得層を中心に幅広い支持を集めました。
- 2022年参議院選挙で初議席獲得、2025年の参議院選では14議席に躍進し「台風の目」に。
- 神谷氏は「日本人が主役の国」「過度なグローバリズムの排除」を訴え、「日本ファースト」路線を鮮明にした。
- 主な政策には、外国人への社会保障給付制限、外国人の土地取得制限、公的職の制約、外国人関連監視機関の設置など。
今回の発言の詳細とその論点
神谷氏は今回、「日本の総人口のうち、外国人(移民)の割合は最大でも10%までが適当だ」と発言しました。就労者不足や高齢化社会といった背景に対して一定割合までの受け入れはやむを得ないとの認識を示しつつも、日本の伝統文化や治安の維持、安全保障上のリスクを理由に、その上限を明確に設定する考えを表明しました。
この「移民受け入れ比率の上限制」は、欧米先進国などが数十%の移民人口を抱える現状と比較すると、極めて厳格な枠組みといえます。神谷氏は「決して外国人排斥ではない。多様性を認めつつも、日本という国のアイデンティティと安全を守ることが重要」と主張しています。こうした主張の根底には、「外国人優遇」への反発や、現代日本社会が抱える治安・物価高などの生活不安が複雑に重なっています。
この発言が呼び起こした様々な反応
- 保守層や参政党支持者の多くは一定の共感を示した一方、野党やリベラル系論者、SNS上では激しい批判や皮肉も。
- 著名な評論家・実業家のひろゆき氏はTwitter(X)で「やっぱ、参政党支持者はアホなんちゃう?」と痛烈な私見を投稿し、ネット上で拡散。
- 作家の百田尚樹氏も「何が『日本ファースト』だよ」と神谷氏の発言に疑問を呈し、日本第一主義を掲げながら移民受け入れを容認する矛盾を指摘。
- 「排外主義を助長する」「極端な国粋主義だ」と一部メディアやジャーナリスト、研究者らも警鐘を鳴らす。
移民・外国人受け入れを巡る日本の現実と課題
日本政府は長年、「単一民族国家」というイメージを維持してきたものの、少子高齢化や人口減少、労働力不足に伴い、技能実習生や特定技能制度などを通じて多くの外国人労働者を事実上受け入れてきました。2025年時点でその数は約300万人にのぼり、東京都や愛知県、大阪府など大都市圏では外国人比率が上昇しています。
ただし、受け入れの拡大を巡っては以下のような課題も顕著となっています。
- 技能実習生に対する人権侵害、低賃金労働などの社会問題の頻発
- 受け入れ政策の一貫性欠如と、在留外国人の定住化への対応不足
- 地域社会での摩擦や住民間のトラブル、高まる治安不安
- 地方自治体の財政負担や行政サービスへの影響
こうした現実の中で、神谷氏が掲げる「上限10%モデル」は、現状の政策議論における一つの極論・原則論として注目されています。
参政党の主張に対する社会の論点と批判
参政党や神谷氏の姿勢は「極端なナショナリズム」「外国人差別助長」との批判を受ける一方、「現実的な人口政策」「治安維持・安全保障重視」として一定層から指示を得ています。批判派の中心主張は以下の通りです。
- 「10%」といった一律の数値設定は、社会・経済の実情に即しておらず、不当な線引きになりかねない。
- 「日本人優先」政策は法的平等や国際的な人権条約と矛盾し、国際的孤立を招くリスク。
- 日本経済がグローバル人材の活用なくしては成立しにくい現実を無視している。
- 排外的な言論は、既存の在留外国人やマイノリティへの差別・偏見を助長する危険性。
一方、支持層からは「これ以上外国人が増えると日本社会の一体性や治安が脅かされる」「生活困難の根源は安易なグローバル化にある」といった声が目立ちます。特にコロナ禍以降の経済的困窮や社会不安の中、ナショナリズム的政策が一定の支持を得ている現象が浮き彫りになっています。
ひろゆき氏・百田尚樹氏ほか知識人の反応とSNS論争
神谷氏の主張に対し、さまざまな識者やインフルエンサーが自身のSNSで声を上げています。
- ひろゆき氏は参政党支持者を「アホなんちゃう?」と挑発的に揶揄し、ネットユーザーから賛否両論が噴出。
- 百田尚樹氏は「日本ファースト」と移民容認の両立の矛盾を突き、「かけ声だけのナショナリズム」と批判。
- SNS上では「現実的に移民は必要」「外国人受け入れに不安があるのは理解できる」といった、分断的な意見が並ぶ。
- 一部には「移民=危険」の単純図式に異議を唱え、多文化共生や寛容を説く専門家も。
また過去には、神谷氏自身が演説中に差別的言葉を口走り、その場で謝罪したこともあり(2025年7月)、発言への責任や慎重さを求める声も高まっています。
今後の政治・社会への影響
今回の一連の発言は、人口減と移民政策が避けて通れない日本の現実の中で、あらためて「どのような社会を目指すのか」「多様性と一体性をどう両立させるか」という根源的課題を突きつけました。参政党や神谷氏の主張は、その急進的な部分で社会の分断を広げるリスクを孕む一方、「現状の移民受け入れ政策をめぐる曖昧さ」や「国民感情とのギャップ」を顕在化させたともいえます。
ここで重要なのは、単なる排外主義・対立で終わらせない建設的な議論と、現実的な人口・社会統合政策の提示でしょう。移民や外国人受け入れのあり方を巡る論争は、今後の政治課題としてさらに注目されることが予想されます。
神谷宗幣氏の発言は、一見過激な主張でありながら、日本社会が抱える複雑な人口・文化・安全保障の課題を可視化した点で、今後の議論の出発点となりうるでしょう。