パナソニックが誤飲防止のため「苦い」コイン型電池を開発――国内メーカー初の新製品

パナソニック エナジーは、乳幼児による電池の誤飲事故を防ぐため、国内メーカーとして初めてコイン型リチウム電池に「苦み成分」を塗布した新製品を開発し、2025年10月10日から発売することを発表しました。この新シリーズは、従来の誤飲対策パッケージに加え、電池本体そのものへ“苦み”という新しい安全対策を施している点で、業界内外から大きな注目を集めています

なぜ「苦い」コイン電池が必要だったのか?

コイン型リチウム電池は、家電製品やおもちゃ、スマートデバイスなど幅広い用途で使われ、家庭内で目にする機会も多い一方、その誤飲事故が長年深刻な社会問題となっています。とくに、

  • 小型で飲み込みやすい形状
  • ボタン電池特有の誤飲時危険性(電解液による内部損傷や化学熱傷)

といった特徴が、幼い子どもたちの健康に対する懸念を高めていました。

例えば東京消防庁の調査によれば、2020年から2024年の5年間で5歳以下の子ども5,285人が窒息や誤飲などの事故で救急搬送され、そのうち約200件が電池関連であり、誤飲事故のインシデントは依然として後を絶ちません。また、国民生活センターのデータでも、玩具使用中だけでなく、
未装着もしくはパッケージ状態での誤飲も多く報告されています。

パナソニック エナジーの新たな誤飲対策

今回の新製品の大きな特長は2つの誤飲対策です。

  • 開封困難パッケージ:従来から採用してきた、幼児が簡単に開封できない仕組みのパッケージにより、電池単体へのアクセスを防止します。
  • 「苦み成分」の塗布:電池本体の負極面に「安息香酸デナトニウム(デナトニウムベンゾエイト)」を塗布。これはギネス世界記録でも「世界で最も苦い物質」とされ、ニンテンドースイッチのゲームカードにも採用されている成分です。乳幼児が万一口に入れても強烈な苦みが感じられ、すぐに吐き出すように促します。

ラインナップと価格、推奨期限の延長

パナソニック エナジーが10月10日より発売するのは、以下の3品種4品番です。

  • CR2032E(1個/2個パック)
  • CR2025E(1個)
  • CR2016E(1個)

全国の家電量販店やオンラインショップで販売され、1個あたりの価格は399円(2個組は799円)を予定しています

さらに、機器の小型化やデバイス使用頻度向上に伴い家庭でのストック期間も長期化傾向にあることを受け、「苦い」新電池は使用推奨期限を従来の5年から10年に延長。これにより、ストック電池も含めより長期にわたり安全に利用できるよう設計が改良されています

「安息香酸デナトニウム」とは?

安息香酸デナトニウムは、非常に強い苦みを持つ物質で、わずか数十ppm(1000分の数グラム)でも人間は苦みを強烈に感じます。日本でも子ども用製品への採用が進んでおり、

  • ニンテンドースイッチのゲームカード
  • マニキュアや洗剤など生活用品

にも使用実績があります。

誤飲防止効果は、その「味」を通じて子どもに不快感を与え、誤飲後すぐ“吐き出す”という行動をうながす点に特徴があります。安全性についても国際基準によって確保されており、電池機能や環境への影響も十分に配慮されています。

誤飲事故の現状と社会的な期待

誤飲事故による健康被害は、化学熱傷や気道閉塞といった重大な後遺症リスクを伴うため社会全体の課題とされてきました。特に小型電子機器の普及や家庭内IoT化が進行する中で、
家庭における電池の“安全ストック”はますます重要になっています。

パナソニック エナジーの取り組みは、社会的ニーズに対する迅速かつ具体的なソリューションであり、今後、他メーカーや業界全体への広がりも期待されています。保護者や医療機関、消費者団体からも大きな支持が寄せられているのが現状です

今後の展望とユーザーへのアドバイス

この電池の誕生によって、乳幼児のいる家庭での安全意識がより高まることが期待されます。しかし誤飲事故を完全に防ぐためには、「電池を子どもの手の届かない場所に保管する」 「電池利用後はすぐ片づける」などの基本的な予防策も依然として重要です。

  • 電池パッケージや本体の注意表示(ピクトグラム)を必ず確認する
  • ラベルや説明書にも目を通し、家族内で注意点を共有する
  • より安全な製品を選ぶ

パナソニック エナジーの新しい「苦いコイン型電池」は、子どもたちの命を守る新たな一歩です。今後も消費者の安心・安全を支える革新的な技術の拡大が期待されます。

まとめ

パナソニック エナジーが国内メーカーで初めて発売する「苦い」コイン型リチウム電池は、誤飲事故防止への新しいアプローチとして注目されています。パッケージと本体の二重対策、安息香酸デナトニウムによる強い苦み、10年への使用期限延長など、様々な安心設計が結集しています。今後、より安全な社会の構築に向けて業界の動向にも注目が集まります。

参考元