法定養育費とは?新制度の導入背景とその目的

法定養育費とは、これまで取り決めがなかった離婚時にも一定額の養育費を請求できるように定められる、新たな制度です。法務省が中心となり、現在月2万円とする方向で検討が進められています。

現状の養育費受給の問題点

  • 厚生労働省の2021年度調査によれば、母子世帯で養育費の取り決めをした割合は約47%にとどまっています。
  • 実際に養育費を受け取っている母子世帯は約28%に過ぎません。
  • 取り決めがなかった場合、不払いが発生しても請求の手段がなく、ひとり親家庭の生活が苦しくなるという深刻な課題があります。

法定養育費の新設の概要

今回の見直しでは、離婚時に養育費の取り決めがない場合でも、一定額を自動的に相手に請求可能とする法制度が新たに検討されています。具体的には月額2万円という金額が軸となり、今後、社会の意見(パブリックコメント)や与党の立場も踏まえて詳細が詰められていく予定です。

この動きは、2026年5月までに施行される改正民法の一部として盛り込まれる予定です。法務省は、不払い対策や子どもの健やかな成長を守るために、この法定養育費の制度設計を急いでいます。

なぜ「月2万円」なのか?

「なぜ2万円なの?」という疑問をお持ちの方も多いかもしれません。養育費は、子どもの年齢や家庭の状況、親の収入などによって個別に決められるべきですが、法定化にはこういった最低ラインを明確にすることで、支給漏れや不払いを防ぐ狙いがあります。

月2万円という金額については、最低限の生活を守る観点と、無理のない範囲で社会全体の公平感を保つことが背景にあります。ただし、今後の議論やパブリックコメントの内容によって金額や運用方法が調整される見込みです。

主要ポイント

  • 離婚などで養育費の取り決めがなくても、「月2万円」を法定で請求できる仕組み。
  • 法定養育費の新設は、養育費不払いを減らし、子供の生活基盤を守る目的がある。
  • 2026年5月までに改正民法の一部として施行される見込み。
  • 今後、社会の意見や政党間協議を経て、金額や詳細が決定される。

どのように請求できるの?

この法定養育費制度が導入されると、離婚時や別居時に特別な取り決めがなくても、簡単な手続きで相手に請求できるようになります。これまでのように「合意がなければ請求できない」という壁が取り払われ、ひとり親家庭の経済的基盤強化につながると期待されています。

手続きの具体的な流れや証明書類、支払い方法については、今後法務省が詳細を公表していく予定ですが、負担を少なくシンプルな制度設計が求められています。

期待される効果と導入の意義

子どもの権利の保護

養育費は、「子供が安心して生活し、学び、育つ権利」を守るためのものです。この制度が確立されることによって、親の都合で子どもが不利益を被ることが少なくなり、すべての子どもに平等なチャンスが与えられる社会の実現にも一歩近づきます。

ひとり親家庭の負担軽減

日本のひとり親家庭は、経済的に困難な状況にあるケースが少なくありません。養育費が安定的に受け取れる仕組みが整えば、福祉への依存減少も期待でき、社会全体として子育てに優しい環境が整うと考えられています。

  • 子育てと仕事の両立が難しい状況でも、一定の収入が保証される
  • 心理的な不安や孤独感の軽減

今後の課題と注目点

新制度には期待の声がある一方で、「金額が少ないのでは?」という意見や、「本当に支払われるのか」「強制力や罰則はあるのか」といった課題も指摘されています。

今後の議論では、次のポイントが焦点になりそうです。

  • 月2万円が十分かどうか
  • 実際に支払いが履行されるための仕組み(強制執行や口座差押の可否など)
  • 子どもの人数や年齢による調整の有無
  • 両親の収入状況など個別事情への対応

法定養育費制度を巡る今後の流れ

2026年5月までの施行を目指して、今まさに具体的な制度設計が進められています。これからも社会の声や現場の実態を踏まえ、より良い仕組みとなるよう、多くの関係者からの意見が寄せられる見込みです。法務省も、市民からのパブリックコメントを積極的に募集し、透明性と納得感のある制度構築を目指しています。

まとめ:法定養育費制度の意義と私たちへの影響

「法定養育費」の導入は、子どもやひとり親家庭の生活を守るための大きな一歩です。具体的な金額や制度詳細については今後の調整を注視する必要がありますが、法律による最低限の養育費保障が全国で適用される意義は計り知れません。

ひとり親だけでなく、これから家庭を持つ予定の方や、家族の在り方が多様化する現代社会にとっても重要なテーマとなるでしょう。今後も最新情報に注目し、自分や身近な人の大切な「未来と権利」を守っていくことが求められます。

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