LIXILが窯業サイディング事業を終了、その背景と今後の展望
はじめに:LIXILの大きな決断
LIXILは、日本を代表する建材・住宅設備メーカーのひとつとして知られています。そんなLIXILが、2026年3月末日をもって窯業サイディング事業を終了するという発表は、建設・住宅業界に大きな衝撃を与えています。このニュースは、同社および合弁子会社である旭トステム外装株式会社(通称AT社)が長年続けてきた外装材分野における重要な転換点となります。ここでは、その経緯と決断の背景、そしてLIXILのこれからの戦略について詳しくご紹介します。
窯業サイディング事業終了の経緯
- 2025年7月29日、LIXILは正式に窯業サイディング事業の終了を発表しました。終了は2026年3月末日を予定しています。
- 対象となるのは、旭トステム外装株式会社が展開してきた窯業サイディング事業で、AT-WALLやSHiZENシリーズなどが該当します。
- 事業終了までのスケジュールについても公表されており、2025年10月末までが新規受注の受付締切、同年11月末で工場生産を停止、最終的な出荷は2026年3月末までとされています。
20年の歴史と事業撤退の背景
AT社は、2004年の設立以来、約20年にわたり窯業サイディングやその他外装材の開発・製造・販売を行ってきました。その間、日本の住宅市場の成長を支えてきた存在でした。しかし近年、新設住宅の着工戸数が長期的に減少していること、加えて原材料や燃料価格の高騰が企業収益に深刻な影響を及ぼしました。こうした厳しい市況のなか、あらゆるコスト削減施策や事業効率化努力を重ねてきたものの、事業の継続が困難な状況に追い込まれてしまいました。
- 新設住宅着工戸数の減少 :新築住宅市場が縮小傾向にあり、市場全体が細ってきています。
- 原材料・燃料価格の上昇 :グローバルな原材料市況の不安定化により、調達コストが急激に高まりました。
- 競争激化と価格維持の困難 :安価な他素材の台頭や新興メーカーの増加、差別化の難しさが課題となっていました。
こうした複合的な要因が重なり、経営判断として事業撤退の決断に至ったのです。
既存サービス・今後の顧客対応
- 販売終了品 :AT-WALLシリーズやSHiZENシリーズ。2025年10月31日まで受注、11月28日に生産停止、2026年3月末まで最終出荷。
- 既存ユーザー対応 :アフターサービスや保証、補修部材の供給などに関する案内は、今後個別に案内される見通しです。既存顧客へのサポート体制について、安心できる形で情報提供が行われる予定です。
金属・樹脂サイディングへの事業集約とLIXILの展望
本事業撤退はLIXILにとって大きな決断ではありますが、同時にさらなる発展への戦略的集約でもあります。窯業サイディングに代わり、AT社で展開していた金属サイディング事業および樹脂サイディング事業はLIXIL本体に集約し、今後も継続・強化されます。
- 金属サイディング :軽量で高耐久な外装材。断熱リノベーション市場の拡大を背景に、今後さらなる需要が見込まれます。
- 樹脂サイディング :耐久性やデザイン自由度に優れる外装材。リフォーム市場などでも活用が広がっています。
LIXILは豊富な開発リソースやノウハウ、販売ネットワークを活用し、両分野においてラインナップの拡充・技術向上を進めることを明らかにしています。とくに「断熱リノベーション」など新たに拡大する市場への積極的な参入も目指している点が注目されます。
【2025年版】設備建材メーカー売上ランキングとLIXILの現在地
2025年時点での設備建材メーカー売上ランキングによると、LIXIL、日本ペイント、TOTOがベスト3を占めています。LIXILは国内外を問わず幅広い建材・住宅設備分野で事業展開を続けており、売上高でも安定したトップクラスの地位を確保しています。
- LIXIL :総合力・商品ラインナップ・技術開発力で業界をリード。
- 日本ペイント :塗料分野で圧倒的なシェアとブランド力。
- TOTO :水回り設備(トイレ、洗面、バス等)で高い評価。
このように、窯業サイディング事業の終了はニュースとして業界内外に大きく報じられる出来事ですが、LIXILの企業体としての影響は限定的であり、むしろ新事業への注力強化、経営資源の最適化といった“選択と集中”の一環と位置づけられます。
LIXILが強みを活かし目指す未来
LIXILは、幅広い商品開発力や総合的な提案力を活かし、今後も国内外の建材・住宅市場において存在感を示し続けるでしょう。昨今では、省エネ・環境配慮型商品、リノベーション対応技術など、多様な顧客ニーズに対応する取り組みを強化しています。また、建材事業のみならず、住宅設備機器(キッチン、バス、トイレ、窓、玄関など)でも数々のヒット商品を展開しています。
- 環境課題への対応 :断熱・省エネ商品やリサイクル促進商品を強化。
- 高齢化社会への対応:バリアフリー設計や安心・安全な住空間の拡充。
- 快適な住まい提案 :新商品開発やアフターサービスの充実。
建材・住宅業界とLIXILの今後
窯業サイディング撤退は、ひとつの時代の終わりを象徴するできごとですが、新たな市場への挑戦と持続的成長を見据えた前向きな経営判断とも言えます。LIXILの動向は、住宅・建築業界全体にも波及し、多くの企業が事業構造の見直しや柔軟な経営戦略を迫られるきっかけとなることでしょう。
今後もLIXILは、“住まいと暮らし”を支えるグローバルリーダーとして、多様な価値創造や社会課題の解決に貢献していくものと期待されます。
まとめ
今回のLIXIL窯業サイディング事業終了は、20年にわたり支え続けてきた外装材市場からの撤退という大きな決断ですが、同時に企業としての成長と変革を目指した戦略的な動きとも言えます。今後は、金属・樹脂サイディング、断熱リノベーション市場などへの積極展開を通じて、さらに強いLIXILグループとして発展していくことでしょう。建築業界の変化が加速するなか、LIXILの新たな挑戦を引き続き見守っていきたいものです。