ホワイトハウスがTikTok公式アカウント開設――安全保障・若者戦略・米中関係に揺れる「ティックトック」をめぐる最新動向

はじめに

2025年8月19日、アメリカのホワイトハウスが中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の公式アカウントを開設しました。この動きは、世界で広く利用されるTikTokをめぐる政治、経済、安全保障、デジタル文化が複雑に絡む現代らしい出来事として、大きな注目を集めています。
今回は、ホワイトハウス公式アカウント開設の背景と狙い、アメリカの国内政治におけるTikTok問題、さらに中国政府による反応や今後の展望について、分かりやすく丁寧に解説します。

1. TikTokとは何か

  • 中国発の動画投稿アプリで、全世界で月間アクティブユーザーが10億人を超えます。
  • アメリカ国内だけでも推定1億7000万人以上が利用しており、特に若年層に圧倒的な人気を誇っています。
  • 短い動画を投稿・共有できる気軽さが支持を集め、国内外の政治や経済、社会運動、文化など様々な分野で大きな影響力を持っています。

2. ホワイトハウスがTikTokアカウントを開設した理由

2025年8月19日、アメリカのホワイトハウスが「TikTok」に公式アカウントを開設しました。
その狙いは以下の通りとされています。

  • 若年層への直接的なアプローチ:SNS、とくにTikTokは政治・行政情報を若年層に伝えるのに効果的なツールであるため。
  • 政権の実績や政策の広報強化:大統領が訴えたいメッセージを素早く大勢に届け、世論形成に活用する目的。
  • バイデン前政権時代「安全保障上の懸念」で利用制限されたが、トランプ政権はその方針を見直し、国民との新しいコミュニケーション路線をアピール。

レビット報道官は「トランプ政権は、大統領が国民にもたらした歴史的な成功を幅広く伝えることに尽力している」と語っており、政策広報が主目的であることが見て取れます。

3. TikTokをめぐるアメリカの国内事情

安全保障上の懸念と規制

  • バイデン前政権は、中国発アプリであるTikTokについて「個人情報の流出」や「国家安全保障上の問題」を強く危惧し、2025年1月に利用禁止法を施行しました。
  • 同法は「アメリカ国内で事業を売却しなければアプリの配信などを禁止する」という内容ですが、現政権(トランプ大統領)は利用禁止を猶予し続け、事実上アプリが使える状況が継続しています。

売却問題:アメリカ事業の今後

  • TikTok運営会社ByteDance(バイトダンス)は、アメリカ国内事業の売却を求められています。
  • 売却期日は直近で2025年9月17日と設定されていますが、買い手はまだ決まっておらず、「さらに売却期限が延長される可能性」も取り沙汰されています。

この売却問題は、デジタル時代の安全保障・経済利権・表現の自由といった多層的な課題を浮き彫りにしています。

4. トランプ政権の対応と狙い

  • トランプ大統領は「利用禁止の猶予措置」を複数回実施し、TikTokの利用環境を維持してきました。
  • 狙いは単に安全保障だけでなく、自身のメッセージを若者世代にダイレクトに伝え、市民とより近い距離で交流・共感を得る点にあります。
  • 「私は毎日アメリカの人々により良い暮らしを届けると決意して目を覚ます。私は皆さんの声だ」と述べ、国民への共感と支持獲得を強調しています。

アメリカ国内のTikTokユーザーは1億7000万人を超え、選挙にも大きな影響を持つ存在です。2024年の大統領選挙でも、若年層対策の一環としてTikTokが大きく注目されました。

5. 中国政府の反応――揶揄の理由と米中関係

ホワイトハウスがTikTok公式アカウントを開設したことで、中国政府や中国メディアがこれを
「皮肉」や「あざ笑う」形で報道しています。
この態度の背景には、「安全保障上の懸念」を理由にTikTokの規制を進めてきたアメリカ自身が、公式にTikTokを利用するという矛盾や自己都合な態度に対する批判が込められています。

  • 中国政府は「アメリカは自国の利益のためにはダブルスタンダード(二重基準)を用いる」と主張しています。
  • 中国国内でも「バイデン時代に規制を強めたはずが、今になってトランプ政権が広報に使うのは滑稽だ」といった論調が見られます。

日米中のデジタル覇権競争の中で、TikTok問題は今や「テクノロジーの地政学」を象徴する事例となっています。

6. 今後の見通し――TikTokはどうなるか

  • TikTokの利用禁止・事業売却問題は未解決のまま、9月以降も大きな政治・経済ニュースとなる可能性が高いです。
  • 仮にアメリカ事業が売却されなければ、再びアプリ配信の禁止またはサービス停止に向けた法的措置が取られる可能性も指摘されています。
  • 一方、TikTokはグローバルでは依然として圧倒的な人気を維持しており、アメリカ国内でも広報・マーケティングなど多様な使われ方が始まっています。
  • アメリカの外交政策とテクノロジー政策、中国との駆け引き、GAFAなど競合企業の動向、利用者の反応など、今後も多岐にわたる影響が考えられます。

TikTokを取り巻く最前線の動向からは、今の世界における「情報・安全保障・自由・経済」の複雑な関係性が浮かび上がってきます。

まとめ

ホワイトハウス公式TikTokアカウント開設は、アメリカの対中デジタル政策、安全保障・若年層へのリーチ、国内政治戦略が複雑に絡んだ象徴的な出来事です。
TikTokは単なる動画投稿アプリを超え、国際関係や社会、表現、経済、安全保障すべてに影響するプラットフォームとなっています。
■本件を通じ「誰が、どのような意図でデジタルプラットフォームを利用・制約するのか」という現代社会の根本的な問いが改めて突き付けられています。
今後もTikTokとそれを取り巻く国際社会の動きから目が離せません。

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