認知症治療薬レカネマブ、2025年11月から15%の薬価引き下げ決定
2025年8月6日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は、エーザイが開発した認知症治療薬「レカネマブ」(商品名:レケンビ)の薬価を11月1日から15%引き下げることを正式に了承しました。これは、薬の費用対効果が低いと評価された結果によるものです。これにより、患者1人あたり年約45万円の負担軽減が見込まれています。
レカネマブとはどのような薬か?
レカネマブは、アルツハイマー型認知症の初期段階、あるいはその前段階である軽度認知障害の患者を対象にした治療薬です。エーザイと共同開発したもので、脳内に蓄積するとされるアミロイドβたんぱくの除去を促し、認知機能の低下を遅らせる効果が期待されています。投与は、体重1キログラムあたり10ミリグラムを2週間に1回、点滴で実施し、治療期間は原則として1年半までと定められています。
薬価引き下げの背景:費用対効果評価
レカネマブの薬価は、2023年12月に公的医療保険の適用対象となった際、薬価の引き下げ幅は最大15%にとどめるとの規定が設けられていました。その後、実際の薬の効果と費用を分析した結果、「費用対効果が悪い」と評価され、今回の15%の薬価引き下げが決定しました。
具体的には、現在の薬価は1瓶(500ミリグラム)が114,443円ですが、2025年11月1日からは97,277円に引き下げられます。体重50キログラムの患者で計算した場合、年あたり約298万円から約253万円となり、約45万円の値下げとなります。
患者への影響と自己負担額
患者の自己負担は、年齢や所得に応じて薬価の1~3割程度です。また、高額療養費制度を活用することで、負担の上限設定も可能となっており、多くの患者にとって経済的負担の軽減が期待されています。
医療現場の受け止め
医療関係者からは、レカネマブのような新薬は認知症治療の選択肢を広げる重要な存在と評価されていますが、一方で高額な薬価に対しては費用対効果の議論が続いています。今回の薬価引き下げは、より多くの患者が治療を受けやすくなる一歩として歓迎されています。
その他の動き:製薬業界の最新ニュース
- 同時期に、他の薬剤の薬価改定も進んでおり、肥満症治療薬の自社開発を目指すネクセラの動きにも注目が集まっています。
- 例えば、ウゴービの薬価はマイナス7.3~8.3%の改定が報告されています。これらは厚生労働省の費用対効果評価を踏まえた対応です。
まとめ
認知症治療薬レカネマブの薬価引き下げは、高額な医療費負担の課題を一部解消するものとして注目されています。認知症患者やその家族がより治療を受けやすくなるよう、公的医療保険の適用範囲も整備されており、今後の認知症医療の進展に期待が寄せられています。