片岡製作所が民事再生法を申請 ~京都の中小メーカーに何が起きたのか~
京都市南区に本社を置く機械装置製造の老舗企業、株式会社片岡製作所が2025年7月25日、民事再生法の適用を申請しました。設立は1968年で、レーザー技術を活用した超精密加工装置を中心に事業を展開し、特に電気自動車(EV)や二次電池関連の検査システムで高い技術力を誇っていました。かつては世界的なEVシフトの追い風もあり、2018年には売上高が110億円を超えるなど「中小メーカーの星」とも称されました。しかし、時代の流れの変化と複合的な経営リスクにより、今回の経営破綻に至りました。
片岡製作所の事業内容と技術力
- レーザーによる超精密穴あけ装置、精密切断装置、溶接装置といった加工機の開発・製造
- 二次電池製造ラインにおける充放電管理および検査システムの一貫生産体制
- 中国、台湾、ベトナム、イタリア、アメリカなどに現地法人を設立し、グローバルに展開
これらの事業を通じて、EVの需要拡大に伴う市場の追い風を受けていましたが、近年の変化が経営を揺るがせました。
経営破綻の要因 ~EV需要の減少と資金繰りの悪化~
経営破綻の大きな要因は、EV市場の弱含みによる需要減少です。新型コロナウイルス感染症が世界的に広がり、片岡製作所の主たる取引先が設備投資を抑制したことも売上減少を招きました。さらに、破綻したスウェーデンの電池メーカー「ノースボルト」への資金貸付金が焦げ付き、売掛金の回収遅延が続いたことで資金繰りは逼迫しました。
こうした複合的な要素により、資金繰りを自力で維持することが困難となり、7月25日付で京都地方裁判所へ民事再生法の適用を申請しています。負債総額は約104億円~116億円と報告されています。なお、当面は営業を継続しつつ、スポンサーの選定を進め、再建を目指す方針です。
ペロブスカイト太陽電池関連の工場建設計画は今後検討
片岡製作所は、新規事業としてペロブスカイト太陽電池の加工装置工場建設を検討していましたが、今回の経営破綻によりその可否は今後の状況を見極めながら慎重に検討される見通しです。これまでの高度な技術力を活かして新規分野にも積極的に挑戦していたことが分かりますが、今は再建と資金調達が最優先の課題となっています。
今後の雇用や地域経済への影響
片岡製作所にはおよそ210人の従業員がおり、地域の雇用にとって重要な存在です。民事再生手続きの中でスポンサーが決まり次第、業務の維持と雇用確保に努める意向を示していますが、今後の事業再構築の過程で社員の配置転換や人員調整の可能性も否定できません。
京都市南区に本拠を置く企業として、地場産業の一翼を担ってきた片岡製作所。同社の再建成否は、地域の産業活性化にとっても注目されるところです。
まとめ
- 片岡製作所は1968年創業の京都の老舗機械装置メーカー。
- レーザー加工装置や二次電池検査システムが強みで、世界的なEV需要拡大とともに成長。
- コロナ禍やEV需要減退、取引先の破綻による資金回収困難などで資金繰りが悪化。
- 2025年7月25日、民事再生法を申請し、営業継続しながら再建スポンサーを募集中。
- 新規分野でのペロブスカイト太陽電池装置工場建設は今後の検討課題。
- 従業員約210名の雇用維持が最重要課題となっている。