大相撲ロンドン公演、チェルシー聖地に響いた四股――高安と豊昇龍の異国体験記

ロンドンで開催された34年ぶりの大相撲

2025年10月、イギリス・ロンドンで実に34年ぶりとなる大相撲公演が開催されました。海外巡業は相撲界にとって世界への橋渡し。今回のロンドン公演には横綱・豊昇龍(26=立浪部屋)、小結・高安(35=田子ノ浦部屋)をはじめとする力士や親方、関係者ら約60人が参加しました。相撲文化を異国の地でどのように披露し、どんな交流があったのか――その模様をレポートします。

「想像以上だった」高安が語るロンドンの街と市民の熱量

羽田空港に帰国した高安は、その表情に充実感と少しの疲れを浮かべていました。彼は「ロンドンは想像以上のものでした。町並みや景観も素晴らしかったし、イギリスの皆さんの観戦マナーもとても良かったです。みなさんの応援の熱が強く伝わった」と語っています。「町並みもとても良かった。敢闘賞は記念になる」――ロンドンでしっかりと相撲を通じて交流ができたことが、この言葉から伺えます。

  • 高安は今回の公演で敢闘賞を受賞。異国の地で熱戦を見せ、「連日来てくださる方に恥じない相撲を」と精一杯の取り組みを見せた自らを誇りました。
  • 13年のジャカルタ以来の海外公演も振り返り、「自分にとってとても貴重な経験」とし、世界に広がる相撲人気を実感した様子です。

ロンドンの日常に溶け込んだ高安の地下鉄・バス体験

今回の渡航で高安が印象深かったのは、ロンドンの交通機関の利用。普段は日本で多用しない地下鉄やバスを駆使して市内観光を楽しみ、「新鮮だった」「メンバーと一緒に行動できて、特別な思い出になりました」と笑顔を見せました。ロンドンでは伝統的な建物群や独自の景観、美しい公園などを見て回ったそうです。

また、ロンドンの「王道の観光地」はひととおり巡ったとのことで、異国の文化に触れることでリフレッシュもしっかりできた様子。その一方で、帰国後は「現実に戻った。九州場所までもう3週間しかない」と、すぐに気持ちを切り替え、次の本場所に向けて意気込みを新たにしています。

チェルシー聖地スタンフォード・ブリッジ訪問――豊昇龍、夢の実現

今回の公演で特筆すべき出来事は、サッカー名門チェルシーFCの本拠地スタンフォード・ブリッジを訪れたこと。実は横綱・豊昇龍が公の場ではっきりと「チェルシーファン」を明言したのは今回が初めてでした。「昔から憧れていた聖地で、まさか自分がピッチに立てるとは夢のようです」と、その感慨を語っています。

  • 豊昇龍はスタジアムのピッチで豪快な四股を披露。観衆やクラブ関係者からも拍手が起こり、サッカーファンと相撲ファンの垣根を超えた一瞬となりました。
  • チェルシーのクラブカラーや歴史にも直に触れる機会を得て、「サッカーも相撲も、世界に文化を発信する立場は同じだと実感した」と充実した表情で話しました。

国境を超える相撲――豊昇龍「相撲がどんどん世界に広がっている」

ロンドン公演を終え、横綱・豊昇龍は「相撲がどんどん世界に広がっている」と喜びを語り、「これからも世界への発信を続けたい」と力強く表明しました。「観客の応援の熱さ、マナーの良さ、そして何よりロンドンの人々が相撲という日本の文化を温かく迎えてくれたことが忘れられない」と述べ、訪英の意義を強調しています。

力士たちを迎えたロンドン市民

イギリスの人々は日本の大相撲の伝統と格式を敬意を持って受け止め、会場は連日大盛況でした。観戦マナーも高く、「熱狂的な応援と、勝負どころでは静まりかえる緊張感。このメリハリが印象的でした」と高安も振り返っています。

  • ロンドン公演はイギリス国内外の日本人コミュニティからも大きな支持を集めた。
  • 子供から大人まで幅広い観衆が集い、力士たちへ写真やサインを求める姿も見られました。
  • イベントでは、相撲の基礎知識や礼節について英語・日本語で解説するコーナーも用意され、異文化交流の場としても機能していました。

豊昇龍、満足の「素晴らしかった」――未来へバトンをつなぐ

豊昇龍は「ロンドンの経験は素晴らしかった。本当にみんなに感謝したい。これをきっかけに相撲ファンがさらに広がってくれたら」とコメント。次なる海外巡業は2026年6月のパリが予定されており、「それまで関取として頑張り続けたい」と、世界各地への相撲普及へ抱負を語りました。

日本の伝統文化と世界の人々をつなぐ――ロンドン公演の意義

今回のロンドン公演で浮き彫りとなったのは、日本の国技「相撲」が持つ国境を越えた魅力です。どんな土地でも、礼節と闘志を見せる力士たちの姿は変わりません。
異国の地で土俵を作り、伝統の装束と技をもって相手と対峙する――その姿は、「日本文化」の象徴にとどまらず、現地の人々に心からのリスペクトをもって受け止められています。

ヨーロッパの文化都市・ロンドンで、歴史的建造物や現代カルチャーに彩られた空気感の中、チェルシーの本拠地を訪れるというアクションは、まさに新時代の異文化融合の象徴。
「地下鉄とバスを使った日常の体験」「相撲の伝道」「サッカーとの交流」――小さな冒険が、やがて大きな国際交流のうねりへ。力士たちの姿を通じて、相撲は確かに世界へ羽ばたいています。

まとめ:力士たちの歩みがつなぐ日本と世界

高安は「また来たい」と語り、豊昇龍は「世界に発信していくことが自分たちの役割」と、両者ともロンドン滞在を心から楽しみ、今後に向けてのエネルギーを蓄えました。
これからの相撲界にとって、今回の公演や現地交流の経験はさらなる国際化への大きな布石。九州場所、そして来年のパリを含む世界へ、日本の魂あふれる「和」のスポーツが、ますます広まっていくことでしょう。

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