34年ぶり!東京で世界陸上が開幕――35キロ競歩 王者・川野将虎が金メダルへ

はじめに

2025年9月13日、34年ぶりに東京で世界陸上が開幕しました。国立競技場を舞台に、世界中からトップアスリートが集結し、熱戦の幕が切って落とされました。この中でも特に注目を集めているのが35キロ競歩です。東京大会は従来より30分早く、午前7時30分に男女の競歩選手たちがスタート。日本人金メダル最有力ともいえる川野将虎選手の登場に、会場は早朝から興奮に包まれました。

35キロ競歩――進化を続ける新種目

35キロ競歩は、近年新たに導入された長距離種目であり、記録の歴史はまだ浅いものの、その過酷さや高度な技術が求められることで注目されています。世界陸上2025では男子・女子共に35キロ競歩が正式競技として開催されます。競歩というと「歩く」競技と思われがちですが、実際にはフルマラソン(42.195km)を3時間以内で“歩いて”しまうほどのスピードです。速い選手は1kmを約4分で進みます。一般的な高校生男子の持久走記録と比較しても、その圧倒的なスピードが分かります。

川野将虎選手――世界記録保持者としての挑戦

川野将虎選手(旭化成)は日本を代表し、世界の頂点を目指す競歩選手です。2024年の高畠大会では、見事35キロ競歩で2時間21分47秒という世界新記録を樹立しました。この記録は世界陸連が定める条件に合致し、「日本新・アジア新」から「世界新」へと認定されました。

川野選手はこれまでにも多くの国際大会で結果を残してきましたが、今回の東京世界陸上でさらにもう一段上を目指し、金メダル獲得へ強い意欲を見せています。「これはゴールではなくスタートライン」と語り、日々の厳しい練習と、多くの支えに感謝の意を表しています。記録への挑戦のみならず、技術面においても細部までこだわり、安定した歩行と正確なフォームを追求しています。

競歩の魅力と技術

  • 競歩は歩くスピードの極限を追求する競技です。片足が常に地面についていること、膝が地面から離れている間は伸びていることなど細かな規則があります。
  • 35キロという長丁場は、体力・持久力・集中力すべてが試されます。ペース管理が重要であり、5kmごとのラップタイムからも、選手の戦略や消耗度が読み取れます。
  • 川野選手の2024年の記録では、5kmごと約20分という均等で安定したペースを維持し最後まで崩れませんでした。これは世界でも類を見ないハイレベルな歩行です。

東京大会の開催意義――地元開催の熱気

今大会は、日本陸上競技連盟(陸連)会長の有森裕子氏が涙ながらに会見を行うなど、関係者・選手・ファンの皆が特別な思いを胸に迎えました。34年ぶりの地元開催は、日本陸上界にとって節目となる歴史的イベントです。国立競技場には早朝ながら多くの観客が詰めかけ、世界トップの選手たちに惜しみない声援を送っています。

有森会長は「この東京の地で世界最高峰の陸上大会が再び開催されることに大きな意義を感じます。競歩をはじめ、全競技が多くの人の希望や勇気に変わることを願っています」と語り、日本人選手の活躍に大きな期待を寄せています。

競歩の歴史と進化

  • 2025年版の世界陸連採点表では、35km競歩のタイムと従来の20km競歩・50km競歩のタイムが相互に換算されるようになりました。
  • 現在の35km競歩世界記録は2時間20分43秒、日本記録は川野将虎選手の2時間21分47秒です。
  • 20km競歩の世界記録は1時間21分08秒。従来の50km競歩は半世紀以上の歴史を持ちますが、近年は身体への負担を考慮し、35kmに種目変更されています。

この進化は選手たちの技術力向上だけでなく、観戦する人々にも分かりやすい競技になったといえるでしょう。

市民ランナーから見た競歩の凄さ

市民ランナーが憧れる「サブ・スリー」(フルマラソンで3時間切り)ですが、2024年4月~2025年3月の1年間にこれを達成した日本人は4.42%のみ。ところが、世界クラスの競歩選手はマラソンに匹敵する距離を「歩き」で達成します。高校男子平均のペースでも、世界記録や川野選手の記録には及びません。これは競歩が極めて高度な技術と体力を要する競技である証拠です。

大会の展望と見どころ

  • 35キロ競歩のスタートは例年より30分早まり、コンディション管理や準備がより重要になります。
  • 川野将虎選手の金メダルへの挑戦には、日本国内はもちろん世界が注目しています。ホームグラウンドの利を活かした戦いとなるでしょう。
  • 選手たちは、熱い声援を力に変え、世界記録への挑戦を続けています。一歩一歩積み重ねる競技の奥深さや、勝負の駆け引きも今大会の特色です。

大会期間・アクセス情報

東京2025世界陸上は9月13日(土)から21日(日)までの9日間開催。国立競技場が会場となり、各競技ごとにチケットサイトも用意されています。早朝スタートの競歩は、朝の澄んだ空気と観客の声援に包まれて進行します。

まとめ――歴史の扉を開ける競歩大会

今大会は、競歩という地味な印象の競技に熱い注目が集まっています。川野将虎選手が金メダル・世界新記録を狙う姿に、日本中の期待と応援が寄せられ、大きなドラマが生まれています。誰もが歩くというシンプルな動きを極限まで突き詰めた競歩――その技と情熱、成長の物語が、東京の地で新たな歴史となるでしょう。

そして、有森裕子陸連会長の涙の会見にも表れたように、この大会は日本陸上界、そしてすべてのスポーツファンにとって大きな希望と感動の舞台です。これからの9日間、世界のトップアスリートたちによるハイレベルな戦いを、そして35キロ競歩という「新しい歴史」の瞬間をぜひご覧ください。

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