3500万ユーロの新エースは失敗なのか?フェイエノールトからミランへ渡ったFWヒメネスの現在地
フェイエノールトでゴールを量産し、「エース」として君臨していたメキシコ代表FWサンティアゴ・ヒメネス。移籍金3500万ユーロ級という大きな投資を受けてACミランへ加入したものの、ミランでは厳しい状況に立たされていると報じられています。ここでは、フェイエノールト時代の実績からミラン移籍の経緯、そして「このまま失敗で終わってしまうのか」という現在の評価までを、やさしく整理してお伝えします。
フェイエノールトで「絶対的エース」となったヒメネス
まずは、ヒメネスがどれだけ優れたストライカーだったのかを振り返ってみましょう。
- メキシコの名門クラブ「クルス・アスル」の下部組織出身
- 2022年7月にフェイエノールトへ完全移籍
- 在籍2年半で公式戦105試合65ゴール14アシストという非常に高い数字
- 2022-23シーズンは公式戦45試合23ゴールでエールディビジ優勝に大きく貢献
- 日本代表FW上田綺世のポジション確保を阻む「不動のエース」として知られていた
特に、2022-23シーズンの23ゴールはオランダ1部リーグでもトップクラスの成績であり、フェイエノールトにとっては6年ぶりのリーグ優勝を引き寄せる大きな原動力となりました。この活躍により、ヒメネスはヨーロッパ各国のビッグクラブから注目される存在となっていきます。
移籍金3500万ユーロ級の大型移籍でACミランへ
その中で、最終的にヒメネスを獲得したのがイタリア・セリエAの名門、ACミランでした。
- 2025年2月3日、ミランがフェイエノールトからヒメネスを完全移籍で獲得
- 契約期間は4年半(~2029年6月末)
- 背番号は、ガラタサライへ期限付き移籍したアルバロ・モラタが着けていた「7番」
移籍金については、メディアによって若干の差はありますが、
- オランダ『AD』などの報道では総額約3500万ユーロ(約55億5000万円)
- イタリア、その他メディアでは固定3000万ユーロ+出来高ボーナスと伝えられている
いずれにしても、ミランにとって非常に大きな投資であることは間違いなく、「新たな得点源」「ポスト・モラタ」としての期待が非常に高かったことがうかがえます。
期待と現実のギャップ:ミランでの序盤のインパクト
ミラン加入直後のヒメネスは、ある程度の存在感を示していました。
- ミラン加入後すぐにコッパ・イタリア準々決勝ローマ戦で途中出場し、公式戦デビュー
- チャンピオンズリーグでも、フェイエノールト時代から見せていた「大舞台での強さ」を感じさせる活躍を見せた試合もあった
しかし、その後のシーズンが進むにつれて、状況は徐々に厳しい方向へと傾いていきます。
今季はノーゴールのまま負傷離脱…「失敗」の声が強まる
現在、大きな話題となっているのが、「3500万ユーロを投じた新FWは、このまま失敗で終わるのか?」という論調の記事です。その背景には、以下のような状況があります。
- 今季、ヒメネスはセリエAでいまだノーゴールと報じられている
- ゴールが生まれないまま負傷離脱となり、戦線を離れている
- 戦術面でも、チームの攻撃スタイルや周囲の選手との連係が十分に噛み合っていないとの指摘がある(報道全体の論調)
これにより、「高額な移籍金に見合う活躍ができていない」「このままではミランでの居場所がなくなってしまうのではないか」という厳しい見方が広がっています。
なぜ「失敗」と言われ始めているのか?
ヒメネスが「失敗」とまで言われてしまう背景には、いくつかのポイントが重なっています。
1. 高額移籍金による期待値の高さ
まず大きいのは、やはり3500万ユーロ級の移籍金です。この規模の投資を行った選手には、「即戦力としてゴールを量産してほしい」「チームを一段上のレベルに引き上げてほしい」といった期待がかかります。
フェイエノールトで2年半の間に65ゴールを挙げた「圧倒的な決定力」を、そのままセリエAでも見せてくれるはずだと多くの人が考えていました。しかし実際には、セリエAでのゴール数が伸びないまま時間が経ってしまい、「期待とのギャップ」が大きな失望となって表面化している状況です。
2. 負傷による離脱とリズムの喪失
今季のヒメネスは、コンディション不良や負傷に悩まされ、途中で戦線を離脱しています。新しいリーグ・新しいクラブで結果を出すためには、試合に出続けてリズムをつかむことが非常に重要ですが、それが途切れてしまったことも大きな痛手です。
フェイエノールト時代も、一時的な負傷離脱はあったものの、基本的には試合に出続けてゴールを重ねる中で、「エース」としての立場と自信を築いていました。ミランでは、そのサイクルを確立する前にブレーキがかかってしまった形です。
3. ミランの戦術とのフィット感の問題
戦術面でも、ヒメネスには少なからず“適応の壁”があったと考えられます。
- フェイエノールト時代は、自身を中心にした攻撃が組み立てられ、ゴール前でのフィニッシュワークに専念しやすい環境だった
- ミランでは、周囲に技術の高いアタッカーが多く、スペースの使い方やビルドアップ参加など、求められる役割がやや異なる
- セリエA特有の守備の固さ、戦術的な駆け引きの多さもあり、オランダ時代ほど自由にシュートまで持ち込めないことが多い
こうした環境の変化にまだ十分に順応できていないという見方も、現地メディアの論調から読み取ることができます。
4. ポジション争いの激化と「居場所」問題
ミランには、もともと経験豊富なストライカーや攻撃的選手が多く在籍しています。その中で、結果が出ていないヒメネスは、どうしても序列を下げざるを得ない状況に追い込まれています。
- モラタの退団後、「7番」を託されるほどの期待を受けていたが、数字の面で応えられていない
- 若手や他のFWが結果を残せば、ヒメネスの出場機会はさらに限られてしまう
- 「ミランでの居場所がもう無いのではないか」という厳しい表現まで飛び出している
これは、単にコンディションや調子だけでなく、「クラブの中での立ち位置」というメンタル面にも影響を及ぼす問題です。
それでも消えない「潜在能力」への評価
一方で、ヒメネスのこれまでのキャリアを振り返ると、「このまま完全な失敗と断じるのはまだ早い」という見方も成り立ちます。
- フェイエノールトでの2年半、105試合65ゴール14アシストという確かな実績
- 2023-24シーズン以降も、負傷を抱えながら公式戦17試合13ゴールを挙げるなど、コンディションが良い時の決定力は健在だった
- メキシコ代表としても30試合以上に出場しており、国際舞台での経験も積んでいる
つまり、「実力そのものが疑わしい」わけではなく、
- 新しいリーグ(セリエA)への適応
- クラブ戦術との相性
- 負傷からの復活とコンディション調整
といった複数の要素が複雑に絡み合い、結果として「今季はノーゴール」「失敗の可能性」という厳しい評価につながっていると考えられます。
フェイエノールト側への影響と、上田綺世にとっての追い風
ヒメネスのミラン移籍は、フェイエノールトにとっても大きな変化をもたらしました。
- エースFWの退団により、前線の構成が大きく変わった
- これまでレギュラー定着に苦しんでいた日本代表FW上田綺世にとっては、大きなチャンスとなった
- 移籍に向けてヒメネスが招集外となった試合で、上田が先発出場するなど、ポジション争いの構図も変化
フェイエノールトは、ヒメネスという「完成されたエース」を失った一方で、上田や他の選手が出場機会を得て、新たな攻撃の形を模索している状況です。
「フェイエノールトのエース」から「ミランの迷えるストライカー」へ
フェイエノールトでは、攻撃の中心として絶対的な信頼を集めていたヒメネス。ところが、ミランでは、
- 高額な移籍金と背番号7が象徴する「期待の大きさ」
- 今季ノーゴールのまま負傷離脱という「結果の出ていない現実」
- 戦術面・メンタル面の両方で、まだ自分の居場所をつかめていない印象
という、非常に難しい立場に立たされています。
フェイエノールトからミランへと環境を移し、「ステップアップ」のはずだった大型移籍は、少なくとも現時点では「期待外れ」「失敗の可能性」という厳しい評価を受けていると言わざるを得ません。
ただし、まだ契約期間は長く残されており、ヒメネス自身も23歳と若いストライカーです。フェイエノールトで見せていたような決定力と勝負強さを、再びピッチ上で示すことができるかどうか。今後の復帰と巻き返しに、多くのファンと関係者の視線が注がれています。




