宇都宮ブレックス新アリーナ構想に追い風 企業版ふるさと納税第1号にニチガス
プロバスケットボールB1・宇都宮ブレックスが進めている新アリーナ構想に向けて、大きな一歩となる動きがありました。宇都宮市が活用している企業版ふるさと納税による寄付の第1号として、エネルギー関連企業の日本ガス(ニチガス)が参加したのです。これにより、新アリーナの基本構想・計画づくりを支える資金面での後押しが、また一つ具体的な形となりました。
ブレックス新アリーナ計画とは
宇都宮ブレックスを運営する株式会社栃木ブレックスは、かねてより新アリーナの整備に向けた検討を進めています。ただし、現時点で「建設場所」や「着工時期」などが正式に決まったわけではなく、まずは基本構想・基本計画を固める段階にあります。
現在のホームアリーナであるブレックスアリーナ宇都宮は、Bリーグが2026年からスタートさせる新トップリーグ「B.PREMIER(Bリーグ・プレミア)」参入要件を満たすための改修が進められています。それでもクラブとしては、長期的な視点から「新アリーナ建設を必ず実現する」という強い目標を掲げ、行政や専門家、民間企業との協議を重ねてきました。
ブレックスが描く新アリーナのビジョンは、「スポーツ観戦なら宇都宮」と言われるような観戦体験の質の徹底追求に加え、「日本一の熱狂と一体感」を生み出す空間づくりです。さらに、試合がない日も地域住民が健康づくりや交流に利用できる「日常的に集える場所」を目指しており、地域の新たなにぎわい拠点としての役割も期待されています。
ふるさと納税を活用した計画策定支援
この新アリーナ構想を前に進めるために欠かせないのが、基本構想・計画づくりのための検証作業です。建設費が全国的に高騰する中で、総事業費の見通しや事業の採算性、資金調達の方法などを丁寧に見極める必要があり、そのための費用として約5,500万円が必要と見込まれています。
内訳としては、約1,500万円を国庫補助でまかない、残る約4,000万円を宇都宮市がふるさと納税制度を活用して支援する枠組みが示されています。このふるさと納税には、全国の個人だけでなく、企業が活用できる「企業版ふるさと納税」も含まれています。
宇都宮市と栃木ブレックスは、こうした計画策定費を確保するため、共同会見を開き、ふるさと納税を通じた支援を正式に発表しました。市としても、新アリーナが地域経済や賑わい創出に大きな効果をもたらす可能性があると見ており、クラブと連携しながら準備を進めています。
企業版ふるさと納税とは?
企業版ふるさと納税は、企業が地方自治体のまちづくりや地域活性化プロジェクトに対して寄付を行うと、法人税などの控除が受けられる制度です。自治体にとっては、地域の将来を支える大きな事業に民間資金を呼び込むための有力な手段であり、企業にとっても地域貢献と自社のイメージ向上、さらには将来的なビジネス機会の創出につながる可能性があります。
宇都宮ブレックスの新アリーナ構想は、まさにこの企業版ふるさと納税の対象事業として位置づけられており、宇都宮市は企業に対して寄付を呼びかけてきました。その第1号として名乗りを上げたのが、今回の日本ガス(ニチガス)です。
ニチガスが企業版ふるさと納税第1号に
宇都宮市は、新アリーナ構想の計画策定に向けた企業版ふるさと納税として、日本ガス(ニチガス)からの寄付を受けたことを発表しました。これが、市が募集する新アリーナ関連の企業版ふるさと納税として第1号の事例となります。
ニチガスは、首都圏や関東地方を中心に事業を展開するガス関連企業で、地域とのつながりを大切にしている企業としても知られています。今回の寄付は、単にお金を出すだけでなく、地域スポーツの発展を応援し、宇都宮や栃木の魅力向上に貢献したいという思いが込められているといえます。
宇都宮ブレックスにとっては、これまで行政との協議や専門家との検証に多くの時間とコストをかけてきた中で、具体的な企業の支援が形となったことは大きな意味があります。また、ニチガスの決断は、今後の他企業の参画を後押しする象徴的な一歩にもなりそうです。
新アリーナ実現に向けた課題と期待
一方で、新アリーナ構想の実現には、まだ多くの課題が残されています。最大のハードルとなっているのが、各種報道でも取り上げられている「建設費の急騰」です。資材価格や人件費の上昇により、当初想定していた総事業費を大きく上回る見込みとなっており、慎重な検証が避けられない状況です。
ブレックス側は、設計・施工会社との対話を重ねながら、最新の建設費水準を反映した総事業費の最終評価や、宇都宮という地方中核都市でアリーナ事業がどれだけ採算を取れるかといった点の検証を進めています。加えて、新アリーナが宇都宮市や栃木県にもたらす経済的・社会的価値についても、多角的な分析が行われている段階です。
それでも、クラブは「建設コストの高騰という壁はあるが、長く愛され、高い競争力を持つアリーナを実現するために、計画の精度を高めながら前に進む」との姿勢を示しています。宇都宮市も、ふるさと納税の枠組みを用いて計画策定をサポートすることで、最終的な実行判断に必要な材料を整えていく考えです。
地域とともにつくる「BREX NATION」の拠点へ
宇都宮ブレックスは、ファンやパートナー企業を「BREX NATION」と呼び、クラブと地域が一体となって歩む姿を大切にしてきました。新アリーナは、そのBREX NATIONの象徴的な拠点となることが期待されています。
クラブが掲げる新アリーナのコンセプトには、試合観戦の熱狂だけでなく、地域の子どもたちがスポーツに親しみ、高齢者も健康づくりのために日常的に足を運べるような、開かれた空間づくりが含まれています。また、イベントやコンサートなど、バスケットボール以外の用途も想定されており、街の新たなにぎわいの場としての役割も担うことになりそうです。
今回のニチガスによる企業版ふるさと納税第1号は、そうしたビジョンに共感する企業が具体的な形で参画した例といえます。今後、他の企業や個人からの支援が広がれば、新アリーナ構想はさらに現実味を帯びていくでしょう。
これからの動きに注目
現時点では、新アリーナの建設そのものが正式決定したわけではなく、技術面・事業面の詳細な検証を進める段階ですが、行政・企業・クラブが連携して一歩ずつ前進していることは確かです。宇都宮市がふるさと納税を通じて後押しし、ニチガスがその第1号として名乗りを上げたことで、今後の議論や検討にも弾みがつきそうです。
宇都宮ブレックスは、「新アリーナとその先に広がる未来を必ず形にする」という強い意志を示し、地域の人々やファンに対して引き続き理解と支援を呼びかけています。新アリーナが実現したとき、そこは単なるスポーツ施設ではなく、宇都宮と栃木の新たなシンボルとして、多くの人に愛される場所になることが期待されています。




