USWNTがシアトルで9年ぶりの試合を実現、ワールドカップ用の天然芝が実現させた歴史的な復帰

近代のワールドカップ開催に向けた「芝生の条件」

2026年の女子ワールドカップは、カナダ、アメリカ、メキシコの3か国で開催される予定です。この大会に向けて、各会場となるスタジアムには大きな課題がありました。それは「すべての試合会場が天然芝である必要がある」という条件です。

アメリカ女子ナショナルチーム(USWNT)の選手会は2022年にアメリカサッカー協会(U.S. Soccer)と歴史的な労働協約を結びました。この協約の中には「すべての試合は天然芝のフィールドで行う」という重要な条件が含まれていました。この条件により、人工芝を使用していたスタジアムでの試合開催が難しくなったのです。

シアトル・ルーメンフィールドの長年の課題

シアトルにあるルーメンフィールドは、メジャーリーグサッカー(MLS)のシアトル・サウンダーズのホームスタジアムです。しかし、このスタジアムは人工芝を使用していたため、USWNTは2017年以来、このスタジアムでの試合を行うことができませんでした。つまり、近9年間、シアトルではUSWNTの試合が開催されていなかったのです。

この状況が大きく変わるきっかけとなったのが、2026年女子ワールドカップの開催決定でした。ワールドカップの開催に向けて、アメリカ国内の8つのスタジアム(うち7つはアメリカ、1つはカナダ)が人工芝から天然芝への切り替えを余儀なくされたのです。

ルーメンフィールドへの天然芝導入工事

シアトルのルーメンフィールドでは、2026年2月下旬から本格的な芝生の設置工事が始まりました。この工事は単純な作業ではありません。まず、ドレナージシステム(排水システム)を整備し、その上に約30センチメートル分の砂を敷き詰めます。その後、初めて芝生がロール状で敷かれるのです。

導入されたのは、天然芝と人工繊維を組み合わせた「ハイブリッド芝」です。これは通常の天然芝よりも耐久性に優れ、ワールドカップのような高い負荷がかかるイベントに適しているとされています。この下準備と設置作業には、かなりの時間と手間がかかりました。

2026年4月、歴史的な試合が実現

こうした工事を経て、2026年4月14日(現地時間)、ついにその日が訪れました。USWNTは日本との国際試合をシアトルで開催することができたのです。これは約9年ぶりのシアトルでの試合開催となりました。

この試合は単なる定期的な国際試合ではなく、ワールドカップに向けた重要な意味を持っていました。この天然芝フィールドを使った初めての大型スポーツイベントとなり、ワールドカップ本番に向けた「ドライラン」(本番前の試験実施)としての役割を果たしたのです。

シアトルの大観衆が証明した地域の期待

この試合に対する関心は非常に高かったです。アメリカサッカー協会が発表した情報によると、チケット販売開始から短期間で35,000枚以上のチケットが売れたことが報告されました。これは、2023年に元サッカー選手メーガン・ラピノエの引退試合で記録された34,130人の観客数を上回る、新たなシアトル記録となることが予想されていました。

このチケット売上の数字は、シアトルの地域住民がUSWNTの試合を待ちわびていたことを明白に示しています。

ワールドカップに向けた他の試合との関係性

このシアトルでの試合は、4月のFIFA国際試合期間に日本との3試合シリーズの一部でした。同じシリーズでは、カリフォルニア州サンノゼのペイパルパークでも4月11日に試合が予定されており、コロラド州コマーシャルシティのディックス・スポーティング・グッズ・パークでも4月17日に試合が予定されていました。

これらの連続試合は、USWNTがワールドカップに向けて調整を進める過程でも重要な役割を果たしていました。

ワールドカップ後の芝生の運命

興味深いことに、ルーメンフィールドに敷き詰められたこのハイブリッド芝は永続的なものではありません。ワールドカップが終了した後、この芝生と下層の排水システムなど、すべての設備は撤去される予定です。つまり、これは一時的な設置であり、スタジアムは再び通常の状態に戻すことになっているのです。

「芝生」が実現させた9年ぶりの復帰

今回のシアトルでのUSWNT試合開催は、単なるスポーツイベントではなく、労働環境の改善と国際大会の要件が一致したことによる「歴史的な瞬間」でもあります。選手会との労働協約で定められた「天然芝での試合」という条件と、2026年ワールドカップの開催要件が重なることで、初めてシアトルでこの試合が実現したのです。

「芝生」という一見シンプルな要件が、地域の人々にとって待ちに待った試合をもたらしたという背景には、複雑な交渉と準備がありました。このワールドカップに向けた各スタジアムの改修工事は、単なるインフラ整備ではなく、選手たちの権利を守り、地域への大きな恩恵をもたらすプロジェクトとなったのです。

参考元