川内優輝選手が力走V みえ松阪マラソン2025で瀬古利彦さんがランナーを激励
三重県松阪市で開催された「みえ松阪マラソン2025」で、男子フルマラソンは元公務員ランナーとして知られる川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損保)が2時間18分30秒で優勝しました。女子はケニア出身のカムル選手が2時間37分29秒で頂点に立ち、日本有数の市民マラソンとして知られる大会は、今年も大きな盛り上がりを見せました。
大会当日は、マラソン界のレジェンドである瀬古利彦さん、そしてアテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんが会場に駆けつけ、沿道やイベント会場からランナーに温かい声援を送りました。動画配信も行われ、過去最多となる8,862人が出場した今年の大会の熱気が、多くの人に伝えられました。
過去最多8,862人が出場 市民ぐるみのビッグイベントに成長
みえ松阪マラソン2025は、フルマラソンを中心に、一般ランナーから学生、地元のクラブチームまで幅広い層が参加する一大イベントです。今年は過去最多の8,862人が出場し、松阪市全体がランナーを歓迎する「おもてなしムード」に包まれました。
コースは、松阪城跡が残る殿町エリアや、古い街並みが残る伊勢寺町など、歴史と文化を感じられる名所を巡るレイアウト。市民ボランティアや地元団体が沿道に立ち、太鼓演奏や手作りの応援ボード、声援などでランナーを後押ししました。家族連れや子どもたちの姿も多く、市民ぐるみのイベントとして定着している様子がうかがえます。
男子は川内優輝選手が貫禄の優勝
男子フルマラソンでは、あいおいニッセイ同和損保所属の川内優輝選手が、持ち前の粘り強い走りでレースをリードし、2時間18分30秒でフィニッシュしました。厳しいアップダウンや「激坂」と呼ばれる難所もあるコースを、経験豊富なレース運びで攻略し、トップでゴールテープを切りました。
公式記録速報によると、2位には山口県・防府市陸協所属の友森敬一郎選手(2時間18分53秒)、3位には三重県のクラブチームCRC42-2所属の山地伸哉選手(2時間19分07秒)が入り、上位はハイレベルな争いとなりました。
川内選手は、数多くの国内外レースに出場し続ける「タフネスランナー」として知られますが、起伏のある松阪のコースでもその強さを見せつけました。レース後には、「アップダウンや風などコンディションの変化もあったが、これまでの経験を生かして自分のペースを刻めた」といった趣旨のコメントも紹介されており、冷静なレース運びが優勝につながったことがうかがえます。
女子はケニア出身・カムル選手が快走
女子フルマラソンでは、ケニア出身のカムル選手が力強い走りでレースをリードし、2時間37分29秒で優勝しました。世界的にもマラソン強豪国として知られるケニア出身らしい、軽やかでスピード感のある走りで、最後までペースを崩さずにゴールを駆け抜けました。
2位には堀尾和帆選手(ルートインホテルズ女子陸上部、2時間38分48秒)、3位には松村幸栄選手(コモディイイダ駅伝部、2時間40分40秒)が続き、日本の実業団選手たちも安定した走りを見せました。松阪のコースはアップダウンが多く、記録を狙うだけでなく、駆け引きや体力が問われるコースとしても知られていますが、上位選手たちはいずれも力強いレースを展開しました。
瀬古利彦さん・野口みずきさんがランナーを激励
今年の大会を語るうえで欠かせないのが、マラソン界のレジェンドの存在です。かつてボストンマラソンなど世界の主要マラソンで活躍した瀬古利彦さん、そしてアテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんがゲストとして参加し、ランナーや観客を大いに盛り上げました。
スタート前の会場では、瀬古さんが穏やかな笑顔でランナーに声をかけ、「最後まであきらめずに、自分のペースで楽しんでください」といったメッセージを送る姿が紹介されています。沿道でもマイクを握り、ペースダウンしそうなランナーに「ここからが本当の勝負ですよ」と激励する様子が映像で配信され、多くの市民ランナーにとって大きな励みとなりました。
野口さんも同様に、スタートやフィニッシュ付近など各ポイントでランナーに声援を送り、特に女子ランナーや若い世代から大きな拍手を集めていました。五輪金メダリストの存在は「憧れそのもの」と語る参加者も多く、トップアスリートと同じ空気を共有できるのも、みえ松阪マラソンの魅力となっています。
前日の入念な準備 大会を支えたボランティアとスタッフ
みえ松阪マラソン2025の開催にあたっては、大会前日から関係者による入念な準備作業が行われました。スタート・フィニッシュ会場となる総合運動公園では、コース案内板や誘導表示、給水所の備品、医療ブースの設営などが次々と整えられ、ランナーを迎える準備が着々と進みました。
ボランティアスタッフたちは、事前説明会を経て役割分担を確認しながら、受付ブースの設営や参加賞配布の準備、コース周辺の安全確認などを行いました。また、トンネル区間のイルミネーションなど大会名物の演出も、前日から点灯確認や安全対策が行われ、本番当日に万全の状態でランナーを迎えられるように手配されました。
主催者からの「本日、みえ松阪マラソン2025開催します」との案内が公式サイトに掲載され、当日に向けての最終案内や公式記録速報の配信準備も行われたことが伝えられています。大会運営スタッフやボランティア、市民、スポンサーが一体となって支える体制は、回を重ねるごとに洗練されてきています。
多彩なコースと“激坂” ランナーを魅了する松阪の風景
みえ松阪マラソンの大きな特徴のひとつが、コースに組み込まれた松阪ならではの風景です。殿町の松坂城跡や、歴史情緒あふれる寺町、そしてトンネルイルミネーションなど、走りながら観光気分も味わえる構成になっています。
一方で、コースには「激坂」と呼ばれる厳しい上り区間もあり、完走を目指す市民ランナーにとっては大きな関門です。しかし、そうした難所こそ、沿道の応援が最も熱くなるポイントでもあります。地元の子どもたちが鈴や太鼓を鳴らして声を張り上げ、「がんばれー!」と声援を送る姿は、参加者の記憶にも深く刻まれるものとなっています。
ランナーの中には、「景色の変化が多くて、苦しいけれど楽しいコース」「きつい坂も、応援のおかげで乗り越えられた」と話す人も多く、単に記録を狙うだけでなく、「松阪の街を体感できるマラソン」としての魅力が広がっています。
公式記録速報とオンライン発信
大会当日には、主催者であるみえ松阪マラソン実行委員会が、公式記録速報をPDF形式で公開しました。男子・女子フルマラソンの上位成績だけでなく、ハーフや10kmなど他の種目の結果も一覧形式でまとめられ、出場者や関係者が自分や仲間の結果をすぐに確認できるようになっています。
また、スタートシーンやレースの模様は動画としても紹介されており、会場に来られなかった人たちもオンラインを通じて大会の雰囲気を味わえるようになっています。インターネットでの情報発信を積極的に行うことで、地域外からの参加者や、今後の参加を検討しているランナーにも、松阪の魅力や大会の雰囲気を伝える工夫がなされています。
瀬古利彦さんが伝える「走ることの楽しさ」
今回の大会で大きな存在感を放った瀬古利彦さんは、日本のマラソン史を語るうえで欠かせないレジェンドです。現役時代には国内外の主要マラソンで数多くの優勝を重ね、日本の長距離界をけん引してきました。その瀬古さんが、市民ランナーのイベントであるみえ松阪マラソンに参加し、目の前で声をかけてくれることは、多くの参加者にとって大きな励みとなっています。
沿道やイベント会場でのコメントでは、タイムだけを追い求めるのではなく、「自分の体と対話しながら、最後まであきらめないこと」「走ることを楽しむ気持ちを忘れないこと」といったメッセージが紹介されています。これは、初めてフルマラソンに挑戦するランナーから、自己ベスト更新を狙う経験者まで、すべての参加者に響く言葉と言えます。
瀬古さんは、現在も解説や指導者としてマラソン界に関わり続けていますが、地方都市で開かれる市民マラソン大会に足を運び、ランナー一人ひとりを応援する姿勢が、多くの人に「走ることの楽しさ」と「チャレンジすることの大切さ」を伝えています。みえ松阪マラソン2025は、そうしたメッセージが会場全体に広がった大会となりました。
地域とともに歩む「みえ松阪マラソン」のこれから
みえ松阪マラソンは、回を重ねるごとに参加者数を増やし、今や三重県を代表する市民マラソンのひとつとして定着しています。フルマラソンとしての走りごたえのあるコース、市民の温かい応援、歴史ある街並みや自然を生かした景観、そしてトップランナーやレジェンドの参加など、多くの魅力が組み合わさって大会の価値を高めています。
今大会では、過去最多の8,862人が出場し、その一人ひとりにそれぞれのドラマがありました。記録を狙った人、完走を目標にチャレンジした人、仲間と楽しみながら走った人――それぞれの思いを、松阪の街と人々が受け止めた一日となりました。
そして、その中心には、ランナーを励まし続けた瀬古利彦さん



