大前隆貴が語る「ちっちゃくても勝てる」バレー 憧れの石川祐希からつながる物語
男子バレーボール・SVリーグの東京グレートベアーズでリベロを務める大前隆貴選手が、人気バレーボール漫画『ハイキュー‼』とのコラボ企画で、自身の理想の「ベストメンバー」を語りました。日向翔陽や星海光来といった“小さなエース”たちを中心に選んだ理由には、「ちっちゃくても勝てる」という、彼自身のバレー観が色濃くにじんでいます。
さらに、その背景には、少年時代から憧れ続けてきた日本代表エース石川祐希の存在や、高校・大学時代を通じて培った「楽しむバレー」の哲学があります。本記事では、『ハイキュー‼×SVリーグ』コラボ企画で見えた大前選手の素顔と、その根っこにある石川祐希への憧れ、そして「小さくても戦えるバレー」への思いを、やさしく紐解いていきます。
『ハイキュー‼×SVリーグ』で話題の「ベストメンバー」企画とは
今回のニュースは、集英社のWebメディア「webSportiva」で連載されている『ハイキュー‼×SVリーグ コラボ連載』の一企画がもとになっています。この連載では、現役のSVリーグ選手たちが、大人気漫画『ハイキュー‼』について語り、
- 好きなキャラクター
- 印象に残っている試合
- 自分が監督になったつもりで選ぶ「ベストメンバー」
といったテーマで、それぞれのバレー観や人柄を見せてくれています。
大前隆貴選手もこの企画に登場し、「監督目線で『ハイキュー‼』のベストメンバーを選ぶなら?」というお題に答えました。そのラインナップが、今ファンの間で大きな話題になっています。
大前隆貴が選んだ『ハイキュー‼』ベストメンバー
大前選手が「自分が監督なら」という目線で選んだ『ハイキュー‼』ベストメンバーは、ポジションごとに次のような顔ぶれでした。
- オポジット:澤村大地(烏野高校)
- アウトサイドヒッター:木兎光太郎(梟谷学園高校)、星海光来(鴎台高校)
- ミドルブロッカー:日向翔陽(烏野高校)、灰羽リエーフ(音駒高校)
- セッター:及川徹(青葉城西高校)
- リベロ:夜久衛輔(音駒高校)
『ハイキュー‼』ファンなら思わずうなずいてしまうような人気キャラクターたちが並ぶ一方で、注目したいのは、アウトサイドヒッターの星海光来、ミドルブロッカーの日向翔陽といった、「身長は高くないが、驚異的な跳躍力と技術で勝負する選手」を重視している点です。
「ちっちゃくても勝てる」星海光来と日向翔陽への共感
大前選手は、星海光来を選んだ理由について、「身長は低くても器用で、めっちゃ跳ぶ選手が好き」と語っています。星海は、作中でも「小さな巨人」と呼ばれる存在で、身体的なハンデを感じさせないほどのスピードとパワーを武器に戦います。
また、ミドルブロッカーには日向翔陽を選び、星海と合わせて「バレーはちっちゃくても勝てるというところを見せたい」と話しています。この言葉には、身長が174cmと男子バレー選手としては大きくない中で、リベロとして道を切りひらいてきた大前選手自身の経験が重なっているように感じられます。
身長に恵まれなくても、スキルや読み、機動力で勝負できる——大前選手は、星海や日向のプレースタイルに、自分が志してきたバレーの在り方を重ね合わせているのでしょう。
「楽しいバレー」を支える個性派メンバー選び
大前選手のベストメンバーには、「楽しいバレー」を大事にする彼のスタイルも色濃く出ています。
ミドルブロッカーに選んだ灰羽リエーフについて、大前選手は「元気なところがいい」と語り、自分自身も「お祭りみたいな感じの楽しいバレー」をしたいと明かしています。堅苦しく考えるのではなく、のびのびとプレーできる雰囲気を大切にしたいという思いが伝わってきます。
また、オポジットに澤村大地を選んだ理由としては、「冷静さ、守備力、リーダーシップ」を評価していることを挙げています。攻撃的で自由なスパイカー陣をまとめる「キャプテン」としての役割を期待しているようです。
セッターには及川徹を選び、「センスがあって、“自由すぎる”スパイカー陣に好き勝手やらせてくれそう」とコメント。リベロには夜久衛輔を選び、「周りが見えていてリーダーシップがあり、落ち着いているリベロがいい」と理由を語っています。同じリベロの西谷夕も候補に挙げつつ、よりチームメイトを自由にさせてくれる存在として夜久を選んだ点も印象的です。
こうした言葉の端々から、大前選手自身が、「個性を尊重し、選手が伸び伸びと力を発揮できるチーム」を理想としていることがうかがえます。
大前隆貴という選手 ポジションと歩み
ここで改めて、大前隆貴選手がどのような選手なのかを簡単に整理しておきましょう。
- 所属:東京グレートベアーズ(SVリーグ)
- ポジション:リベロ
- 生年月日:2002年11月21日
- 出身地:愛知県
- 身長:174cm
小学校3年生のとき、バレー経験者の姉たちの影響で競技を始めました。中学時代にはJOC(ジュニアオリンピックカップ)に出場する代表メンバーに選出され、早くからそのセンスを認められていた選手です。
愛知の強豪・星城高校ではセッターとしてプレーし、3年時には春高バレーに出場しています。高校卒業後は愛知学院大学に進学し、ポジションをリベロに転向。西日本インカレ優勝に貢献し、自身もリベロ賞などを受賞するなど、大学バレー界有数のリベロとして名を上げました。
2025年、大学卒業とともに東京グレートベアーズに入団し、SVリーグの舞台に立っています。
春高の悔しい欠場と、それでも続いたバレーへの道
大前選手のもうひとつの大きな転機として語られているのが、高校時代の春高バレーでの悔しい経験です。
星城高校でセッターとして活躍していた大前選手は、3年生のときに春高バレー出場を果たしますが、その大会を前にケガに見舞われ、満足のいく形でプレーできない苦しい時間を経験しました。全国の舞台で思い切り戦えなかった悔しさは、大前選手の中で長く残る出来事だったといいます。
しかし、その経験があったからこそ、大学でリベロに本格的に転向し、「あらゆるポジションをリベロの目線で見てきた強み」を活かす今のスタイルにつながったとも語られています。SVリーグ開幕直前にもケガに見舞われながら、前向きにリハビリに取り組み、プロの舞台で再び這い上がろうとする姿勢は、多くのファンの心を打っています。
憧れの存在・石川祐希との接点
大前選手を語る上で欠かせないのが、日本代表のエースとして世界で活躍する石川祐希の存在です。
インタビューでは、「憧れた選手」として石川祐希の名前が挙げられており、大前選手がバレーに真剣に向き合う上での大きな目標だったことが紹介されています。石川は同じ愛知県出身で、星城高校の大先輩でもあります。世界を舞台に戦うスター選手の背中を追いかけることが、大前選手の原動力になってきました。
また、大前選手の周囲には、石川と同級生のリベロとしてプレーしていた選手もおり、そうした縁の中で「世界で戦うエースを支えるポジション」としてのリベロ像に、大きな影響を受けたことがうかがえます。
石川が高い打点と決定力でチームを引っ張る「大エース」なら、大前はコート後方から支える「守護神」を目指していると言えるでしょう。ポジションもプレースタイルも違いますが、「自分の強みでチームに貢献する」という軸は、どこか重なる部分がありそうです。
“小さくても戦える”リベロとしての矜持
身長174cmという数字は、世界レベルの男子バレーボーラーと比べると決して高くありません。しかし、大前選手はその中で「リベロ」というポジションを選び取り、自らのキャリアを切り開いてきました。
『ハイキュー‼』のキャラクターに目を向けたとき、彼が日向翔陽や星海光来といった“小さな選手たち”を中心に据え、「ちっちゃくても勝てる」と語ったのは、偶然ではないでしょう。
守備専門のリベロは得点を直接決めることはありませんが、「つなぐ」ことによって攻撃の土台を作り、チームの流れを左右する非常に重要な役割を担います。大前選手は、高校ではセッター、大学ではリベロと、さまざまな視点からバレーを見てきた経験をもとに、「小さくてもチームを勝たせられる」ポジションの価値を体現しようとしています。
その姿勢は、『ハイキュー‼』で日向が身長の壁に挑み続ける物語や、星海が「小さな巨人」としてコートに君臨する姿と、どこか重なって見えます。
大前隆貴が選ぶ『ハイキュー‼』ベストゲーム
コラボ企画では、「作中の個人的ベストゲーム」についても質問が投げかけられました。大前選手が挙げたのは、作中屈指の名試合と名高い烏野高校 vs 稲荷崎高校の一戦です。
特に印象的だったシーンとして、大前選手はラスト1点で影山飛雄と日向翔陽が、宮兄弟の“変人速攻”をブロックする場面を挙げています。自分たちの必殺技を、あえてブロックで止める——「自分たちの技だからわかるんだ」という感覚に鳥肌が立ったと振り返っています。
「決められる」と誰もが思った場面で、まさかのブロックポイントを決めて試合を終わらせる。自分たちの代名詞とも言える攻撃を、自分たちで封じて勝つ。そのドラマチックな展開から、大前選手は「変人速攻は俺たちの技」というメッセージを強く感じ取ったといいます。
この試合をベストゲームとして選んだ背景には、「自分たちの武器を誰よりも理解し、最後は自分たちで責任を取る」という、競技者としての覚悟への共感が見て取れます。
石川祐希から『ハイキュー‼』まで 広がるバレーの魅力
今回のコラボ企画を通じて浮かび上がってきたのは、リアルなバレーと漫画が互いに影響し合いながら、競技の魅力を広げているという構図です。
大前選手は、現実の世界では石川祐希というスーパースターに憧れて成長し、同時に『ハイキュー‼』のキャラクターたちからも大きな刺激を受けています。その上で、「ちっちゃくても勝てる」「楽しいバレーがしたい」という、自分なりのバレー観を築き上げてきました。
石川が世界の高さに挑み続けている一方で、大前は“小さな守護神”としてコートを支える存在を目指しています。そのチャレンジは、『ハイキュー‼』のファンにとっても、現実のコートで続いている「もうひとつの物語」として映るのではないでしょうか。
「身長が低いから」「身体的な条件に恵まれていないから」と、スポーツに対して一歩を踏み出せない子どもたちにとっても、大前選手の「ちっちゃくても勝てる」という言葉は、大きな励ましになるはずです。
SVリーグでの飛躍に期待
東京グレートベアーズの一員としてSVリーグに挑む大前隆貴選手は、まだ20代前半と伸びしろ十分の若手リベロです。春高での悔しさ、大学時代の飛躍、開幕直前のケガを乗り越えながら、着実にステップアップしてきました。
今回の『ハイキュー‼×SVリーグ』コラボ企画は、そうした大前選手の歩みやバレー観を、ファンにやさしく伝えるきっかけにもなりました。憧れの石川祐希が世界で見せるプレーに続くように、「ちっちゃくても勝てる」バレーを現実のコートで体現していく大前選手の姿から、今後も目が離せません。



