ソフトバンク新入団会見、“ドラ1不在”でも熱気十分 キーマンは佐々木麟太郎

福岡ソフトバンクホークスが行った新入団選手発表会見は、プロ野球ファンの間で大きな注目を集めました。ドラフト1位指名のスタンフォード大・佐々木麟太郎内野手が不在という、極めて異例の会見となった一方で、壇上に立った若鷹たちは、それぞれが力強い決意を口にし、新しい時代の幕開けを感じさせる時間となりました。

ドラフト1位・佐々木麟太郎は不在 交渉は長期戦へ

今回の新入団会見でもっとも話題となったのが、やはりドラフト1位・佐々木麟太郎の不在です。ソフトバンクはドラフト会議で、米スタンフォード大に在籍する佐々木を1位指名し、競合の末に交渉権を獲得しました。 しかし、佐々木は現在もアメリカで大学に在籍しており、これまでの報道でも「今は大学の授業と来季のシーズンに集中したい」と語っているとされています。

このため、交渉は日本のプロ野球としては異例の長期戦となっており、交渉期限は翌年7月末までとされています。 交渉が本格化するのは来年以降と見られ、現時点で入団の意思を正式には示していないことから、今回の会見にも姿を見せませんでした。

新入団会見の場に、ドラフト1位選手が不在というのは、球界でも珍しいケースです。それでも会見場には、将来を嘱望される新人たちが一堂に会し、ホークスの新たなスタートを印象づけました。

支配下4人&育成8人 “12人の若鷹”がユニホーム姿を披露

会見には、ドラフト2位から5位までの支配下選手4人と、育成選手8人の合わせて12人が出席しました。 福岡市内で行われた会見では、全員が真新しいホークスのユニホームに袖を通し、引き締まった表情でカメラの前に立ちました。

報道によると、支配下選手の背番号は以下のように発表されています。

  • ドラフト2位・稲川竜汰投手(九州共立大):背番号「13」
  • ドラフト3位・鈴木豪太投手(大商大):背番号「26」
  • ドラフト4位・相良雅斗投手(岐阜協立大):背番号「50」
  • ドラフト5位・高橋隆慶内野手(JR東日本):背番号「56」

この日集まった12人は、いずれも今後のホークスを支える「若鷹」として期待される選手たちです。会見では、それぞれが自己紹介と今後の抱負を語り、1月に始まる新人合同自主トレを皮切りに、本格的にプロとしての第一歩を踏み出すことになります。

キーマン・稲川竜汰「勝てる投手になる」背番号13に込めた決意

なかでも、会見でひときわ注目を集めたのが、ドラフト2位・稲川竜汰投手(九州共立大)です。最速152キロを誇る即戦力右腕として期待される稲川は、ホークス伝統の「エース番号」のひとつとも言える背番号13を託されました。

稲川は壇上で、落ち着いた口調ながら、力強い目標を口にしました。

「九州共立大から入団した稲川竜汰です。プロでの目標はチームから信頼され、勝てる投手になることです

さらに、番号について聞かれると、「いい番号をいただいた。先発で勝負したいので、ホークスのエースになれるように頑張っていきます」と語り、「毎年2ケタ勝てるようになりたい」と具体的な数字の目標まで掲げました。 背番号13を「稲川の番号」とファンに認識してもらえるようにしたいという思いも明かし、早くから1軍のマウンドに立つことを強く意識している様子がうかがえます。

佐々木麟太郎への“ラブコール” 「一緒にプレーしたいので、ぜひ来てほしい」

会見では、稲川に対して、ドラフト1位の佐々木麟太郎へのメッセージを求める質問も飛びました。これに対し、稲川ははっきりとした口調で、こう呼びかけました。

(佐々木とは)一緒にプレーしたいので、ぜひ来てほしいというメッセージを送りたいです

すでに大学時代から全国区の知名度を誇る強打者・佐々木麟太郎と、最速152キロを誇る本格派右腕・稲川竜汰。将来、ホークスのユニホームを着て、バッテリーとして同じグラウンドに立つ姿を、多くのファンが思い描いているはずです。稲川のこのメッセージは、その期待を象徴する言葉となりました。

佐々木がプロ入りを決断し、ホークスに加わるかどうかは、まだ時間を要する問題です。それでも、同世代の選手から「一緒にプレーしたい」と率直に言葉をかけられたことは、本人にとっても大きな刺激になるでしょう。今後の交渉の行方とともに、「5年後、10年後のホークスの中軸」を担う可能性を秘めた2人の関係性にも注目が集まりそうです。

小久保監督も新人たちに期待 “変貌”を遂げた先輩投手に言及

今回の新入団会見には、小久保裕紀監督も出席し、一人ひとりの新人選手と固い握手を交わしました。報道によれば、小久保監督は会見の場で、チーム内で大きく成長を遂げた投手・杉山一樹について触れ、「まさか5年後に話を聞いてみたいって選手になるとは」と、その変貌ぶりに驚きを示したと伝えられています。(※このコメントは別報道を踏まえたもの)

杉山は入団当初、安定感に課題があるとされていましたが、近年は1軍でも存在感を発揮し、小久保監督からも信頼を得る投手へと成長しつつあります。監督がこうした“変貌”の実例を挙げたことは、新人たちに向けて「プロに入ってから、いくらでも変われる」というメッセージを送ったとも受け取れます。

今回、12人の新入団選手たちが交わした握手には、「将来、杉山のように、いやそれ以上に伸びてほしい」という指揮官の期待が込められていると言えるでしょう。ドラフト順位やアマチュア時代の評価に関係なく、プロの世界でどれだけ成長できるか。その道のりの第一歩が、この日の会見でした。

1月から新人合同自主トレ プロとしての第一歩

新入団選手たちは、年明け1月から始まる新人合同自主トレーニングに参加し、本格的にプロとしての生活をスタートさせます。 初めて経験する長距離移動や、1日中グラウンドに立ち続ける日々、体づくりや技術面の鍛錬など、想像以上にハードな日々が待っています。

一方で、それは同時に、「同級生」としての絆を深める期間でもあります。12人の新人たちは、支配下・育成という契約形態の違いはあっても、同じホークスの一員として、同じ時間を過ごすことになります。ここで生まれた関係性は、将来、1軍の舞台でともに戦う時にも、大きな支えとなるはずです。

“ドラ1不在”が映し出す、ホークスの新たな挑戦

今回の新入団会見は、「ドラフト1位の佐々木麟太郎が不在」という点ばかりがクローズアップされがちです。しかし、その裏側には、ホークスがこれまで以上に新たな可能性に挑戦している姿も見えてきます。

海外の大学に在籍する日本人選手をドラフト1位で指名し、規約の改定も踏まえながら、長期的なスパンで交渉を続けていく――こうした動きは、日本球界全体を見渡しても、新しい試みと言ってよいものです。 リスクを承知で、それでも佐々木麟太郎という逸材に賭けたホークスの姿勢は、「将来を見据えた補強」に舵を切ったことの表れでもあります。

一方で、会見に登壇した12人の新人選手たちにとっては、「ドラ1不在」という状況は、むしろ自分たちが強くアピールできるチャンスでもあります。実際、稲川竜汰は「ホークスのエースになれるように」と堂々と宣言してみせました。 他の新人たちも、それぞれの言葉でプロでの目標を語り、「自分たちがチームの未来を担う」という自覚をにじませています。

ファンの視線はどうしても、佐々木麟太郎の動向に注がれます。入団交渉がどのような結末を迎えるのか、そして彼がどのユニホームを着て、どの舞台に立つのか――。しかし、ホークスにとって本当に大切なのは、「佐々木の有無」にかかわらず、今回入団した若鷹たちがどれだけ成長し、チームを支える存在になっていくかという点です。

今日、会見場で見せた少し緊張した表情が、数年後には自信に満ちたたくましい顔つきへと変わっていくはずです。その過程を見守ることこそ、プロ野球ファンの大きな楽しみの一つと言えるでしょう。

佐々木麟太郎はホークスのユニホームに袖を通すのか

最後に、改めて佐々木麟太郎について触れておきます。花巻東高時代から「高校通算本塁打記録」を塗り替えるなど、球界屈指の長打力を誇るスラッガーとして注目されてきた佐々木は、現在、米スタンフォード大に在籍し、日米のスカウトから熱視線を浴びてきました。

ソフトバンクはドラフト会議で、DeNAとの競合の末に交渉権を獲得し、「サプライズ指名」とも表現される形で、彼をドラフト1位に指名しました。 その後、ホークスの城島健司CBOがアメリカまで足を運び、佐々木と直接対面して熱意を伝えたとも報じられています。

ただし、佐々木側は「まずは大学のシーズンに集中したい」との姿勢を崩しておらず、入団の意思を明確にしていません。 交渉期限は翌年7月末までとされ、今後の成績や本人の思いの変化など、さまざまな要素が絡み合うだけに、現時点で先行きを断定することはできません。

それでも、今回の新入団会見で、2位・稲川竜汰が「一緒にプレーしたいので、ぜひ来てほしい」とメッセージを送ったことは、ひとつの大きなトピックとなりました。 チームメート候補からの“ラブコール”は、数字や条件とは別の次元で、佐々木の心を動かす材料になるかもしれません。

ホークスファンにとっては、「佐々木麟太郎が本当に入団するのか」という大きな関心とともに、「もし入団すれば、どの打順を打ち、どのポジションを守るのか」「稲川ら同世代とどんな化学反応を見せるのか」といった、さまざまな想像が膨らむことでしょう。

一方で、今回ユニホーム姿を披露した12人の新人たちも、決して「佐々木の陰」に隠れる存在ではありません。むしろ彼らにとっては、「いつか1位指名の選手と肩を並べる」「自分こそがチームの中心になる」という強い意識を持つことが、プロの世界で生き残るための第一条件とも言えます。

“ドラ1不在”という異例の形となった今年の新入団会見。しかし、その舞台に立った若鷹たちは、それぞれが確かな足取りで、プロ野球選手としての道を歩み始めました。佐々木麟太郎がこの輪の中に加わるのかどうか――その答えは、これからの時間の中でゆっくりと明らかになっていくことになります。

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