宮本慎也氏が語る、セ・リーグDH制導入の衝撃と現場の声——プロ野球に新しい時代
プロ野球セ・リーグ、2027年から指名打者制(DH制)導入を正式決定
日本プロ野球界に激震が走りました。2025年8月4日、都内で行われたセ・リーグ理事会において、セントラル・リーグ(セ・リーグ)が2027年シーズンからDH制(指名打者制)を正式導入することが決まったのです。パシフィック・リーグですでに1975年から実施されていたDH制が、ついにセ・リーグにも採用されることとなり、プロ野球の大きな転換点となりました。
これにより、これまで長らくこだわってきた「9人野球」(投手も打席に立つ伝統的な形)に終止符が打たれることになります。特に、現役時代に守備の名手として知られ、引退後も現場や解説の立場からプロ野球を見つめ続けてきた宮本慎也氏は、この歴史的な変化に何を思うのでしょうか。
DH制導入の背景——パ・リーグや高校野球、国際大会の“スタンダード”
DH制は、投手の打席の代わりにバッティング専門の選手(指名打者)を起用できる制度です。1973年にアメリカ・メジャーリーグで始まり、日本ではパ・リーグが1975年にいち早く導入。現在では、韓国や台湾、さらにはWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)など国際大会でも広く採用されており、世界的な野球の“標準”となりました。
2020年、新型コロナウイルス感染拡大の影響による過密日程下で、NPBも日本シリーズ全試合で特例的にDH制を導入し、話題となりました。また、日本高等学校野球連盟や大学野球でも、2026年からの正式採用が決定し、アマチュア球界全体の流れも大きく変わることが今回の決定の後押しとなっています。
伝統と革新のはざまで——“9人野球”の重みとセ・リーグDH制論争の歴史
セ・リーグはこれまで、プロ野球発足以来守ってきた「投手も含めた9人での野球」に強い誇りと伝統を感じてきました。過去に何度もDH制導入議論が巻き起こりましたが、2019年当時の巨人監督・原辰徳氏が「セ・リーグもDH制を使うべきだ」と発言したり、現場の意見を取り入れながらも二分する意見が絶えませんでした。
しかし、近年はパ・リーグとのリーグ間交流や日本シリーズ、さらにはアマチュア野球の変化を受けて「時代の要請」であるという声も高まっていました。
現場からは賛否の声——巨人・阿部監督や阪神・森下選手、広島・床田投手の反応
- 巨人・阿部慎之助監督:「選手たちの負担軽減などを考えると“いいこと”だと思う」。DH制によって投手のケガリスクも減り、バッティング専門選手の活躍が期待できる点を評価しています。
- 阪神・森下翔太選手:「ケガが減るのは素晴らしい」。特に若手や主力選手が守備の負担から解放されることにより、選手寿命が延びる可能性を指摘しています。
- 広島・床田寛樹投手:「正直つまらない気もする」。投手もバッターボックスに立って走塁でアピールしたり、意外な得点シーンがある“面白さ”の喪失に、一抹の寂しさを口にしました。
他にも多くの現場関係者が、「野球の戦略が変わる」「若手にもチャンスが生まれる」と歓迎する一方、「セ・リーグ独自の楽しさがなくなる」と惜しむ声もあり、まさに“両論併記”の様相を呈しています。
新井貴浩監督「着実なチームづくりを」——各球団の対応とDH制への備え
広島東洋カープの新井貴浩監督は、「DH制導入に備え、しっかりとチームづくりを進める」と力強くコメント。現場では、パワー型の打者や代打要員の重要性が高まるとされ、戦力構築やドラフト戦略、選手育成の方針転換が急務となっています。
- バッティング力に優れた助っ人外国人の獲得・起用
- 将来的な二刀流選手の登用や野手転向策
- これまで守備難で出場機会の限られていた選手への“チャンス拡大”
これらの課題に、どう向き合うかが今後のセ・リーグ各チームにとって大きなポイントとなりそうです。
宮本慎也氏の視点――期待と懸念、“日本野球らしさ”へのアンサー
かつて“ショートの大名人”として名を馳せた宮本慎也氏も、「世界基準」でプロ野球が新局面を迎えたことに「大きな歴史の転換点」と冷静に評価しつつも、次のような核心を打つコメントを残しています。
「DH制の導入によって、若手野手やバッティング専門の選手に大きなチャンスが生まれる。ただし、投手の戦略的バントや走塁など、野球の妙味が一つ減ることも心から寂しく感じる。今後は、日本野球として独自の“味”をどこで出せるか、セ・リーグ各球団の知恵と工夫に期待したい」と語ります。
また、「全国の野球少年たちが大きな夢を持ち続けられるよう、DH制時代の新たなスター選手が次々に誕生してほしい」と、世代を超えた野球の魅力発信の必要性も訴えています。
ファン・OB・評論家——さまざまな視点から見た“セ・リーグDH制”
このニュースに対して、ファンやOB、評論家の間でも議論は白熱。DH制のない手に汗握る「スクイズ」や「奇策」、さらには“投手の一発”といった浪漫を惜しむ声、「現代野球の流れを途切れさせてはいけない」という積極派まで、多様な価値観が渦巻いています。
また、一部ファンからは「オールスターや交流戦でのDH制の有無を“駆け引き”として楽しみにしていたので、統一は少し寂しい」という意見も。世代によって感じ方も異なり、特に年配ファンほど“懐かしさ”への愛着が大きい傾向です。
セ・リーグDH制時代へ向けたカウントダウン――2026年は“移行期間”
2026年シーズンは、DH制導入に向けた“移行期間”として各球団や選手、ファンが新しい野球像を模索する一年となります。グラウンドでは、これから数々の新戦術、新ヒーロー誕生の予感。宮本慎也氏ら現場を知るOBの“目線”を通じて、私たちもこの変化をともに見届けていきたいものです。
まとめ――激動のプロ野球、進化するセ・リーグのこれから
2027年、セ・リーグは長い伝統に一つのピリオドを打ちます。これまでにない柔軟な発想と、現場の声を尊重したチーム・選手・ファン一丸となった「新時代の野球」が求められる今、宮本慎也氏の言葉には「本質を見失わず、日本野球の未来を切り拓いてほしい」という強いエールが込められています。
流れる時代の大きなうねりを受け止めながら、これからのセ・リーグ、そして日本プロ野球全体がどのような姿に変貌を遂げていくのか。ファンとともに一歩一歩見届けていきましょう。