J3降格のロアッソ熊本、新監督に片野坂知宏氏就任 大木体制からのバトンと再出発

明治安田J2リーグからの降格が決まり、来季はJ3で再出発するロアッソ熊本が、新たな指揮官として片野坂知宏氏を迎えることを発表しました。
長年クラブを率いてきた大木武監督の退任が決まり、サポーターからは感謝と別れを惜しむ声が多数寄せられるなかでの新体制発表となりました。

クラブは「選手一人ひとりの力を最大限に引き出し、アグレッシブなサッカーでJ2復帰を目指す」方針を掲げており、九州ゆかりの名将に大きな期待が集まっています。

J3降格の現実と、再出発にかけるクラブの思い

ロアッソ熊本は2025シーズンのJ2リーグで9勝10分19敗、勝ち点37の18位に終わり、J3降格が決まりました。
悔しさの残るシーズンとなりましたが、クラブは早い段階で次期監督人事に着手し、12月5日に片野坂氏の就任を正式発表しました。

クラブを運営するアスリートクラブ熊本は、新監督について「すべてのカテゴリーで監督経験があり、選手育成と勝利の両立が期待できる」と評価し、オファーしたと説明しています。
これは、単にJ2復帰という結果だけでなく、中長期的なチーム強化と育成を重視した選択であることをうかがわせます。

片野坂知宏氏とは? 九州ゆかりの名将が熊本へ

新監督の片野坂知宏氏は、1971年4月18日生まれの54歳で、鹿児島県出身です。
現役時代は、

  • サンフレッチェ広島
  • 柏レイソル
  • 大分トリニータ
  • ガンバ大阪
  • ベガルタ仙台

といったクラブでプレーした経験を持ち、Jリーグ黎明期から日本サッカー界を支えてきた存在でもあります。

指導者としては2006年に大分トリニータU-15コーチからキャリアをスタートさせ、

  • ガンバ大阪のコーチ・ヘッドコーチ
  • サンフレッチェ広島のコーチ
  • 大分トリニータ監督(2016〜2021年、2024〜2025年8月)
  • ガンバ大阪監督(2022年)

など、J1からJ3まであらゆるカテゴリーで指揮経験を積んできました。

特に大分トリニータでは、低迷していたチームをJ3からJ2、そしてJ1へと昇格させた実績を持ち、「昇格請負人」としても知られています。
この経験こそ、J3からの再出発を余儀なくされたロアッソ熊本がもっとも求めていたものだと言えるでしょう。

クラブ哲学を継承しつつ、より粘り強く、より魅力的なサッカーへ

片野坂新監督は、クラブ公式サイトなどを通じて、次のようなコメントを発表しています。

まず冒頭で「ロアッソ熊本に関わる全ての皆さま初めまして。この度、ロアッソ熊本の監督に就任いたしました片野坂知宏です」とあいさつし、「真っ赤な情熱に満ちたクラブの指揮を執る機会をいただき、大変有り難く光栄に思います」と感謝の気持ちを述べました。

続けて、ロアッソ熊本のスタイルについて

「ロアッソ熊本は、クラブの想いを胸に、常に攻撃的で攻守にアグレッシブなサッカーを体現してきました。」

と語り、その哲学を尊重する姿勢を強調しています。そのうえで、

「私はその哲学を大切にしながら、選手一人ひとりの力を最大限に引き出し、選手の成長とチーム全体としてより粘り強く、より魅力的なサッカーをお見せできるよう全力を尽くします。」

と述べ、攻撃的でアグレッシブなスタイルに「粘り強さ」と「魅力」を加えたチーム作りを目指す考えを示しました。

さらに、サポーターやパートナー企業に向けて、

「ロアッソ熊本を愛するサポーターの皆さま、パートナー企業の皆さま、ロアッソ熊本に関わる全ての皆さまの思いを背負い、勝利への情熱をピッチで表現してまいります。」

とコメントし、クラブに関わるすべての人々と共に戦う姿勢を明確にしています。

大木武監督への感謝の声と、受け継がれる「ロアッソらしさ」

一方で、今シーズン限りで退任する大木武監督に対しては、多くのサポーターから感謝のメッセージが寄せられています。
地方紙の電子版限定企画として行われたアンケートでは、

  • 「ロアッソを好きになったきっかけが大木さんのサッカーだった」
  • 「いつもサポーターのことを思ってくれていた」

といった声が紹介され、「大木監督だからこそ、ここまでクラブが前向きに戦い続けられた」という評価も多く見られました。(※アンケート内容に関する部分は報道要旨に基づく要約)

実際、大木監督は就任以来、攻撃的でパスをつなぐスタイルを貫き、多くのファンをスタジアムに呼び込んできました。その姿勢は、成績だけでは測れない「ロアッソ熊本らしさ」として、クラブの文化に深く根付いています。

今回、片野坂新監督が「クラブの想いを胸に」「攻守にアグレッシブなサッカー」を継承すると明言していることは、この大木体制からのスムーズなバトンパスを意識してのものでしょう。
スタイルを大きく変えるのではなく、その上に「粘り強さ」と「勝負強さ」を積み重ねていく形がイメージされます。

J2への復帰へ、「ひとりの力を最大限に引き出す」チーム作り

クラブは片野坂氏招へいの理由として、「ひとりの力を最大限に引き出し、アグレッシブなサッカーでJ2復帰を目指す」と説明しています。
これは、単なる戦術面の刷新だけでなく、

  • 若手の成長を促す指導力
  • ベテランの経験を活かすマネジメント
  • それぞれの選手が持つ個性の最大化

といった総合的なチームビルディングを期待している表現でもあります。

片野坂氏は大分トリニータ時代、限られた戦力や予算のなかでも、選手の特性を活かしながらチームを構築し、カテゴリーの壁を越えてきました。
ロアッソ熊本でも、J3という厳しい環境のなかで、同様に「伸ばしながら勝つ」サッカーが求められます。

クラブとしては、J2復帰だけでなく、その先を見据えた「土台作り」の意味合いも強いと言えるでしょう。

サポーターと共に歩む「真っ赤な情熱」の再スタート

ロアッソ熊本はこれまでも、苦しい状況のなかで地元サポーターと共に歩み、クラブを前進させてきました。
J3降格という現実は決して軽いものではありませんが、そのなかで片野坂新監督は「真っ赤な情熱に満ちたクラブ」という表現を用い、クラブと地域へのリスペクトをにじませています。

クラブの公式発表によると、新シーズンは来年8月に開幕するJ3リーグでJ2復帰を目指す見通しです。
それまでの期間には、

  • 新体制でのトレーニング
  • 新戦力の補強や若手の台頭
  • 片野坂流の戦術浸透

といった準備が進められることになります。

一方で、サポーターの間では「大木監督への感謝」と「新監督への期待」が入り混じった、複雑ながらも前向きな空気が広がっています。
クラブにとって今はまさに、

「過去への感謝」と「未来への希望」をつなぐ時間

と言えるでしょう。

片野坂知宏監督のもと、ロアッソ熊本がどのような「より粘り強く、より魅力的なサッカー」を見せてくれるのか。
そして、真っ赤なスタジアムと共に、どのようにJ2の舞台へ戻っていくのか。
来季のJ3での戦いは、クラブの歴史にとって大きな節目となりそうです。

参考元