ミラン、躍動するプリシッチとアッレグリの再建策、そして新サン・シーロ構想──激動のクラブ最新動向
クリスティアン・プリシッチ、ついにラウタロ超え ─ セリエA得点関与数トップの実力
2023年夏、チェルシーからACミランに加入したアメリカ代表FWクリスティアン・プリシッチ。その実力と貢献度は数字でも圧倒的な結果をもたらし、2023-24シーズン以降、名門インテルのエースFWラウタロ・マルティネスをも上回る「46」の得点関与数を記録しています。これはセリエAで現時点最も高い記録であり、プリシッチの存在がいかに攻撃陣にとって不可欠であるかが如実に現れています。
特筆すべきは、負傷中のラファエル・レオンをしっかりと穴埋めし、チームをリードしている点です。開幕からはそのスピードと巧みな仕掛けが大きな武器となり、第5節ナポリ戦ではドリブル突破から先制アシスト、さらには自身も得点をマークし、ミランの勝利へ強く貢献しました。
実際、ミランは近年複数の大型補強を進めてきましたが、攻撃の中心となったプリシッチは、2023-24シーズンに12ゴール8アシスト、昨季11ゴール9アシストを積み重ね、今季もここまで4ゴール2アシストと安定して結果を出し続けています。イタリア全国紙『Gazzetta dello Sport』も彼の得点関与数を賞賛し、「プリシッチこそがミランの心臓」とまで評しています。
前所属のチェルシーでは起用法や戦術の違いもあり苦戦が続いていましたが、ミランでは堅守速攻を軸とするアッレグリ監督のスタイルと見事な適合を見せ、その実力を最大限に発揮中です。
アッレグリ新体制 ─ “低い位置からの守備”が生み出す堅守速攻の再生
一時はチームの成績不振により厳しい批判を浴びていたミランですが、シーズン途中からかつての名将マッシミリアーノ・アッレグリが指揮官として復帰。彼の下での再建が進み、堅守速攻をチーム戦術の中核に据えることで守備的な安定感が増し、同時にカウンターからのスピードある攻撃が再び輝きを放っています。
アッレグリ監督は「低い位置からの守備」をチーム全体に徹底させることで、守備ブロックの強度を高めながら、奪った瞬間にプリシッチやカスティジェホ、レビッチら前線のスピードスターたちが一気にゴールへ襲いかかる戦術を確立しました。その結果、相手ボール保持時もチームがコンパクトに連動し、厳しいプレッシングから生まれるボール奪取が大きな武器となっています。
- 守備では中盤より後方にブロックを形成し、相手を自陣深くまで誘い込む
- ボール奪取後、複数名のアタッカーが一気に前線へスプリント。特にプリシッチが起点となるケースが多い
- 縦に早い攻撃で数的優位を作り、チャンスメイクとフィニッシュに直結
こうした「堅守速攻」の哲学は、イタリア伝統のカテナチオにアレンジを加えたものとも言えます。アッレグリ監督は2010年代のユヴェントス黄金時代や以前もミランで実績を残し、戦術眼と修正力の高さで知られています。選手ひとりひとりに守備への明確な役割を与え、自信を回復させ、その信念は若手にも浸透しています。
先日のナポリ戦では、1点リードの場面から一人退場者が出ながらも粘り強い守備を維持し、PKで1点差に詰め寄られるものの、集中力を切らさず勝利。この試合を含め、ミランは危機的状況から何度も盛り返す底力を見せており、これもアッレグリ体制のもとでチーム意識が刷新されている証です。
新サン・シーロ構想 ─ 約12時間に及ぶ議論の末、市議会が買収案を可決
勝負のピッチ外でも、ACミランとインテルの新たな歴史が動き始めています。長年の課題であった“サン・シーロの老朽化”と新スタジアム計画について、ついにミラノ市議会が約12時間の議論を経て、インテル&ミラン両クラブによる新サン・シーロおよび現行スタジアム買収案を正式に可決しました。
この動きはイタリア国内外でも大きな注目を集めており、サポーターや関係者からも待望の声があがっています。
- 老朽化が進む“サン・シーロ”(ジュゼッペ・メアッツァ)は、ファンの聖地として長年親しまれてきた伝統のスタジアム
- インテル&ミランは、「未来志向」と「伝統継承」の両立を目指し、新スタジアム建設および史跡保存活用という二正面戦略を進めている
- 12時間に及ぶ議会審議を経て、市が両クラブによる新施設建設およびエリア再開発、周辺インフラ投資といった包括案にゴーサイン
これはイタリアサッカー界でも珍しい共同案件であり、両クラブの経済的持続性、安全性向上、地域発展への寄与といった様々なメリットが期待されています。将来的には、新サン・シーロが欧州フットボールの象徴として世界に誇る新ランドマークへと発展していく道筋が描かれています。
新スタジアムの具体的デザインや事業計画、完成スケジュールの詳細については今後更なる議論が交わされていく見込みですが、市議会での可決をもって、歴史的な第一歩が刻まれました。
ミランファン、今後に向けて
ピッチ内外で大きな変革期を迎えているACミラン。プリシッチという新たなエースの台頭、アッレグリ体制による戦術再構築、そして新サン・シーロ計画という3つの絶好機は、クラブとファンに新しい夢と希望を与えはじめています。
「ミランの黄金時代」を知るベテランファンから、次世代の若いサポーターに至るまで、ピッチに躍動する選手たちと、時代を切り拓く新たなチャレンジは、今後数年ヨーロッパサッカー界でも注目の的となることでしょう。
ACミランの挑戦が、この新しい航海の中でさらなる栄光を手にすることを、世界中のミラニスタたちが熱く期待しています。