三菱パジェロ エボリューション――パリ・ダカ制覇と進化の物語
パジェロの伝説、その起源とパリ・ダカール・ラリー
三菱パジェロは、1982年の登場以降、世界中のオフロードファンを魅了し続けてきたSUVです。その中でも「パジェロ エボリューション」は、20世紀最強とまで称されるクロスカントリーモデルとして、その名を自動車史に深く刻んでいます。特に、パリ・ダカール・ラリー(通称:パリダカ)での圧倒的な活躍は世界的伝説として語り継がれています。初代パジェロが登場した1980年代、三菱はモータースポーツを自社ブランドの象徴とし、その血統はパジェロ、後のランサーエボリューションにも受け継がれてきました。
ラリー直系、パジェロ エボリューションの誕生と進化
パジェロは、1983年からパリダカに参戦し続け、1997年には4度目の総合優勝という快挙を達成しました。1998年、競技規則変更によって新たな市販車改造クラス(T2)への挑戦が始まり、そのために誕生したのがパジェロ エボリューションです。このモデルは、単なるカタログモデルの派生ではありません。ラリーで勝つため、そのまま競技に使えるコンペティション専用車として磨き上げられました。
- ワイド化されたボディ: ベースモデルより全幅を90mm拡大、さらに前後トレッド幅も大幅に拡張。
- 徹底的な軽量化と専用コンポーネント:エアロパーツ、ワイドフェンダー、専用サイドステップ。
- 専用設計エンジン:6G74型3.5L V6 DOHC MIVECエンジン、電子制御吸気システム。
- リヤサスペンションの進化:リジッド式からマルチリンク式へ刷新。
- 卓越したトラクション:スーパーセレクト4WD2+電動アクティブデファレンシャルを組み合わせ。
これらの先進的技術の数々が、パジェロエボリューションを単なる市販SUVとは別次元の存在へと昇華させました。わずか1250rpmで30kgm以上のトルク、6500rpmで280psという高出力は、当時のコンペティションモデルをも凌駕するものでした。
市販SUV最高峰 エボリューションの「走り」と「技術」
パジェロ エボリューションは、その名の通り「進化」を体現しています。見る者を圧倒するワイド&ローなスタイリング、アグレッシブなエアロダイナミクス、走りを支える広いトレッドとサスペンションの強化。加えて、電子制御技術の採用が本格的に始まり、難しい荒地でも常に最適なトラクションを自動的に確保します。こうした特異性は、長年のパジェロファンだけでなく、新たなSUVファンにも強いインパクトを与えました。
- フロント+125mm/リア+110mmのワイドトレッドで、オフロードのみならずオンロードでも抜群の安定性。
- エンジンヘッドにはチタンバルブリテーナーやナトリウム封入中空排気バルブを採用し、競技走行時の耐久性と高回転性能を確保。
- スポーティかつ堅牢な専用シートや内外装も、一目でスペシャルモデルだとわかる特別設計。
オフロード性能はパリダカ直系。繊細かつ力強いコントロール性能は、どんな悪路でも絶対的な信頼感でドライバーをサポートします。また、舗装路でのダイナミックなコーナリング性能も高く、街乗りからダートまで万能のパフォーマンスを誇る「走り」のモデルとして高く評価されています。
「ランエボ」へと繋がる三菱渾身の「エボリューション」思想
パジェロ エボリューションを語るうえで外せないのが、「エボリューション」という名が後のランサーエボリューション=ランエボに受け継がれていったという事実です。三菱がモータースポーツで培った技術・ノウハウを量産車にフィードバックさせるその思想は、ラリー競技と市販車の垣根を超える革新でした。「エボリューション」=進化の意味が、パジェロ→ランサーエボリューションへとバトンを渡す形で脈々と流れ続けたのです。
“市販車でラリーに勝つ”という三菱の揺るぎない信念は今も、そしてこれからも語り継がれていくでしょう。パジェロエボリューションの登場は、「レースで鍛え、量産で磨く」という日本車メーカーが誇る文化の頂点とも言えます。
現代に蘇るパジェロ、これからの進化と展望
一時は2019年のファイナルエディションで日本国内の生産が終了したパジェロですが、近年また「復活」の噂と期待が高まっています。2025年には新型パジェロ エボリューションがモーターショーでお披露目され話題となり、アウトランダー譲りのプラグインハイブリッドや、3.0L V6ツインターボ+ハイブリッドのパワートレインを搭載し、より環境性能とパフォーマンスの両立が図られています。
- 従来のオフロードDNAと最新電動化技術の融合
- 都会から荒野まで最強のパートナーとなる走り
- パリダカ直系の、「本気のSUV」としての存在意義の再確認
新世代のパジェロ エボリューションは、見た目も走りも本物志向。それでいて地球環境にも配慮し、これからのSUV像を示す先駆けとなっています。伝統を守りつつ、常に進化し続ける三菱の“エボリューション・スピリット”が、21世紀のオフロードシーンに新たな伝説を刻み続けています。
おわりに――“最強SUV”は永遠に進化し続ける
三菱パジェロエボリューションは、パリ・ダカール・ラリーでの輝かしい歴史、卓越した技術力、そして「エボリューション」という名のもとに受け継がれてきた情熱の結晶です。そこには単なる自動車を超えた、人と機械、自然の過酷な世界を乗り越える物語が込められています。今後も、あの伝統は進化し続け、世界中の多くのファンを魅了していくことでしょう。