第74回インターハイ柔道男子団体――激戦を極めた2025年夏の軌跡
はじめに:全国の強豪が集う夏、日本最強の高校柔道が決する舞台
2025年8月、中国地方・岡山を舞台に開催された第74回全国高等学校総合体育大会柔道競技大会、いわゆる「インターハイ柔道」は、全国の頂点を目指す男子団体戦・個人戦の熱戦が繰り広げられました。本記事では、男子団体試合の戦況と注目校・選手の活躍、話題となった戦術や勝負の分かれ目、そして未来への展望まで、わかりやすい言葉で振り返ります。
男子団体戦――配列順公開で新たな駆け引き、副将に強豪集まる
近年の男子団体戦では、試合メンバーの配列順(出場順)が公開されたうえで試合が行われることが増えており、今年も同様のルールで熱い駆け引きが繰り広げられました。その結果として、「副将(4番手)」に各校の強豪選手が集まりやすい現象がみられ、監督やコーチ陣による采配力が一層問われる大会となりました。
特に、団体戦における「副将」は、チームの流れを決定づけたり、大将にバトンを繋ぐ重要な役割。副将に実力者を配する傾向は多くの強豪校に共通しており、今大会でも副将戦が勝負の行方を大きく左右しました。
ベスト8進出を懸けた激戦、注目校・名張の挑戦
各地を勝ち抜いたチームが全国の舞台に集結し、ベスト8の壁を巡って熾烈な戦いとなりました。特に三重県代表・名張高校の快進撃が印象的でした。名張は、北日本の強豪・青森北高校との対戦で堂崎選手や中井選手が果敢に勝利を収めるなど粘り強い戦いを展開。2-2の同点ながら、“内容勝ち”という僅差で全国屈指の強豪を退け、名門校とも互角以上に渡り合える力を見せつけました。
- 堂崎選手:得意技の大外刈りで見事な一本勝ち。
- 中井選手:固い守りと崩れ上四方固めで勝利。
- 同点ながら“内容勝ち”制度での突破も、昨今のインターハイ柔道らしい見どころの一つ。
名張高校はこれまで全国ベスト8の壁をなかなか超えられずにいましたが、本大会ではその壁に果敢に挑戦し、全国レベルでの存在感を強く印象付けました。
天王山は準々決勝に――東海大相模VS埼玉栄の早すぎる決戦
柔道ファン注目の大一番は、準々決勝で実現した「東海大相模(神奈川)」と「埼玉栄(埼玉)」の対決です。両校ともに全国タイトルの常連として知られ、近年の団体戦では必ずといっていいほど上位に顔を出します。この「天王山」とも呼べるカードが、決勝を待たずに準々決勝で実現することは、多くの関係者やファンの話題となりました。
試合は一進一退の白熱した展開となり、埼玉栄と東海大相模が1-1で並ぶ展開。代表戦までもつれこんだ末、埼玉栄が勝利し4強進出を決めました。両校の選手たちの気迫、互いをリスペクトした攻防、そしてどの試合も最後まで勝敗の行方が分からないスリリングな内容は、インターハイ柔道の醍醐味を存分に味わわせてくれました。
- 埼玉栄:細かい組み手、地力・粘り強さを発揮。
- 東海大相模:攻撃的なスタイルとチームワークが光るも、あと一歩及ばず。
ちなみに、両校は2024年度大会でも全国大会の上位進出を果たしており、毎年熾烈なライバル争いを演じています。
強豪校の系譜――近年の団体優勝校
ここで、近年の男子団体戦における優勝校について整理しておきましょう。
- 2024年度:埼玉栄(埼玉)
- 2023年度:国士館(東京)
- 2022年度:国士館(東京)
団体戦では、埼玉栄、国士館、東海大相模といった伝統校の強さが目立ち、地区大会・都道府県大会でも安定した成績を誇ります。
岡山で展開された熱戦――全国大会の日程・会場
第74回インターハイ柔道競技の男子団体戦は、以下の日程で行われました。
- 8月13日(水):男子団体戦3回戦まで
- 8月14日(木):団体戦4回戦~決勝、個人60kg級・66kg級・73kg級
- 8月15日(金):個人81kg級・90kg級・100kg級・100kg超級
会場は岡山・ジップアリーナ岡山。全国から勝ち抜いた高校生たちがこの会場に集い、一瞬の油断も許さないトーナメントが展開されました。
話題となった戦術と柔道スタイル
今大会では、昔ながらの一本を狙う攻撃柔道と、手堅いポイントゲームの間で駆け引きが激化。副将や大将にエース級を置くことで流れを呼び込む采配が随所で光り、団体戦ならではの“総合力”が強く求められました。
- 配列順の駆け引き:相手校の強みをうまく分散、あるいはぶつけて流れを断ち切る采配が重要となりました。
- “内容勝ち”:判定が同点でも、技の有効性や積極性が評価される仕組みが多くの試合で明暗を分けました。
- 伝統校の底力:国士館・東海大相模・埼玉栄などの常連校は、毎年チーム運営・強化の妙が冴えます。
個人戦でも各地のエースが激突――階級ごとの結果
男子の個人戦は60kg・66kg・73kg・81kg・90kg・100kg・100kg超級の各階級で繰り広げられ、それぞれの階級で全国から実力者が集い、熾烈な優勝争いとなりました。たとえば東京や神奈川、福岡、静岡など、全国の強豪校出身のエースが毎年上位に進出しており、2024年度の60kg級では吉村悠之介(柳ヶ浦)、大成・山本風来らが活躍したことも記憶に新しいところです。
なぜインターハイ柔道はこれほど注目されるのか
インターハイ柔道は、プロの世界に進む選手の“登竜門”であり、高校柔道の集大成の舞台です。団体戦の絆・戦術の奥深さ・個人戦の技術力が融合し、あらゆる局面で「人間ドラマ」と「勝負の妙」が凝縮されています。そのダイナミズムと誇り高い学生たちの姿が、毎年多くの新たなドラマを生み続ける理由なのです。
そして未来へ――世代を超えたチャレンジ
2025年大会も多数の選手が自らを高め、ときに敗北を乗り越え、仲間と汗を流してきました。インターハイ柔道で得た経験や感動は、新たな挑戦に向かう力となり、日本柔道の未来を支える大きな糧となるでしょう。
コロナ禍を乗り越えて戻ってきた日本の夏の高校スポーツ。その真剣な眼差し、成長し続ける若者たちの姿は、見る者すべてに希望と勇気を与えてくれます。
まとめ:第74回インターハイ柔道、次なる物語へ
伝統校の強さ、地方勢の躍進、戦術と個性のぶつかり合い、価値ある絆と挑戦の証。インターハイ柔道男子団体戦は、日本中の柔道ファンに数えきれないほどの名場面と熱い感動を与えてくれました。全国の舞台で磨かれた一つ一つの「技」と「勇気」が、きっとまた新たな歴史を紡いでいくことでしょう。
選手たち、指導者、関係者、すべての人に拍手を送りたい――その努力と情熱に感謝し、来年に向けて、また新しい夢を追い続けましょう。