高校ラグビー冬の主役へ――京都成章とコザが挑む「花園」への青春ドラマ

高校ラグビーの冬が、今年も熱く幕を開けようとしています。第105回全国高校ラグビー大会、いわゆる「花園」には、全国各地から個性あふれるチームが集結します。その中でも、守備を武器に悲願の全国制覇を目指す京都成章高校、そして豊富な運動量を強みに挑戦するコザ高校は、大きな注目を集めています。

本記事では、「冬のアオハル(青春)」という言葉がぴったりの高校ラグビーの魅力とともに、京都成章とコザ、それぞれのチームの特色や戦いぶり、そして大会の見どころを、やさしい言葉でじっくりお伝えします。

「花園」ってどんな大会?高校ラグビー冬の祭典

高校ラグビーにおける「花園」とは、正式には全国高等学校ラグビーフットボール大会のことを指し、その舞台となる東大阪市花園ラグビー場にちなんだ呼び名です。各都道府県の予選を勝ち抜いた代表校だけが、この聖地に立つことができます。

令和7年度となる第105回大会は、例年同様、12月末から年明けにかけて開催され、全国から集まった強豪校、初出場校、そして常連校が、1試合ごとに全力をかけた戦いを繰り広げます。日本ラグビー協会の発表では、京都代表として京都成章高校2大会ぶり17回目の出場を決めており、今大会でも全国から大きな注目を浴びています。

京都成章高校ラグビー部――伝統の「ピラニアタックル」で悲願の花園制覇へ

京都成章高校は、全国的にも名の知られたラグビー強豪校です。これまで幾度となく花園に出場し、常に優勝候補の一角として名前が挙がる存在です。そんな京都成章を語るうえで欠かせないキーワードが、伝統の「ピラニアタックル」と呼ばれる激しいディフェンスです。

「ピラニアタックル」とは、一人ひとりが低く鋭いタックルで相手に食らいつき、二人目、三人目が間髪入れずにサポートしてボールを奪いきるような、執念のこもった守備スタイルを指します。その名の通り、小さな魚・ピラニアが群れで獲物に襲いかかるようなイメージから生まれた呼び名で、相手にとっては少しも気の抜けない“圧力”となります。

今季の京都府予選決勝でも、この「ピラニアタックル」は存分に威力を発揮しました。雨の降る悪条件の中で行われた京都工学院高校との一戦は、実に11大会連続で同じカードとなる因縁のライバル対決。昨季は京都工学院に9年ぶりの優勝を許し、京都成章の連続出場記録が途切れたばかりでした。その雪辱に燃えるチームが掲げたテーマが、「成章のディフェンスを取り戻す」ことでした。

京都府予選決勝――雨中で光った守備とゲームプラン

11月9日に宝が池球技場で行われた京都府予選決勝、京都工学院 vs 京都成章の一戦は、多くのラグビーファンが注目した一戦でした。今季、両校はすでに2度対戦しており、全国選抜大会準々決勝では京都成章が勝利、その後準優勝まで駆け上がっています。一方で、府総体では京都工学院が勝つなど、互いに1勝1敗と実力は拮抗していました。

試合は雨のなかで行われ、キックと陣地獲得を軸にした堅い試合運びが求められる展開に。京都成章はSO岡元聡志の長短を織り交ぜたキックでエリアを確保し、長い時間を相手陣で過ごすことで、試合の主導権を握っていきました。

均衡を破ったのは前半17分。自陣深くで上がったハイパントを岡元が確保すると、すかさず空いたスペースへ展開。そこからFB春藤大翔NO8南川祐樹へとボールがつながり、タッチライン際を一気に駆け抜けてトライを奪います。続く時間帯には、CTB森岡悠良の鋭いタックルで相手のミスを誘い、ターンオーバーからWTB尾関仁がトライを決めるなど、ディフェンスから攻撃へとつながる“成章らしい”得点パターンが次々と生まれました。

森岡はプレースキッカーとしても安定感を発揮し、左右の難しい角度からのコンバージョンを連続で成功させ、前半のうちに14-0とリードを広げます。その後、互いにキックチャージからスコアする場面もあり、前半は19-5で折り返しました。

後半に入っても京都成章の集中力は途切れませんでした。伝統の「ピラニアタックル」は随所で炸裂し、相手のアタックをことごとく寸断。中盤でのタックルから相手にプレッシャーをかけ、ペナルティを誘うと、森岡のPGでさらに3点を追加し、スコアを22-5と突き放します。

最後まで激しいタックルの雨を降らせ、京都工学院を自陣に釘付けにした京都成章は、結局22-12で勝利。スコア以上に内容で上回る快勝で、2大会ぶり17回目となる花園への切符を手にしました。試合後、監督として初めて胴上げされた関崎大輔監督は「最高でした」と笑顔を見せつつ、「去年負けてしまったので、いろいろと思うことはありました」と言葉を詰まらせ、1年間の苦しい歩みを振り返りました。

守って、つないで、走る――京都成章が見せる「冬のアオハル」

京都成章の今年のチームは、特にディフェンスの強度運動量の高さが特徴です。全国選抜大会での準優勝、そして京都府予選での雪辱劇を通じて、「1年間かけてコツコツ積み上げた守備」が形になりつつあると関崎監督も語っています。

ひとつひとつのタックルに、昨季の悔しさや、先輩たちの思いを背負う選手たちの覚悟がにじみ出ています。特に、BKからFWへとポジションチェンジした南川祐樹のように、チーム事情に合わせて役割を変えつつも、持ち味のスピードとフィジカルで貢献する選手の存在は、京都成章の「走るラグビー」をより強く印象づけています。

また、キックを使って相手陣で戦う時間を増やすという、雨中戦に適したゲームプランをきっちり遂行できる冷静さも見逃せないポイントです。ここには、ただ激しくぶつかるだけでなく、「どうすれば勝ちにつながるか」を考え抜いた、戦術面での成熟が感じられます。

花園本大会では、全国から集まる強豪たちとの厳しい戦いが待っています。「冬のアオハル」という言葉通り、短い期間の中で全てを出し切る高校生たちの姿は、多くの観客の心を熱くさせるはずです。その中心に、伝統のディフェンスで勝負する京都成章がいることは、間違いありません。

沖縄・コザ高校――豊富な運動量で全国に挑む

一方で、全国高校ラグビーには、京都成章のような常連校だけでなく、各地域ならではの個性を持ったチームも多数出場します。その一つが、沖縄県代表として出場するコザ高校です。

大会特集の「出場校の横顔」では、コザ高校について、「豊富な運動量を誇る」チームであると紹介されています。南国・沖縄の暑さの中で日々鍛えられた体力は、80分間走り続けるラグビーにおいて大きな強みとなります。特に、試合終盤でも運動量が落ちにくいチームは、接戦になればなるほど相手にとって脅威となります。

コザ高校の選手たちは、華やかなスター選手というよりも、一人ひとりが泥臭く走り続けることでチームとしての力を発揮するタイプと言えるでしょう。攻守にわたってよく動き、サポートを切らさず、倒れてもすぐに立ち上がって次のプレーに参加する――そうしたプレーの積み重ねが、「豊富な運動量」という言葉に表れています。

また、沖縄勢が全国大会で存在感を示すことは、地域のラグビー普及にも大きな意味があります。自分たちと同じ土地で育った先輩たちが、花園という大舞台で躍動する姿は、次の世代の子どもたちにとって大きな憧れとなるからです。コザ高校のチャレンジは、単なる1校の挑戦ではなく、沖縄ラグビー全体のステップアップにもつながる大切な一歩と言えるでしょう。

大会トピックス「HANAZONO LIVE」が伝える花園の今

全国大会期間中は、「HANAZONO LIVE」といった大会トピックスを扱うサービスやメディアが、試合結果や注目選手の活躍、チームの裏側などをリアルタイムで伝えてくれます。会場に足を運べない人でも、ライブ配信やハイライト動画、テキスト速報を通じて、花園の熱気を感じることができます。

京都成章のような優勝候補から、コザのように運動量とひたむきさで挑戦するチームまで、それぞれの「ストーリー」を追うことで、高校ラグビーは一層おもしろくなります。試合結果だけでなく、どんなプレーで得点したのか、どの選手がチームを支えたのか、どんな表情でノーサイドを迎えたのか――そうした細かな情報は、HANAZONO LIVEなどのコンテンツを通じて広く共有されていきます。

高校ラグビーが私たちに教えてくれるもの

高校ラグビーの魅力は、「勝ち負け」だけではありません。ひとつのボールを追いかけながら、仲間と支え合い、ときに泣き、ときに笑い、大人への階段を上っていく3年間の物語が、そこにはあります。

  • 京都成章のように、敗北をきっかけに自分たちの原点であるディフェンスを見つめ直し、「ピラニアタックル」という伝統をもう一度磨き上げたチーム。
  • コザ高校のように、豊富な運動量を武器に、全国の強豪校に対しても臆することなく走り続けるチーム。
  • そして、全国のさまざまな地域から花園に集う、名前は知られていなくても、地元で懸命に汗を流してきた多くの高校生たち。

彼らの姿は、見る人に「努力することの大切さ」「仲間と支え合うことの尊さ」「最後まであきらめない心」を静かに語りかけてきます。

「冬のアオハル」という言葉の通り、冷たい空気のなかで吐く白い息、泥だらけになったジャージ、試合後に交わされる固い握手――それらはすべて、短い高校生活のなかでしか味わえない、かけがえのない瞬間です。

これから花園を観る人へのおすすめの楽しみ方

これから初めて高校ラグビーを観戦する方に向けて、少しだけ楽しみ方のポイントを紹介します。

  • ディフェンスに注目する
    京都成章の「ピラニアタックル」のように、相手にくらいつくディフェンスは、ラグビーの醍醐味のひとつです。タックルの低さや、二人目三人目の寄りの速さなど、「守りの連携」に目を向けてみると、試合がさらに面白くなります。
  • 運動量と走りに注目する
    コザ高校のように、80分間走り続けるチームの「スタミナ」も見どころです。試合の終盤でもよく走っている選手、最後までサポートに顔を出す選手を探してみると、そのチームの色が見えてきます。
  • 選手同士のリスペクトを見る
    ラグビーには、試合が終わると勝敗に関係なく互いをたたえ合う「ノーサイド」の精神があります。激しくぶつかり合った選手同士が、試合後に笑顔で握手や抱擁を交わす姿は、見ているこちらの心も温かくしてくれます。

ルールが難しそうだと感じる方もいるかもしれませんが、「ボールを前に運んで、相手のゴールラインを越えればトライ」「前に投げてはいけない」「タックルされたらボールを離す」――これくらいのイメージを持っているだけでも十分楽しめます。テレビ中継や配信では、解説者が分かりやすくルールやプレーの意図を説明してくれるので、気負わずに観てみるとよいでしょう。

「冬のアオハル」は続いていく

第105回全国高校ラグビー大会に向けて、京都成章は悲願の初優勝を目指し、コザ高校は豊富な運動量で全国の壁に挑みます。そのどちらの挑戦も、成功も、悔し涙も、すべてが尊い青春の一ページです。

これから始まる花園で、どんなドラマが待っているのか――それはまだ誰にも分かりません。ただひとつ確かなのは、そこに立つすべての高校生たちが、その一瞬一瞬に、自分たちの「冬のアオハル」を全力で刻んでいく、ということです。

守って、走って、仲間を信じて。京都成章の「ピラニアタックル」も、コザの豊富な運動量も、すべてがこの冬の花園を彩る大切な要素です。高校ラグビーの聖地・花園で繰り広げられる彼らの熱い戦いを、ぜひ見守ってみてください。

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