ピースナイター2025──平和への祈りと感動に包まれたマツダスタジアムの夜

2025年8月13日、広島東洋カープの本拠地・マツダスタジアムは、暑さを吹き飛ばすような熱気と、深い祈りの想いに包まれました。満員のスタンドが見守る中、阪神タイガースとの「ピースナイター2025」が開催され、今年で18年目を迎えたこの特別な一夜は、被爆80年という節目の年に、平和への新たな誓いと感動を刻みました。

被爆80年、特別な夜に込められた平和へのメッセージ

ピースナイターは、原爆投下の日・8月6日を胸に刻み、広島から平和の大切さを次世代へ伝え続けるイベントです。今年は、被爆80年の節目にあたり、さまざまな特別企画が用意され、会場はより一層の祈りと期待を集めました。多くのファンだけでなく、広島の歴史と平和を学ぶ地元の子どもたち、その想いを外国人観光客と分かち合う姿も目立ちました。

  • 全選手・監督・コーチが「86」番の特別ユニフォームを着用。
  • ユニフォームの胸には筆記体で「Peace」、背番号上部には「HIROSHIMA」の刺繍。
  • これは8月6日を表す背番号で、被爆70年の2015年以来10年ぶりに採用されました。
  • ピースナイターの趣旨は、「慰霊の意を表すとともに、8月6日に対する多くの人々の思いや歴史を継承し、次世代に引き継ぐこと」にあります。

吉川晃司さん、魂の始球式と「イマジン」歌唱

この夜最も注目を集めたのは、地元広島出身の歌手であり、近年は俳優としての活躍も目覚ましい吉川晃司さんの始球式と、平和を祈念して歌われた「イマジン」でした。還暦間近とは思えぬ見事な体躯、黒いタンクトップから覗く強靭な筋肉に、観客席から驚きと歓声が沸き起こりました。

  • 吉川さんは映画『すかんぴんウォーク』と主題歌「モニカ」でデビュー。
  • ユニット「COMPLEX」や新ユニット「Ooochie Koochie」など幅広い音楽活動でも知られます。
  • 今年は還暦を記念し地元広島でライブツアーを展開中、広島への深い愛着と復興への想いを体現しています。
  • 始球式では、スタジアムを震わせるような剛速球を披露。阪神ファン、カープファンを問わず誰もがその力強さに息を呑みました。
  • 続いて、セレモニーの中でジョン・レノンの「イマジン」をアカペラで熱唱。まっすぐな声で響く「平和」と「希望」のメッセージは、マツダスタジアムにいる全員の心を大きく揺さぶりました。
  • 「イマジン」は、原爆投下からの復興と、未来の平和への礎に立ち上がった広島の人々の歴史、野球を通じた希望の象徴として選ばれました。

ピースナイターの歩みと『カープ』という希望の物語

ピースナイターはただの野球イベントではなく、「命の尊さ」や「希望」を語り継ぐ場でもあります。戦後、焦土となった広島で誕生したカープは、当時の市民の希望そのものでした。被爆者やその家族だけでなく、長い歴史を一緒に歩んできた全ての人にとって、カープは誇りであり、人生の支えでもあります。

  • マツダスタジアムの外周には、カープ誕生の喜びや「はだしのゲン」作者・中沢啓治さんの像も建つなど、被爆と復興、そしてスポーツの力を今に伝えます。
  • 「ピースナイター」で生まれる一体感や、その夜交わされる言葉の一つ一つが、広島から世界へと届けたい平和へのメッセージです。
  • 過去には、被爆者や著名な広島出身者が始球式を担当。彼らの物語や祈りは、今も強い絆をもって平和の願いへとつながっています。

18年間続く「ピースナイター」──未来へ紡ぐ大切な一夜

今年で18回目を迎えたピースナイター。その主催にはカープはもちろん、生協ひろしま、中国新聞社、広島平和文化センター、広島電鉄、中国放送など、広島の未来とコミュニティを支える多くの団体が参加しました。ピースナイターの開催は、毎年8月6日をただ振り返るのではなく、新たな平和への決意と共に、世代を超えたバトンとして受け継がれています。

  • この日、「86」番の特別背番号を付けたカープ選手たちは、ユニフォームの一つ一つを通じて、平和の願いを観客へ、次世代へ託しました。
  • スタンドを埋めた観客たちの手には白いポスターが掲げられ、「ピースライン」を形成。これは原爆ドームの高さ(25m)にちなんでスタートした伝統であり、広島の空に強い平和の意思を描きました。
  • 式典前には、フィールドで黙とうが捧げられ、静寂とともに全員が「二度と戦争を起こしてはならない」「平和を守る責任を自分たちが担っている」という思いを新たにします。

スポーツと音楽でつなぐ、記憶と希望──伝え続ける広島の願い

スタジアムでのこの一夜は、単なる野球の試合という枠を超え、平和の尊さと生きる力の尊重を私たち皆に問いかけます。スポーツの持つ「一つになる力」、音楽が「心を繋ぐ力」。ピースナイターを通じて広島が発信し続けるこの願いが、来場した大人たち、子どもたち、スマートフォン越しに観る若者たちの日常にも静かに、しかし確実に根付き始めていることを証明しています。

  • 広島がこれからも「平和都市」として歩み続けていくために、ピースナイターのようなイベントの意義がますます高まっています。
  • そして、未来を変えていくのは「一人ひとりの心」。それを信じて今日も、スタジアムの空に平和への想いが高らかに広がっていきました。

観戦を超えて、心に残る特別な一日

ピースナイター2025は、広島東洋カープの一戦でありながら、平和記念日を体感し、未来の平和を考えるかけがえのない機会です。吉川晃司さんの堂々たる登板、鮮やかな歌声、選手たちの勇姿。誰もがスポーツと平和のつながりを体感し、日常へと持ち帰ることのできる思い出となります。

これからもマツダスタジアムでは、「ピースナイター」をはじめとした広島ならではのイベントが催されます。一人ひとりが、物語の証人になりながら、かけがえのない平和への誓いを、次の世代、世界へと語り継いでいける夜──それが「ピースナイター2025」の真の姿であり、広島ならではの希望の灯火なのです。

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