ケツメイシ大蔵の長男・吉田蔵之介、「初優勝のゴールテープを切る」 箱根駅伝10区アンカーへ高まる期待

人気ヒップホップグループ「ケツメイシ」のリーダー・大蔵さんの長男で、国学院大学3年の吉田蔵之介選手が、来年の第102回箱根駅伝に向けて力強い意気込みを語りました。東京・渋谷キャンパスで行われた壮行会で、吉田選手は「自分が10区を走って初優勝のゴールテープを切ります」と宣言し、大勢の大学関係者やファンの前で決意を新たにしました。

父はケツメイシ大蔵 音楽一家から生まれた「箱根のアンカー」

吉田蔵之介選手が注目を集める大きな理由のひとつは、父が「ケツメイシ」大蔵さんであるということです。音楽ファンにとってはおなじみの名前ですが、その息子が箱根駅伝の10区アンカーとしてチームの悲願である「初優勝」を背負う存在となりつつあります。

2025年1月の第101回箱根駅伝では、吉田選手は国学院大の10区アンカーとして出場し、見事な走りでチームを総合3位に導きました。当時から「父はケツメイシ」というバックグラウンドが話題となり、「え、あの大蔵の息子!?」とSNS上でも驚きと歓声が広がったと報じられています。

しかし本人は、「父の名前」以上に自分自身の走りで評価されることを目指しており、記録面でも着実に実力を示しています。10区という、チームの最終順位を左右する重責を担うポジションを任されていること自体が、その信頼の深さを物語っています。

「第101回は3位のゴールテープ。悔しさが残った」

12日に行われた壮行会で、吉田選手は昨季のレースを振り返りながら、胸の内を率直に語りました。

「第101回箱根駅伝では3位のゴールテープを切らせていただきましたが、とても悔しい思いでいっぱいでした。第102回箱根駅伝では自分が10区を走って初優勝のゴールテープを切ります

このコメントには、チームとしての結果に満足していない強い向上心と、「最後は自分が決める」という責任感が色濃くにじんでいます。前年に好走した選手が、さらに高い目標を掲げて同じ区間に挑むという構図は、駅伝ファンにとっても大きな楽しみとなるでしょう。

駅伝シーズンの起伏と自己ベスト更新

吉田選手は、今季の駅伝シーズンで必ずしも順風満帆だったわけではありません。10月の出雲駅伝(国学院大は2連覇)と、11月の全日本大学駅伝(4位)では出走メンバーに入っていませんでした。

一方で、個人としては11月の上尾シティハーフマラソン1時間2分1秒という自己ベストを更新し、調子の上昇ぶりを示しています。この記録は、前年度までに持っていたハーフマラソン自己ベスト1時間2分29秒からの更新であり、レースに出られなかった悔しさを、日々のトレーニングと記録更新で晴らしてきた様子がうかがえます。

駅伝はチーム競技であり、シーズンを通じてのコンディションやチーム方針により、出場機会が変わることも少なくありません。その中で、チャンスが巡ってくる箱根駅伝の10区で確実に結果を出すことこそ、吉田選手にとって最大の目標となっています。

勝負曲は父の歌「覚悟はいいか」

話題になっているのが、吉田選手がレース前に聴く「勝負曲」の存在です。第101回箱根駅伝のアンカーとして走る前、イヤホンから流していたのは、父・大蔵さんが歌うケツメイシの楽曲「覚悟はいいか」でした。

この曲はタイトルからも分かるように、「前に進む決意」や「覚悟」をテーマにした歌詞が印象的なナンバーです。吉田選手は、歌詞に込められたメッセージに背中を押されるようにスタートラインに立ち、最後まで粘りの走りを見せました。

父の歌を胸に抱きながら、別のフィールドで勝負する——。その姿は、多くのファンにとっても感動的な「音楽とスポーツのクロスオーバー」として語られています。

「父はケツメイシ」 親子で重ねてきたランニングの時間

吉田選手の背景には、「父はケツメイシ」という話題性だけでなく、親子で積み重ねてきたランニングの時間があります。これまでの取材では、小さい頃から父と一緒に近所をジョギングし、そこで「走ることの楽しさ」を知ったと語っています。

大蔵さん自身も学生時代に陸上部に所属していた経験があり、音楽活動で多忙な中でも体を動かすことを大切にしてきました。親子ランニングは、単なる運動習慣というだけでなく、互いの近況や思いを確かめ合うコミュニケーションの場でもあったそうです。

また、以前の東京マラソンでは、大蔵さんが仕事の合間を縫って練習を重ね、見事完走を果たしています。その姿に刺激を受け、「走ることへの向き合い方」を学んだと吉田選手は振り返っています。

支えてくれる人たちへの感謝と「顔を上げる」決意

これまでの競技生活の中で、吉田選手は順調な時期ばかりではなく、悩みやスランプに直面した時期も経験してきました。その際にかけられた父の言葉が、「顔を上げて走れ」というシンプルなメッセージだったといいます。

「父が言うとおり、顔を上げてみたら、支えてくれる仲間や応援してくれる人が見えるようになった」と語る吉田選手。この経験をきっかけに、彼は再び前を向き、練習やレースに前向きに取り組めるようになりました。

箱根駅伝は、選手一人ひとりの努力や物語が重なり合う大会です。吉田選手の場合は、家族の支え音楽の力、そして大学の仲間たちの存在が、走り続ける原動力となっています。

国学院大・悲願の「初優勝」へ 10区アンカーにかかる期待

国学院大学はここ数年、箱根駅伝で着実に実力をつけてきた有力校です。第101回大会では総合3位に入り、「初優勝」が現実的な目標として語られるようになりました。第102回大会での目標は、選手・スタッフ・大学関係者が口をそろえて掲げる「悲願の初優勝」です。

その中で吉田選手が目指すのは、再び任される可能性が高い10区アンカーとして、最後の最後にチームをトップでゴールへ導くことです。渋谷キャンパスでの壮行会では、大勢の前で「自分が10区を走って初優勝のゴールテープを切る」と公言したことで、その覚悟が周囲にもはっきりと伝わりました。

アンカー区間は、これまで積み重ねてきた9区間の結果を受け止め、最終順位を確定させる非常に重要な区間です。前回大会の3位という結果を勝ち取った実績と、自己ベストを更新し続ける走力を武器に、吉田選手は再び「箱根のラストランナー」として注目されることになりそうです。

「ケツメイシの息子」から「国学院のエース」へ

第101回箱根駅伝の時点では、「ケツメイシ大蔵の息子が箱根を走る」というニュース性が先行し、多くの人がその意外性に驚きました。しかし、実際のレースで見せた力走と結果、そしてその後の記録更新を通じて、今では一人の長距離ランナーとしての評価が着実に高まっています。

もちろん、父が人気グループのメンバーという事実は、これからも話題として語られ続けるでしょう。それでも、吉田選手本人は「父の名前」を背負うのではなく、自らの走りで「国学院のエース」「日本長距離界のホープ」と呼ばれる存在になろうと努力を続けています。

音楽とスポーツという異なるフィールドで活躍する父と息子。その絆や物語は、多くの人の心を惹きつけるだけでなく、同世代の若者たちにとっても大きな刺激となるはずです。

箱根路で描かれる、新たな一歩

吉田蔵之介選手は、父・大蔵さんの背中を追いながらも、自分自身の道を走ろうとしています。親子で重ねてきたランニングの時間、音楽から受けるエネルギー、大学での仲間や指導者からの支え——そのすべてが、箱根路での一歩一歩につながっています。

第102回箱根駅伝で、吉田選手がどのような走りを見せてくれるのか。そして、宣言どおり「初優勝のゴールテープ」を切る姿を見ることができるのか。多くの駅伝ファンにとって、その瞬間を楽しみに待つ時間が始まっています。

「覚悟はいいか」という歌詞を胸に刻みながら、再びスタートラインに立つ吉田蔵之介選手。ケツメイシ大蔵の長男としてだけでなく、一人のランナーとしてどこまで羽ばたいていくのか、今後もその走りから目が離せません。

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