MLB移籍市場の主役に浮上する岡本和真 村上宗隆争奪戦の行方と“バックアッププラン”の現実味
今オフのメジャーリーグ移籍市場で、日本人スラッガーが大きな注目を集めています。その中心にいるのが、ポスティングシステムを利用してMLB移籍を目指す村上宗隆(ヤクルト)と岡本和真(巨人)の二人です。特に岡本は、「村上を逃した球団が一気にシフトする“バックアッププラン”」として名前が挙がっており、日米のメディアでもその動向が大きく取り上げられています。
ここでは、村上宗隆をめぐるMLB各球団の動き、予想される契約内容、そしてその裏側で評価を高めつつある岡本和真の位置づけ、さらにウインターミーティング(WM)現地でしか感じ取れなかった空気感などを、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。
村上宗隆の交渉期限は残り10日 FA大物停滞で「バックアップ」が現実味
まず移籍市場全体の流れから整理してみましょう。
- 村上宗隆のMLB球団との交渉期限は、米東部時間12月22日午後5時(日本時間23日午前7時)まで。
- 一方、岡本和真の交渉期限は、来年1月4日(日本時間5日)までとされています。
- FA市場ではすでに、メッツからFAとなっていたピート・アロンソがオリオールズと5年1億5500万ドル、カイル・シュワーバーがフィリーズと5年1億5000万ドルで合意するなど、大砲タイプの主力が相次いで決着しました。
この結果、「残る超一級の長距離砲」は、ポスティングでMLB移籍を目指す村上宗隆と岡本和真の二人になったと伝えられています。
さらに、今オフの目玉内野手FAとされてきたボー・ビシェット、アレックス・ブレグマンらとの交渉が進まず、市場全体がやや停滞しているとの見方もあります。MLB公式サイトなどでは、これらFA大物に対して少なくとも7球団が関心を示しているとされながらも、決定打に欠けている状況です。そのため、
- 「ビシェットやブレグマンといったFA内野手が決まらない」
- 「村上宗隆の交渉期限が迫っている」
- 「そこで村上獲得に失敗した球団が、三塁を守れる右の大砲である岡本に方向転換する」
という構図が、日米の報道でたびたび指摘されています。
実際、J SPORTSのコラムは「村上の交渉期限までに各球団は最終判断を迫られる。ここで村上を逃した球団は、年明けまで交渉が続く岡本に一気にシフトする流れが想定される」とし、岡本を「バックアッププラン」と位置づけています。
米サイトが村上宗隆の行き先を予想 「メッツと5年148億円契約」の衝撃
村上の去就については、アメリカのメディアでも様々な予想記事が出ています。その中には、
- ニューヨーク・メッツと5年総額約148億円(約1億ドル)規模の契約を結ぶ
といった具体的な金額・球団名を挙げた予測も報じられています。この数字は、今オフの大砲クラスの契約規模と比較しても遜色のないレベルであり、村上がMLB市場で「超一流スラッガー候補」と見なされていることを示すものと言えるでしょう。
J SPORTSなどの分析では、村上を獲得するには総額1億ドル(約150億円)以上の高給が必要とされており、「どのチームも、手に入れられるものなら手に入れたいレベルの選手」と評価されています。 つまり、メッツと5年148億円という予想は、こうした市場評価と整合的なラインだと考えられます。
ただし、この契約内容や移籍先は、あくまで米メディアの予想として出ている段階であり、現時点で正式な合意が発表されたわけではありません。とはいえ、
- ピート・アロンソがオリオールズ行きでメッツを離れたこと
- メッツは中軸の長打力を補う必要があること
といった事情から、「メッツ+長期大型契約」というシナリオは、米国側から見ても現実味のあるプランとして語られている状況です。
ウインターミーティング閉幕 現地で感じた“村上・岡本”の存在感と後悔
今オフの移籍市場で一つの山場となったのが、フロリダ州オーランドで行われたウインターミーティング(WM)でした。
- 開催地:フロリダ州オーランドのホテル
- 参加者:各球団のGM、編成本部長、代理人などが集結
- 目的:ミーティングルームなどで直接交渉を行い、FA契約やトレードを一気に進める場
会期中には、
- カイル・シュワーバーのフィリーズ残留決定
- ドジャースによるエドウィン・ディアス獲得
- ブルージェイズによるディラン・シーズ獲得
といった大型の動きが続き、市場全体が一気に動き出した印象がありました。
一方で、日本人選手に目を向けると、
- 村上宗隆:12月22日(日本時間23日)が交渉期限
- 今井達也:1月2日(日本時間3日)が交渉期限
- 岡本和真:1月4日(日本時間5日)が交渉期限
という日程が、現地関係者の間で繰り返し確認されていました。メディアの取材に応じたスカウトや編成責任者からは、
- 村上宗隆については「長打力が高く評価されている」
- ただし三塁守備への不安があり、「一塁か指名打者として起用する見方が強い」
- 岡本和真については「三塁守備も一定の評価を受けており、三塁手補強を望む球団が注目している」
といった具体的な声が伝えられています。ここからは、
- 「打撃のインパクトなら村上」
- 「三塁を守らせる安心感なら岡本」
という、二人の評価軸の違いが浮かび上がります。
また、WMの期間中には、エンゼルスのGMや編成担当者と日本人選手側の代理人・関係者との会合もあったとされ、「あのとき、あの一言をもっと強く言っておけば…」というような“後悔”を残したやり取りもあったことが、現地ルポで紹介されています。具体的な発言内容までは明かされていませんが、
- 二刀流・大谷翔平を失ったエンゼルスが、どのポジションにどれだけ資金を割くか
- その中で、日本人野手をどこまで優先するのか
といった駆け引きの中で、代理人サイドが「もっと攻められたのではないか」と感じた場面があったようです。会場の空気が一瞬ざわつくような電撃報道の陰で、こうした水面下の微妙な綱引きも行われていた点は、現地にいたからこそ分かる“温度差”だったと言えるでしょう。
村上宗隆と岡本和真 MLB各球団の評価の違い
では、具体的に村上と岡本は、MLBのスカウトや幹部からどのように見られているのでしょうか。現時点で報じられている評価を整理してみます。
村上宗隆の評価
- 最大の武器は長打力であり、ホームラン能力はMLBでもトップクラス潜在と評価される。
- 一方で、三振の多さや、高速球へのコンタクト率の低さがリスク要因として指摘されている。
- 2022年以降、93マイル(約149.6キロ)以上の速球に対するコンタクト率は約63%と低く、2025年の数字では打率.095(21球中2安打)と伝えられている。
- 守備面では「三塁は不安」と見るスカウトが多く、一塁か指名打者起用の見方が強い。
- 年齢は25歳と若く、成長余地を含めたポテンシャルの高さが評価されている。
こうした要素を総合すると、「リスクもあるが、当たればフランチャイズ級の大砲になり得る選手」という見方が主流になっています。メジャーの一部スカウトは、MLBのハイレベルな速球への対応力を特に注視しており、その評価次第で提示する契約額が変わってくる可能性があります。
岡本和真の評価
- 日本では巨人の4番として安定した長打力を発揮しており、30本塁打級のパワーを複数年にわたり証明してきた。
- 村上ほどの「突出した長打力」とまでは評されない一方で、打撃の安定感や対応力で評価する声もある。
- 最大の強みは三塁守備への評価で、「三塁を任せられる守備力を持つ」とするスカウトが多い。
- そのため、三塁手を補強したい球団の注目を集めているとされる。
- ポスティングの交渉期限が村上より遅く、村上獲得に失敗した球団が次のターゲットにしやすい日程になっている。
日本のメディアは、「打撃の天井値は村上が上」「総合的なバランスや守備での安心感は岡本」といった図式で語ることが多く、MLB側の評価もおおむねこれに近い傾向が見られます。
メジャー球団の“優先順位” 村上が本命、岡本が「プランB」なのか
J SPORTSやFull-Countなどの報道を総合すると、今オフのMLB内野手市場での日本人スラッガーの位置づけは、概ね次のように整理できます。
- 第一ターゲット:FAのビシェット、ブレグマンなど既存MLB実績豊富なスター遊撃手・三塁手
- 同格・別枠のターゲット:25歳という若さと本塁打王クラスの長打力を持つ村上宗隆
- バックアップ&オプション:三塁守備が計算でき、長打力も十分期待できる岡本和真
もちろん、すべての球団が同じ優先順位で動いているわけではありませんが、「村上を本線、岡本をバックアップ」と認識している球団が複数あることは、J SPORTSの記事でも明確に示されています。
ただし、この「バックアップ」という表現は、あくまで契約のタイミングや交渉順序に関するものであり、選手としての価値が劣るという意味ではありません。むしろ、
- 村上:一塁・三塁・DHの併用を前提に、打撃特化の起用を考える球団向け
- 岡本:三塁レギュラーを任せたい球団にとって、即戦力の三塁手兼中軸候補
といったように、“求めるものが違う2人”をどう使い分けるかが、MLB各球団の戦略になっていると言えます。
メッツの本気度は? 番記者は「優先事項ではない」としつつも…
村上宗隆、岡本和真の行き先候補として、たびたび名前が挙がっているのがニューヨーク・メッツです。メッツは昨季ナ・リーグ優勝決定シリーズまで進出しながら、今季はプレーオフ進出を逃したことで批判を受け、巻き返しを図るオフを迎えています。
『The Athletic』のメッツ番記者ウィル・サモン氏は、Sportivaの取材に対し、
- 村上・岡本の獲得は、現時点では必ずしもチームの「最優先事項」ではない
- ただし、マーケットの動き次第では、状況が大きく変わる可能性がある
といった趣旨の見方を示しています。
これは、
- FA市場全体の動き
- アロンソ流出後の一塁・DHの補強状況
- 他ポジション(先発投手や外野手)の補強優先度
などを総合的に見極めながら、「最後にどこに資金を投じるか」を決めるという意味合いが強いと言えます。その意味で、「メッツと5年148億円契約」という村上の去就予想は、
- アロンソ流出というチーム事情
- 市場全体の相場感
- 日本人スラッガーの話題性
といった要素を踏まえた、現時点での“もっともらしいシナリオ”として語られていると理解すると分かりやすいかもしれません。
岡本和真にとっての「追い風」 村上交渉の行方とFA市場停滞
ここまで見てきたように、今オフのMLB移籍市場において、岡本和真は「村上のバックアップ」という位置づけで語られることが多くなっています。ただ、それは決してマイナスではなく、むしろ大きな追い風になり得る側面があります。
- 大砲アロンソ、シュワーバーが相次いで契約を決め、市場から消えたこと
- FAのビシェット、ブレグマンの交渉が停滞し、内野の大物補強が難航していること
- 村上の交渉期限(12月22日)が先に来る一方で、岡本の期限(1月4日)はその後に設定されていること
これらを踏まえると、
- 村上を本命として交渉する球団
- 村上を逃した際に、すぐに切り替えられる三塁手候補として岡本をリストアップしている球団
という二重構造が、今の市場には生まれています。
さらに、アロンソやシュワーバーの大型契約が、「大砲クラスの平均年俸の新たな物差し」になったことで、日本人スラッガー2人の条件交渉にも好影響(追い風)があると分析されています。
J SPORTSは、「2人の和製スラッガーが今後契約交渉を加速させる過程で、アロンソ、シュワーバーの大型契約は好条件の契約に追い風になる」と指摘しており、これは村上だけでなく、岡本にとっても同様です。
今後の焦点 「村上の決断」と「岡本シフト」のタイミング
最後に、今後のポイントを整理しておきます。
- 12月22日(日本時間23日)までに村上宗隆の移籍先が決まるか
- 村上がメッツなど有力視される球団と大型契約を結ぶのか、それとも条件面で折り合わず日本に残留するのか
- 村上を逃した球団が、どのタイミングで岡本和真に「一気にシフト」するのか
- FAのビシェット、ブレグマンらの交渉が本格化するのが先か、それとも日本人スラッガーへの動きが先に加速するのか
こうした複数の要素が絡み合う中で、岡本和真は、
- 三塁手補強を急ぎたい球団にとっては「第一候補」
- 村上を本命とする球団にとっては「極めて魅力的な次善の策」
という二つの顔を持つ存在になっています。
いずれにしても、ウインターミーティング閉幕後の今は、各球団が一度足を止めて戦力構成と予算を練り直すタイミングです。その静かな“間”の中で、代理人や球団幹部たちは、あのオーランドのホテルで交わされた会話や、「もう一歩踏み込めなかった後悔」を思い返しながら、年末から年始にかけての決断に備えているはずです。
日本のファンにとっても、
- 村上宗隆がどの球団でどのような条件を勝ち取るのか
- 岡本和真が「バックアッププラン」を超えて、どこまで評価を高められるのか
という点は、今後数週間の最大の関心事と言っていいでしょう。双方の交渉期限がすべて終わる頃には、日米の移籍市場の構図が大きく変わっている可能性があります。その中心には、間違いなく岡本和真と村上宗隆、二人の日本人スラッガーの名前が刻まれているはずです。



