アンデルレヒト対STVV前日譚――ベルギーで輝く日本人、後藤啓介と伊藤涼太郎に注がれる熱視線
ベルギー1部リーグで、アンデルレヒト対シント=トロイデンVV(STVV)という注目カードが再び行われようとしています。この試合が特別な意味を持つのは、強豪アンデルレヒトと日本人選手が多数所属するSTVVの対戦という構図だけではありません。そこには、日本代表にも名を連ね始めた若き大型FW後藤啓介、そして「ベルギーリーグで最も賢い選手のひとり」と称賛される伊藤涼太郎という、2人の日本人タレントの存在があります。
この記事では、アンデルレヒト対STVVという一戦をめぐる背景や、両クラブと日本人選手の関係、そしてワールドカップを見据える後藤の思いまでを、分かりやすく丁寧な言葉でひも解いていきます。
アンデルレヒト対STVVというカードが持つ特別な意味
ベルギーリーグの中でも、アンデルレヒトは長年タイトル争いを続けてきた名門クラブです。一方のSTVVは、日本企業が関わり、日本人選手が数多く在籍していることで日本でも馴染みのあるクラブです。
2025-26シーズンの対戦カードでも、STVVはアンデルレヒトとホーム&アウェーで2度対戦する予定であり、その一つが第18節「アンデルレヒト vs STVV」として組まれています。このカードは、単なるリーグ戦の一試合ではなく、「ベルギーの名門 vs 日本人集団」という構図で、多くの日本のサッカーファンにとっても注目のカードとなっています。
さらに今季は、STVVが日本人7選手を擁し、アンデルレヒト相手に2-2の引き分けに持ち込んだホームゲーム(第11節)も話題となりました。そこには、後藤啓介や山本理仁、松澤海斗ら日本人選手が躍動する姿があり、ベルギーでの日本人勢の存在感を国内外に示した一戦でもありました。
後藤啓介――アンデルレヒトも驚く「予想を超える活躍」
そんなSTVVの前線で輝いているのが、元ジュビロ磐田の後藤啓介です。191cmの長身を誇るストライカーは、ベルギー移籍後、想像以上のペースで成長と結果を残し、所属元であるアンデルレヒトも驚くほどの活躍を見せています。
アンデルレヒトからSTVVに渡った後藤は、攻撃の起点になりつつもゴール前での迫力あるプレーで評価を高め、すでにリーグ戦で複数ゴールを記録。数字だけでなく、守備の献身性や味方を生かすポストプレーなど、総合的なセンターフォワードとして評価されています。
中でも象徴的だったのが、第11節のSTVV対アンデルレヒト戦の2-2ドロー。試合後、アンデルレヒトの選手たちが後藤のもとに歩み寄り、かつての仲間として彼の戦いぶりを称え合うシーンが見られました。かつて一緒にプレーした若きMFネイサン・デ・キャット(アンデルレヒトのビッグタレント)に対し、後藤がピッチ上で激しくプレッシングをかけ、「おい、立てよ!」と声をかける場面は、ただの“レンタル選手”ではなく、一人のライバル・プロフェッショナルとして認め合う関係性を象徴するエピソードとして伝えられています。
こうした躍動ぶりに、アンデルレヒトの首脳陣も無関心ではいられません。報道によれば、アンデルレヒトの監督は「戻ってきたら、去った時とは彼の立場は違ったものになる」と語ったとされ、後藤の成長に対する高い評価と期待がにじんでいます。かつては出場機会を求めてクラブを離れた若者が、今や「戻ってくれば重要な戦力になり得る」と見られているのです。
アンデルレヒト対STVVというカードは、単に“古巣対決”というレベルを超え、「アンデルレヒトが育て、STVVで開花した大型FWが、名門にどこまで牙をむけるか」というドラマを含んだ対戦になっています。
伊藤涼太郎――「ベルギーで最も賢い選手のひとり」と警戒される司令塔
STVVの日本人選手の中で、もう一人特別な評価を受けているのが伊藤涼太郎です。かつてJリーグでも高い技術とアイデアで注目されたアタッカーは、ベルギーでもその「ひらめき」と「判断力」で相手指揮官を唸らせています。
ある対戦相手の監督は、「伊藤涼太郎はベルギーリーグで最も賢い選手のひとりだ」とコメントし、そのプレーインテリジェンスを高く評価しました。ボールを受ける位置、パスの出しどころ、試合のテンポを読む能力など、数字に表れにくい部分でゲームを支配するタイプの選手であり、対戦チームからすると非常に厄介な存在です。
STVVがアンデルレヒトのような強豪と対等に渡り合う上で、後藤が前線で“的”となり、伊藤がその周囲で創造性を発揮する構図は、大きな武器となります。実際、STVVの試合では、伊藤が巧みにサイドと中央を使い分けながらチャンスを作り、そこに後藤や他のアタッカーが飛び込んでいく形が多く見られます。
STVV対アンデルレヒト第11節の2-2――日本人選手が躍動した“名刺代わり”の一戦
10月19日に行われたベルギーリーグ第11節 STVV対アンデルレヒトは、2-2の引き分けという結果以上に、日本人選手たちの活躍と存在感で記憶に残る試合となりました。
- STVVは日本人選手を複数人先発起用し、主力として起用
- 序盤に先制を許しながらも、日本人MF山本理仁の鮮やかなゴールなどで追いつく
- 途中出場の松澤海斗が、移籍後初ゴールとなる圧巻のターンからのシュートで同点弾をマーク
この試合のハイライトは、まさに「日本人トリデンテ」とも言うべき、後藤・山本・松澤らの連動した動きでした。後藤は前線でボールを収め、相手DFを背負いながら味方を生かすプレーで貢献。山本が中盤から前線へ飛び出し、松澤が途中出場から試合の流れを変える一撃を叩き込む――こうした流れが、現地メディアやファンの間でも高く評価されています。
2-2という結果は、紙の上だけで見れば勝ち点1にすぎません。しかし、強豪アンデルレヒトを相手に、日本人中心のSTVVが堂々と渡り合ったというインパクトは大きく、続くアンデルレヒトホームでの再戦に向けて「次はどんな戦いになるのか」と期待を高める材料となりました。
アンデルレヒトホームでの再戦――後藤が狙う「古巣撃ち」とSTVVの勝利
ベルギー国内ではすでに、12月13日にアンデルレヒトのホームスタジアム「ロット・パルク(ヘット・アストリット・パルク)」で行われる再戦に注目が集まっています。この一戦は、
- アンデルレヒトがホームの意地をかけて臨む試合
- STVVが上位争いに食らいつくために落とせないゲーム
- 後藤啓介にとって古巣の本拠地でのリベンジマッチ
という様々な意味合いを持っています。
報道によれば、後藤自身もこの一戦について「STVVの勝利と自分のゴールを狙う」と語っており、ピッチに立てば、ひとつひとつのプレーに特別な感情が乗ることは間違いありません。かつて所属していたクラブのサポーター、スタッフ、若き仲間たちが見守る前で、どんなパフォーマンスを見せるのか――。その意味で、アンデルレヒト対STVVは、チーム同士の戦いであると同時に、「後藤啓介というストライカーの成長物語の一章」でもあります。
ワールドカップへの思い――熾烈な日本代表争いの中で
後藤啓介にとって、ベルギーでの日々は単なる「海外挑戦」ではありません。その先に見据えているのは、もちろんFIFAワールドカップの舞台です。
2024年11月、後藤はついに念願だった日本A代表デビューを果たしました。若きストライカーとして、代表の激しいポジション争いに身を投じることになった後藤は、「簡単に呼ばれ続けるような世界ではない」と理解しながらも、「だからこそ海外で結果を出し続けるしかない」という覚悟で日々トレーニングと試合に臨んでいます。
日本代表の前線には、既にヨーロッパで実績を残している選手たちがひしめき合っています。その中で、後藤が強みとして押し出せるのは、やはり191cmというサイズと、欧州基準でも通用するフィジカル、そしてチームのために走り続ける献身性です。
ベルギーリーグという欧州の舞台で、アンデルレヒトやクラブ・ブルージュといった強豪を相手にゴールを重ねることができれば、代表監督の目に止まり続ける可能性は高まります。特に、日本代表が世界の強豪国に対抗する上で、「高さ」と「空中戦の強さ」、「前線からの守備」は非常に重要な要素であり、後藤はそれを体現し得るタイプのストライカーだからです。
後藤自身も、ワールドカップ出場については「決して簡単ではない」としながらも、「競争を勝ち抜き、逆転で夢舞台にたどり着きたい」という強い思いを口にしています。ベルギーでの一試合一試合、特にアンデルレヒトのような“格上”と見られる相手との対戦は、その夢に一歩近づくための大きなアピールの場でもあります。
アンデルレヒト側から見たSTVVと日本人選手の存在感
もちろん、このカードを語る上で忘れてはならないのが、アンデルレヒトから見たSTVVと日本人選手の存在です。
アンデルレヒトにとって、STVVは「勝ち点3を取りたい相手」であると同時に、「油断できないトリッキーなチーム」でもあります。その理由のひとつが、日本人選手たちの技術力と連携力です。
- 技術に優れた中盤(伊藤、山本ら)が、狭いスペースでもボールを失わない
- 複数の日本人選手が同時起用されることで、細かい連係やポジションチェンジがスムーズに行われる
- 守備では整った組織と規律で、相手の“隙”を与えない
アンデルレヒトの側からすると、「日本人選手を自由にさせないこと」がSTVV攻略の重要なポイントになっているとも言えます。その象徴として、対戦相手の監督が伊藤涼太郎の“賢さ”を強く意識して警戒するコメントを残しているわけです。
そしてもう一つ、アンデルレヒトのサポーターにとっても、後藤の存在は特別です。かつて自分たちのクラブに所属し、今はSTVVでブレイクしつつあるストライカーが、ホームスタジアムに「敵」として戻ってくる――。彼がどんなパフォーマンスを見せても、大きな拍手と感情がスタンドから送られることは想像に難くありません。
日本サッカーにとっての「アンデルレヒト対STVV」
最後に、このアンデルレヒト対STVVというカードが、日本サッカー全体にとってどんな意味を持つのかについても触れておきます。
- 複数の日本人選手が欧州1部リーグの主力としてプレーしている姿を、現地メディアが日常的に報じるようになった
- ベルギーを経由して、さらに5大リーグへステップアップする日本人選手が増えつつある
- 日本人同士が欧州の舞台で対戦し、ときに古巣や元チームメイトと真剣勝負をする構図が「当たり前」になってきた
かつては「海外組」といえば限られたスター選手の話でしたが、今やSTVVのように“日本人のいるクラブ”が複数存在し、そこから新たな日本代表候補が次々と生まれている状況になっています。その中で、アンデルレヒトのような名門との試合は、選手個人のキャリアだけでなく、日本サッカーの評価そのものを押し上げる機会にもなっています。
アンデルレヒト対STVV――。このカードは、単なるベルギーリーグの一試合ではなく、
- 後藤啓介という大型FWの成長と、古巣への挑戦
- 伊藤涼太郎をはじめとする日本人選手たちの「知性と技術」の証明
- そして、日本代表とワールドカップへとつながる、長い物語の一ページ
として、これからも多くのファンに見届けられていくはずです。


