【IND vs SA 第3 ODIプレビュー】南アフリカが“貴重なダブル”狙う決戦 インドは“コイントスの呪縛”をついに突破
南アフリカ代表がインド遠征で、ODIシリーズの第3戦(デシダー)に臨みます。
舞台はアーンドラ・クリケット協会–VDCAクリケットスタジアム(ビシャーカパトナム/通称ヴィザグ)。
ここは「インドの要塞」とも呼ばれる難所ですが、南アフリカは歴史的なテストシリーズ&ODIシリーズのダブル制覇を視界に捉えています。
一方のインドは、シリーズを通じて苦しめられてきた“コイントスのジンクス”をついに打破し、主将K.L.ラフルがようやく重要な試合でトスに勝利。
夜に向けてピッチに出てくる“デュー(露・結露)”の影響をどう生かすかが、シリーズの行方を左右する大きなポイントになりそうです。
シリーズのここまで:テストから続く“接戦と番狂わせ”の連続
今回の南アフリカのインドツアーは、テストシリーズからODIまで、内容の濃い戦いが続いてきました。
- テストシリーズ:南アフリカが接戦を制する試合が多く、インドにとっては悔しい黒星も目立つ展開。
- ODIシリーズ第1戦:インド 349/8(50オーバー)に対し、南アフリカは332/10(49.2オーバー)。インドが僅差で先勝。
- ODIシリーズ第2戦:インド 358/5(50オーバー)を、南アフリカが362/6(49.2オーバー)で逆転勝ち。シリーズを1勝1敗のタイに戻しました。
第2戦で南アフリカが大きなターゲットを追いかけて勝ち切ったことで、心理的な流れはやや南アフリカ寄り。
しかし、この決戦はインドのホーム“ヴィザグ”での最終戦。観客の後押しも含め、どちらに転んでもおかしくない状況です。
会場情報:インドの“ヴィザグ要塞”とデューの影響
第3 ODIの会場となるACA–VDCAクリケットスタジアム(ヴィザグ)は、インドがこれまで数多くの名勝負を演じてきた場所として知られています。
ナイトゲームでは後半のデューが試合展開に大きく関わることで有名で、スピンボウラーにとってはグリップが効きにくくなる難しいコンディションになります。
このため、近年のODIでは
- トスに勝ったチームが追いかけ(チェイス)を選ぶ展開が多い
- 後攻チームのバッティングが有利になる試合も目立つ
といった傾向が見られます。
今回のプレビューでも、「トス」と「デュー」は繰り返しキーワードとして語られており、両監督とも試合前から対策を練っていると報じられています。
ポイント①:インド、ついに「トスのジンクス」から解放
このシリーズを通じて、インドはここまでトス運に恵まれず、試合開始前から不利な条件を強いられる場面が続いていました。
ところが第3 ODI直前、「ついにインドがトスのジンクスを破った」と報じられ、主将K.L.ラフルがようやくトスで勝利。
トスに勝ったインドが重視すると見られているのは、やはりデューをどう利用するかです。
- 夜に向けてのボールの滑り
- スピンボウラーの影響力が落ちる時間帯
- ビッグターゲットを追いかける際のバッター有利のコンディション
こうした要素を踏まえ、インドがバッティング先行か、追いかけを選ぶかは、大きな戦略テーマです。
ラフルにとっても、ようやく手にした「選択権」をどう生かすかが指揮官としての腕の見せ所になります。
ポイント②:南アフリカが狙う“テスト+ODIのレアなダブル”
南アフリカにとって、このインド遠征はすでに大きな意味を持つツアーになっています。
テストシリーズでインドのホームに挑み、さらにODIシリーズでもここまで1勝1敗の互角に持ち込んでいるからです。
今シリーズの文脈で語られているのが、「珍しいダブル(rare double)」という表現です。
これはおおむね、
- インド本土でテストシリーズに勝利
- 同じツアーでODIシリーズも制する
という、アウェーチームにとっては極めて難しい“二冠”を指す文脈で使われています。
インドはホームでの強さが世界的にも知られており、特にテスト・ODIともにスピンやコンディションを最大限に生かした戦い方で勝ち星を積み上げてきました。
そのインドを相手に、「テスト+ODI」をどちらも制するチャンスがあるという点で、南アフリカ側のモチベーションは非常に高いとみられています。
ポイント③:ブリーツケ、「インドのヴィザグ要塞」にも動じず
南アフリカの注目選手のひとりが、トップオーダーのマシュー・ブリーツケ(Matthew Breetzke)です。
シリーズを通じて積極的なバッティングを見せており、第3 ODIを前に行われたインタビューでは、インドの「ヴィザグ要塞」という評判に対しても冷静な姿勢を崩していません。
報道によると、ブリーツケは
- 「環境や観客の声援よりも、自分たちのプロセスとゲームプランに集中している」
- 「インドが強いことは分かっているが、条件を言い訳にはしない」
といった趣旨のコメントをしており、アウェーのプレッシャーを受け止めつつも、動じないメンタルが印象的です。
特に、第2 ODIで南アフリカが高いターゲットを追いかけて勝利したことは、バッティングユニットに大きな自信をもたらしました。
ブリーツケを含むトップオーダーが再び序盤から主導権を握れるかどうかは、この決戦の大きな鍵となります。
両チームの最近の流れ:数字が示す“拮抗”
直近の対戦成績を見ると、インドと南アフリカはごく僅差の戦いを続けています。
- 直近のODIシリーズでは、インドが1勝1敗、南アフリカも1勝1敗。
- 第1戦はインドが接戦を制し、第2戦は南アフリカがより大きなターゲットを追って勝利。
- テストシリーズでも、南アフリカが重要な試合をものにしつつも、内容としては一方的ではなく、互いに勝機があったとされています。
また、対戦全体の傾向としては、インドがやや勝ち越しているものの、ここ最近のシリーズに限ればほぼ五分と言ってよい状況です。
このため、第3 ODIの結果次第で、今後数年の「IND vs SA」というカードのイメージも大きく変わってくる可能性があります。
戦術面の焦点:トス・デュー・ボウリングプラン
今回のプレビューで繰り返し語られているのが、次の3点です。
- トスの重要性:どちらが条件を選べるか
- デュー(露)の出方:第2イニングでのボールコントロール
- パワープレイとデスオーバーのマネジメント
特にヴィザグでは、夜に入るとボールが濡れやすく、スピナーの指へのフィット感が大きく損なわれることで知られています。
そのため、両チームとも
- スピナーを前半に多く投げさせるプラン
- 後半はシームボウラーを中心に、ヨーカーやスローワンを織り交ぜるボウリング
などを組み合わせながら、デューに対応する必要があります。
一方、バッターにとっては、ボールがやや滑るコンディションはショットを打ちやすくなる側面もあります。
第2戦で南アフリカが大きなターゲットを追いかけて勝ち切ったことを考えると、今回も「追いかけが有利」という見方が強いのは自然な流れと言えるでしょう。
インド側の視点:ホームの威信とシリーズ制覇へのプレッシャー
インドにとって、ホームシリーズでの最終戦=デシダーを迎えるという状況は、単なる1試合以上の意味を持ちます。
- ホームの観客の期待
- 世界ランキングや今後のICCイベントへの影響
- テストシリーズから続く南アフリカの挑戦を退けられるかどうか
こうした要素が重なり、インド側には少なからずプレッシャーがあると見られています。
一方で、主将ラフルがトスに勝ったことで、ようやく試合前の条件面で“追う側”から“選ぶ側”に回れたことは、大きな心理的プラスです。
打線としては、これまでの2試合で合計700点を超えるランを積み上げていることから、決して調子は悪くないと言えます。
問題は、南アフリカの中盤以降の粘り強いバッティングと、要所でのボウリングをどう上回るか。
パワープレイでの主導権争いと、終盤の“加速力”が焦点になります。
南アフリカ側の視点:勢いと冷静さをどう両立させるか
南アフリカは、第2 ODIでの劇的なチェイスを経て、自信と勢いを手にしています。
とはいえ、その一方でこの試合はアウェーでの決戦、しかもインドの“要塞”と呼ばれるスタジアムでの試合です。
そこで重要になってくるのが、マシュー・ブリーツケらが示している「環境に左右されないメンタリティ」です。
- アウェーの声援やプレッシャーを、集中力を高める材料に変えられるか
- ビッグマッチでの小さなミスをいかに減らすか
- テスト+ODI“レアなダブル”という期待を、プレッシャーではなくモチベーションに転換できるか
こうした要素がかみ合えば、南アフリカにとって歴史的なシリーズとなる可能性は十分にあります。
ファンにとっての見どころ:1ボールごとに表情が変わるデシダー
ここまでのシリーズ展開と、両チームの状況を踏まえると、第3 ODIは1ボールごとに流れが変わりうる緊張感の高い試合となりそうです。
- トスの結果と選択:先攻・後攻の判断が、そのまま試合の色合いを決める可能性。
- デューの出方:後半イニングでのボウラーのコントロールと、バッターのアグレッション。
- ブリーツケをはじめとする南アフリカ打線が、ヴィザグの雰囲気にどう向き合うか。
- インド打線の爆発力が再び発揮されるか、それとも南アフリカのボウラー陣が食い止めるか。
インドの“ホームの意地”と、南アフリカの“歴史的ダブルへの挑戦”。
どちらのストーリーが実を結ぶのか、世界中のクリケットファンが注目する一戦になりそうです。



