映画「栄光のバックホーム」本日全国公開 28歳で逝去した元阪神・横田慎太郎さんの生涯が感動を呼ぶ
脳腫瘍と闘いながら野球に向き合い、2023年7月に28歳で亡くなった元阪神タイガース外野手・横田慎太郎さんの生涯を描いた映画「栄光のバックホーム」が11月28日に全国公開されました。監督・秋山純による感動的なこの作品は、多くの視聴者の心を揺さぶり、野球界をはじめ社会全体に大きな反響をもたらしています。
横田さんは鹿児島実業高校から2014年にドラフト2位で阪神タイガースに入団。同期には梅野隆太郎選手や岩貞投手など、その後プロ野球で活躍する選手たちがいました。しかし、プロ入り後に脳腫瘍と視力低下という厳しい現実に直面することになります。それでも、治療を続けながら野球を続けた横田さんの姿勢は、多くの人々に深い感銘を与えることになったのです。
映画のタイトルとなった「奇跡のバックホーム」
映画のタイトルにもなった「栄光のバックホーム」とは、横田さんが引退試合で見せた印象的なプレーを指しています。視力が衰えながらも、外野からの鮮やかな返球でランナーをホームでアウトにしたこのプレーは、多くの野球ファンに強い印象を残すものとなりました。病気と懸命に闘いながらも、最後まで諦めずに野球に向き合った横田さんの精神が凝縮されたこの一球は、彼の人生そのものを象徴しているのです。
ダブル主演の松谷鷹也、感動の舞台あいさつ
本日の全国公開に先立ち、都内で行われた舞台あいさつには、ダブル主演の松谷鷹也(31)と鈴木京香(57)が登壇しました。横田さんを演じた松谷は、目を真っ赤にして「慎太郎さんと出会って今日まで4年半、慎太郎さんの生きざまを伝えたいと思いここまで走ってきました。ようやくそのスタートラインに立てた」と声を震わせながら語りました。
この言葉には、横田さんの生き方を映画という形で後世に伝えようとする、出演者たちの強い思いが込められています。単なる一本の映画ではなく、一人の若き野球人の人生を丁寧に描くことで、生命の大切さや諦めない精神の価値を問い直す作品となっているのです。
鈴木京香、故・横田さんの母役への葛藤と決意
横田さんの闘病を支えた母親を演じた鈴木京香は、オファーを受けた当時の心情を明かしました。「脚本と原作本を読んだ上で、このお母さんの役は本当に難しい役だなと思った。できないんじゃないかなと思った」と当初の不安を語っています。
しかし、鈴木は「調べれば調べるほど、慎太郎さんの人柄を知れば知るほど、やっぱりやりたいと思った」と、徐々に役への向き合い方が変わっていったと述べています。舞台あいさつでは、松谷の背中に手を添えて「また泣いてるからどうしよう!って母は思うんですよ」と笑わせながら、「鷹也くんや皆さんとこの日を迎えられて、感謝です」と喜びを表現しました。演じることを通じて、横田さんと母親の絆、そして親子で共に闘った時間の重みを感じることができたのでしょう。
若い世代への大切なメッセージ
阪神タイガースの平田勝男ヘッドコーチは、このニュース内容1で横田さんの野球に対する姿勢が「ずっと語り継がれていく」と述べるとともに、若虎たちに映画の観賞を呼びかけているとのことです。平田ヘッドコーチは以前のコメントで、横田さんについて「入団してきた時から常に全力でひたむきに野球に取り組む選手だった」と評価していました。病気になってからも「毎日毎日朝早くに来て練習して、ベンチの中でも誰よりも声を出してチームを盛り上げてくれた」と、その姿勢を讃えています。
こうした横田さんの「諦めない」精神は、単に過去の遺産ではなく、現在の若い選手たちに生きた教訓として受け継がれるべきものなのです。映画を通じて横田さんの生き方を知ることで、若い世代の野球人たちが、困難にどう向き合うべきかを学ぶことができるのです。
後輩たちの涙、横田さんの遺志の継承
公開前の特別試写会では、横田さんの母校である鹿児島実業高校野球部の後輩や関係者約80人が参加しました。試写会では、多くの参加者が涙を流しながら映画を見入り、横田さんが遺した思いと感動のプレーを映し出す映画に心を揺さぶられたとのことです。
同期入団の梅野隆太郎選手も、かつてのコメントで「横田といえば、寮の室内練習場で毎日毎日打ち込んでいる姿が印象的」で、「横田の諦めない姿から自分もプロ野球選手として最後まで諦めずに戦い抜くという思いを強くしました」と述べていました。このように、横田さんの存在は、彼の同世代だけでなく、後輩たちにも大きな影響を与え続けているのです。
人生の価値を問い直す作品
映画「栄光のバックホーム」は、野球という競技の枠を超えて、人生とは何か、生きることの意味とは何かを問い直す作品となっています。28歳という若さで逝去した横田さんの、短くも輝かしい人生を丁寧に描くことで、視聴者たちに一日一日を大切に生きることの重要性を改めて認識させるのです。
鈴木京香が、このような重い役を引き受けることで得た気づきとして「あんなふうに一日一日を大切に」と述べているように、横田さんの生き方は、多くの人々に人生観の変容をもたらす可能性を秘めています。
阪神タイガースと野球界全体への影響
横田さんが2019年に現役を引退してから6年が経ちました。しかし、映画という新しい形で彼の人生が改めて社会に提示されることで、野球界だけでなく、社会全体における「困難にどう向き合うか」という普遍的なテーマが浮かび上がってくるのです。
阪神タイガースのコーチ・スタッフたちは、横田さんの姿勢を「語り継ぐ」ことの重要性を認識しており、映画公開を通じて新しい世代の選手たちに対しても、その精神を伝承しようとしています。これは、単なる過去の顕彰ではなく、現在と未来への責任ある行動なのです。
本日の公開とこれからの影響
本日全国公開となった映画「栄光のバックホーム」は、これからも多くの映画館で上映されることになります。野球ファンはもちろんのこと、人生の意味を問い直したい人、困難に直面している人、そして若い世代が観るべき作品として、社会的な関心が高まっていくことが予想されます。
横田慎太郎さんという一人の若き野球人の生涯を通じて、私たちは何を学ぶのか。映画という表現形式が、その問いに対して新たな答えをもたらすことになるでしょう。



