マルコ博士の退団が正式決定、レッドブルの一時代が終焉

フォーミュラ1の最大級のニュースが飛び込んできました。レッドブル・レーシングのモータースポーツアドバイザーを務めてきたヘルムート・マルコ博士が、2025年末をもってチームを離れることが正式に決定されました。当初2026年シーズンまで契約が延長されていた82歳のマルコ博士ですが、アブダビGP翌日の月曜日にレッドブル上層部との会談で退任方針が固まったとされています。

マルコ博士は2005年からレッドブルに携わり、実に20年超にわたってチームの育成戦略の中核を担ってきました。マックス・フェルスタッペンをはじめ、多くの才能あるドライバーを発掘し育成してきた功労者の退団は、F1界全体に大きな影響を与えることになります。

なぜマルコ博士は退団することになったのか

マルコ博士の退団に至った背景には、複数の要因が絡み合っていると見られています。本人は「複雑な要素がいくつもある」とコメントしており、直接的な理由を明かしていませんが、2025年シーズン中の動きが大きな影響を与えたことは確実です。

特に注目すべきは、マルコ博士が2025年シーズン中にレッドブル内部の意思決定プロセスを無視して、複数のドライバー契約を独断で進めていたという報道です。チーム上層部はこの動きに激怒し、即時の契約破棄を命令。アレックス・ダンとの契約解除には数十万ユーロ規模の費用が必要だったとも伝えられています。

さらに2025年シーズン中盤には、レッドブル・レーシングが夏にクリスチャン・ホーナーを解任し、組織体制の大幅な見直しを実施していました。マルコ博士の権限が徐々に低下していく中での独断的な行動は、チーム内での対立を深刻化させたと考えられます。

フェルスタッペンとの関係、そして今後の懸念

マルコ博士の退団がもたらす影響の中でも最も大きいのが、マックス・フェルスタッペンの将来です。フェルスタッペンはマルコ博士を強く信頼してきた人物で、2024年のサウジアラビアGPでホーナーをめぐる内紛が激化した際も、フェルスタッペンはマルコ博士を強く擁護しています。

マルコ博士がいなくなることで、フェルスタッペンがレッドブルに留まるかどうかという問題も浮上しています。マルコ博士本人も「心地よく働ける環境」を重視すると語っており、チームの雰囲気や体制がドライバーの決定に大きな影響を与える可能性があります。

ベッテルの後任就任が浮上

注目すべきニュースとして、マルコ博士の後任候補に4連覇王者セバスチャン・ベッテルの名前が浮上しています。ベッテルはマルコ博士によって育成された過去があり、彼の復帰によってレッドブルが新しい時代への架け橋になる可能性が指摘されています。ベッテルの経験と知識は、これまでマルコ博士が担ってきた育成戦略を引き継ぐのに最適だと見る関係者も少なくありません。

ランビアーゼの涙、レッドブル内の感情的な変化

マルコ博士の退団決定は、チーム内の感情にも深刻な影響を与えています。ドライバーの一人であるランビアーゼは涙を流し、「いろいろな思いが込み上げた」とコメント。マルコ博士がチームの精神的な支柱であったことを物語っています。

一方、マックス・フェルスタッペンはランビアーゼについて「チームの模範的存在」と称えており、チーム内での結束がこれからどうなるのかが懸念されています。

レッドブル・レーシングの再編と今後の展望

チーム代表ローラン・メキースは、マルコ博士の退任について直接的には語らなかったものの、「F1は静的な世界ではなく、常に組織全体を見直し続ける必要がある」とコメント。レッドブルが次世代に向けて体制強化を進めていることを示唆しています。

メキースは「どれだけ小さくても組織を前進させるための『次のステップ』を常に探している」と語り、2025年シーズン中盤に直面した難局を乗り越えるうえでマルコ博士が果たした役割に感謝を述べました。

しかし、マルコ博士の退団によって、レッドブルが積み上げてきた育成の伝統と経験が失われるのではないかという懸念の声も上がっています。2026年シーズンに向けて、新しい体制でチームがどのようなパフォーマンスを見せるのか、そしてフェルスタッペンがレッドブルに留まるのかどうかが、F1界の大きな焦点となるでしょう。

2025年末で終わるマルコ博士の正式な協力関係は、20年超続いたレッドブルの「黄金期」の終焉を象徴しています。新しい時代へ向けて、レッドブル・レーシングがどのように船出するのか、その行方が注視されています。

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