ブルワーズの怪物新人ミジオロウスキーがポストシーズンで躍動

2025年10月16日(日本時間17日)、ナショナル・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)第3戦が行われ、ミルウォーキー・ブルワーズの23歳の新人投手、ジェイコブ・ミジオロウスキーが圧巻の投球を見せました。43年ぶりのワールドシリーズ進出を目指すブルワーズは、敵地ロサンゼルスでドジャースと対戦。初回に訪れた大ピンチの場面で、この若き剛腕が真価を発揮しました。

初回の大ピンチを164キロの剛速球で切り抜ける

試合はオープナー戦略を採用したブルワーズが、救援左腕のアシュビーを先発として送り出しました。しかし、初回から大谷翔平選手に右翼線三塁打を許し、続くムーキー・ベッツにも右中間二塁打を打たれて先制点を献上。さらに1死一、二塁という絶体絶命のピンチを迎えました。

このときマウンドに立ったのが、ミジオロウスキーです。身長203センチ、体重109キロの恵まれた体格を持つこの右腕は、まずエドマンをカーブで空振り三振に仕留めると、続くT・ヘルナンデスに対して101.9マイル(約164キロ)の直球で見逃し三振を奪い、連続三振でピンチを脱出しました。この快投により、流れを引き戻したブルワーズは、バウアーズの中前適時打で同点に追いつくことができました。

逆境を乗り越えてきた新人シーズン

ミジオロウスキーの2025年シーズンは、決して順風満帆ではありませんでした。シーズン途中の6月12日にメジャーデビューを果たし、デビュー戦では5回を無安打(4四球)に抑える好投を披露。さらに102.3マイル(164.6キロ)を記録し、スタットキャスト導入以降のブルワーズ投手が投げた最速球を更新しました。6月20日の試合では6回をパーフェクトに抑え、先発投手がデビューから11イニングを無安打に抑えたのは1900年以降で初の快挙となり、6月度の「ルーキー・オブ・ザ・マンス」にも選出されました。

しかし、8月から9月にかけては不調に陥り、防御率は6.06まで悪化。わずか2週間前まで、ブルワーズはポストシーズンの構想からこの若き剛腕を完全に外す可能性すら考えられていました。地区シリーズでは先発ローテーションから外れ、新人王獲得の可能性もほぼ消滅していたのです。

ポストシーズンでの復活劇

10月を迎え、ミジオロウスキーをめぐる状況は一変しました。地区シリーズ第5戦ではリリーフで登場し、4イニングを鈴木誠也選手に打たれたソロの1点のみに抑える好投を見せました。地区シリーズ全体では2戦合計7回1失点という素晴らしい成績で、チームのシリーズ突破に大きく貢献したのです。

ブルワーズのクリス・フック投手コーチは、「ポストシーズンの環境がそういう結果をもたらすのは面白いことだね」と、右腕の復活を喜んでいます。今やミジオロウスキーは、主砲クリスチャン・イェリッチが「はみ出しおもちゃの仲間たち」と呼ぶ集団の重要な一員となっています。

大谷翔平との因縁と今後の対戦

ミジオロウスキーと大谷翔平には、すでに因縁があります。7月8日(日本時間9日)のドジャース戦では、大谷にカーブを本塁打にされましたが、すぐに立ち直り、6回を1失点12奪三振で勝ち星を得た経験があります。この経験は、今回のNLCSでも彼の自信につながっているでしょう。

ミジオロウスキーは大谷との対決について、「スイングを見ながら、その場で対応していく」と意欲を見せています。23歳の若き剛腕は、MLBを代表するスーパースターとの真剣勝負を楽しみにしている様子です。

佐々木朗希との新人対決も話題に

今回のNLCSでは、もう一人の注目新人投手がいます。それがドジャースの佐々木朗希選手(23歳)です。佐々木もわずか1カ月前はマイナー3Aのオクラホマシティで苦戦し、5試合のリハビリ登板で防御率6.75を記録していました。しかし、ワイルドカードシリーズと地区シリーズで5回1/3をほぼ完璧に抑え、2セーブを挙げるなど、ポストシーズンで見事な復活を遂げています。

ミジオロウスキーは「佐々木朗希と投げ合いたい」と対戦を心待ちにしており、同じ23歳の新人右腕同士の対決が実現するかどうかも大きな注目ポイントとなっています。どちらも新人王を獲得することはないかもしれませんが、それ以上の栄誉であるワールドシリーズ進出に手が届くところまできているのです。

ブルワーズのパット・マーフィー監督は佐々木について、「最終回に100マイル(161キロ)とスプリットを投げる投手?そんなの不公平だ。リーグに嘆願して、何かの理由で出場停止処分を受けさせられるかどうか検討するつもりだ」と冗談を飛ばし、リーグ優勝に向けて避けては通れない右腕との対戦を前に、ユーモアで対応しています。

ポストシーズン初登板の舞台裏

ミジオロウスキーはポストシーズン初登板の舞台裏を振り返り、「アドレナリンが出過ぎていて…」と興奮状態だったことを告白しています。実際、試合中には投手ゴロを捕球した後、自ら1塁まで走るという珍しい場面もありました。これは若さゆえの過剰な興奮を示すエピソードですが、同時に勝利への強い執念を感じさせる出来事でもあります。

ミジオロウスキーのプロフィールと経歴

ジェイコブ・ウォルター・ミジオロウスキーは、2002年4月3日生まれの23歳。ミズーリ州ブルースプリングス出身で、右投右打の投手です。愛称は「Miz(ミズ)」と呼ばれています。

高校時代から注目を集め、高校3年次には9勝2敗、防御率1.48の成績を記録しました。当初はオクラホマ州立大学で大学野球をする予定でしたが、クラウダーカレッジに入学。大学では15試合に先発登板し、10勝0敗、防御率2.72、136奪三振という圧倒的な成績を残しました。ドラフトコンバインでは99.8マイルを記録し、プロのスカウトを驚かせました。

2022年のMLBドラフト2巡目(全体63位)でミルウォーキー・ブルワーズから指名され、契約金235万ドルでプロ入りしました。2023年にはA級で開幕し、シーズン途中にA+級ウィスコンシン・ティンバーラトラーズへ昇格。オールスター・フューチャーズゲームにも選出されています。

今後の展開と期待

ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、ミジオロウスキーとブルワーズのブルペン陣について「やるべきことは山積みだ」と警戒感を示しています。佐々木がドジャースの守護神として、リードしている試合の九回(あるいは終盤)に登場するのに対し、ミジオロウスキーはブルワーズがブルペンデーに出るときに多くのイニングを任されると予想されています。また、先発登板の可能性も視野に入っているようです。

わずか2週間前まで不調に苦しみ、ポストシーズンの構想から外される可能性すらあったミジオロウスキーは、今やブルワーズにとって不可欠な存在となりました。逆境を乗り越え、最高の舞台で輝きを放つ23歳の新人投手。彼の今後の活躍から目が離せません。

43年ぶりのワールドシリーズ進出を目指すブルワーズにとって、この若き剛腕の存在は大きな希望となっています。164キロの剛速球と多彩な変化球を武器に、ミジオロウスキーがどこまでチームを勝利に導けるか、NLCSの今後の展開が注目されます。

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