高知にBリーグクラブ誕生なるか? リーグ関係者が来高し「まちづくりの装置」としての可能性を講演

プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」の関係者が高知を訪れ、高知県内にBクラブ(Bリーグクラブチーム)を設立できる可能性について講演や意見交換を行いました。
会場では、バスケットボールを通じたまちづくりの役割や、地域経済への波及効果などが丁寧に説明され、高知にプロバスケットボールチームをつくる機運が一段と高まりつつあります。

Bリーグ「47都道府県プロジェクト」と高知県の現状

Bリーグは、将来的に47都道府県すべてにBクラブを誕生させることを掲げる「B.LEAGUE 47都道府県プロジェクト」を進めています。
現在、B1からB3まで全国各地に55クラブが活動していますが、山梨県・和歌山県・鳥取県・高知県・大分県・宮崎県の6県には、まだBリーグクラブがありません。高知県もこの「空白県」のひとつで、今回の講演や市役所訪問は、その現状を変えるための大きな一歩と言えます。

Bリーグは、単にプロチームを増やすことが目的ではなく、「スポーツの力で日本を元気にする」という理念を掲げています。
そのため、トップチームだけでなく、スクールやユースチームの運営を通じて、子どもたちの育成、地域コミュニティづくり、地元企業との連携など、幅広い地域創生を目指していることが説明されました。

高知での勉強会・講演の概要 ―「Bクラブ設立の可能性」に注目集まる

高知市内では、Bリーグ側の担当者を招いた勉強会・講演会が開かれ、高知でのBクラブ設立の具体的なイメージや、これまでの他地域の事例が紹介されました。
この会には、B3理事長の堀井氏や、Bリーグ執行役員らが参加し、高知県担当者も同席して、県内関係者に向けて詳しい説明を行ったとされています。

講演のなかで強調されたのは、Bクラブが「地域を元気にする装置」になり得るという点です。
試合開催による観客動員だけでなく、

  • 地元企業とのスポンサー連携
  • 飲食・宿泊・交通などへの経済波及効果
  • 地域の子どもたちの夢や目標となる存在
  • 健康増進や生涯スポーツとしてのバスケット普及

といった、さまざまな側面でまちづくりに深く関わることが説明されました。

「まちづくりの役割」がキーワード ― スポーツチームは地域のインフラに

今回の講演で、Bリーグ側が何度も口にしたのが、「まちづくり」という言葉でした。
Bクラブは単なるスポーツチームではなく、地域の誇りやシンボルとなり、人の流れや交流を生み出す社会的インフラとして期待されています。

特に、近年は部活動の地域移行なども議論されるなかで、プロクラブが地域の子どもたちの受け皿となる役割も求められています。
クラブが運営するスクールやアカデミーは、技術だけでなく、礼儀やチームワーク、多様性を尊重する心など、社会で必要な力を育む場にもなります。

また、ホームゲームの日は、会場周辺で飲食ブースや物販が並び、地域のお祭りのような雰囲気が生まれます。
こうした「非日常の楽しみ」が定期的にあることは、人口減少が進む地方にとって大きな魅力であり、移住やUターンのきっかけになるケースも他地域で報告されています。

高知市役所を訪問 ― Bリーグ関係者が協力を要請

ニュース内容によると、Bリーグ関係者は高知市役所も訪問し、市の担当者らと意見交換を行いました。
ここでは、チーム立ち上げに向けた協力を正式に要請し、行政としてどのような支援が可能か、情報共有が行われたとされています。

Bリーグの新クラブ設立には、アリーナ(ホーム会場)や、練習環境、資金面(スポンサー)、運営母体など、さまざまな条件を整えていく必要があります。
そのため、市や県などの行政と連携しながら、中長期的な計画を立てることが欠かせません。

高知市ではすでに、高知県立県民体育館をアリーナとして再整備する計画があり、2029年度までにBリーグクラブ設立を目指すという構想も、地元の市議会議員から示されています。
今回の市役所訪問は、こうした動きとも連動しながら、より具体的な一歩を踏み出す機会となったと見られます。

地元からの“声”とこれまでの経緯 ― 高知はなぜ「空白県」のままだったのか

高知県は、全国的にも高校バスケットボールのレベルが高い地域として知られています。
しかし、その一方で、高校卒業後の受け皿となるプロチームが県内に存在しないため、多くの有望選手が県外の大学やクラブへと流出してきた現実があります。

過去にも、高知でのBリーグ参入については議論された経緯がありますが、スポンサー(資金面)や施設面の課題から、計画が頓挫してきたとされています。
それでも、地元バスケットボール協会の関係者は「炎は消えていない」と語り、いつか高知にBクラブを、という思いを持ち続けてきました。

2025年には、高知市議会議員の藤川裕介氏が、「2029年度までに高知県内でBリーグクラブを設立する」という目標を掲げ、本格的な活動を始めることを表明しています。
藤川氏は、野球の「高知ファイティングドッグス」、サッカーの「高知ユナイテッドSC」に続く「第3のプロスポーツチーム」として、Bクラブを位置づけています。
スポーツ振興を通じたまちづくりや、県内外からの関係人口の増加による経済活性化を目標に掲げ、地元バスケットボール協会とも連携しながら、仲間づくりを進めているところです。

「いま動き出せば、最短で数年後の参入も」 Bリーグ側が示すスケジュール感

Bリーグは、「47都道府県プロジェクト」の説明のなかで、いまクラブ創設に動き出せば、最短で2027-28シーズン(概ね2年後)からの参入も可能だとしています。
これは全国一律の目安であり、高知でも準備次第では比較的近い将来の参入が視野に入ることを意味します。

もっとも、具体的にどのタイミングで参入できるかは、

  • 運営法人の設立・体制整備
  • ホームアリーナの確保と設備
  • スポンサー獲得や事業計画の信頼性
  • 地域からの支持・ファン基盤づくり

といった条件をどこまで整えられるかに左右されます。
今回の講演や市役所訪問は、これらの条件を一つずつ確認しながら、「何が足りないのか」「誰と組むべきか」を整理する場にもなりました。

地域にとってのメリットと、乗り越えるべき課題

高知にBクラブが誕生した場合、地域にもたらされるメリットとして、次のような点が挙げられます。

  • 経済効果:試合開催による観客動員、飲食・宿泊業への波及、グッズ販売など。
  • 教育・育成:スクールやユースチームを通じた子どもたちの成長の場。
  • 地域の一体感:ホームゲームを中心に、世代を超えた交流の機会が増える。
  • 情報発信力:全国リーグを通じて「高知」の名前が繰り返し発信される。

一方で、乗り越えるべき課題も少なくありません。

  • 安定した資金確保:長期的にチームを運営できるスポンサー体制。
  • アリーナ・練習環境:リーグ基準を満たす会場整備とアクセスの確保。
  • 人材:運営スタッフ、コーチ、選手など、チームを支える人づくり。
  • 地域の理解と参加:ファンや市民が「自分たちのクラブ」と感じられる仕組みづくり。

過去に一度は参入計画が頓挫した経緯があるだけに、今回は「継続性」を重視した慎重な議論が必要になります。
それでも、Bリーグ側が直接高知を訪れ、勉強会や市役所訪問を行ったことで、「本気度」が地元にも伝わり、前向きな空気が生まれています。

「高知の子どもたちに、地元で夢を追える環境を」

高知出身でBリーグのコートに立つ選手は、これまでごく少数で、「高知の男」と呼ばれるベテランガードの存在が象徴的に語られてきました。
彼のような選手が、もし地元のクラブをホームとしてプレーできたなら――。そんな「もしも」を現実に変えたいという思いが、今回の動きの根底にあります。

地元で育った子どもが、高校を卒業しても県内のプロクラブでプレーを続けられる道があれば、才能の流出を防ぎつつ、地域に誇りと物語を生み出すことができます。
バスケットボールを心から愛する人たちにとって、高知にBクラブをつくることは、単なるスポーツビジネスではなく、「高知バスケットボールの物語」を次の章へと進める試みでもあります。

これから求められる「市民一人ひとりの関わり方」

Bクラブ設立は、行政や企業だけの話ではありません。
Bリーグの島田慎二チェアマンも、「多くの人を巻き込まないとクラブは生まれ育たない」と語り、新たなクラブオーナーや支援者を広く募る姿勢を示しています。

市民一人ひとりにも、できることがあります。例えば、

  • 勉強会や説明会に参加して、情報を知る・広める
  • 地元のバスケットボールの試合やイベントに足を運ぶ
  • 将来的にクラブができたとき、シーズンチケットやグッズ購入で支える
  • SNSなどで高知のバスケの魅力を発信する

といった、小さな一歩の積み重ねが、「高知にもBクラブを」という大きな流れを後押しします。
今回のBリーグ関係者による講演と市役所訪問は、その流れを本格的に動かすためのスタートラインと言えるでしょう。

高知にBクラブができるかどうかは、これから数年にわたる議論と準備、そして地域の支えにかかっています。
それでも、これまで「夢」として語られてきた構想が、少しずつ「現実味のある計画」へと姿を変え始めていることは確かです。
バスケットボールを愛する人も、これから知ってみたいという人も、高知の新しい一歩を見守りながら、ぜひ一緒に関わっていきたいところです。

参考元