アコスタがKTMに警告「このバイクはまだ十分ではない」:2025年シーズン終了後の開発課題が浮き彫りに

MotoGP2025シーズンが終幕を迎えた中、レッドブルKTMファクトリー・レーシングのペドロ・アコスタが、KTMの開発陣に対して厳しい現実を突きつけた。バレンシアで行われた公式テストを経て、アコスタは「このバイクはまだ十分ではない」とその評価を語り、来季への大きな課題を提示している。

2025年シーズンの終わりに「無駄な1年だった」と振り返るアコスタ

2025年のMotoGPシーズンを終えたペドロ・アコスタは、ランキング4位というKTM史上最高の成績を記録しながらも、その達成感よりも悔しさが勝っているようだ。バレンシアGP決勝での4位フィニッシュで幕を閉じたシーズンについて、アコスタは率直に「無駄な1年だった」と振り返った。

この発言の背景には、アコスタの高い志と現在のKTMマシンのポテンシャルとのギャップが存在している。アコスタ自身、Moto3やMoto2時代よりも優れたライダーとして成長していることを認識しており、その能力を十分に発揮できるマシンを求めているのである。彼は「時々表彰台に上るだけでは足りない」と語り、チャンピオンシップを争えるレベルのパフォーマンスを望んでいるのだ。

バレンシアテストでの評価:KTMの強みと弱点が明確に

11月18日に行われたバレンシア公式テストでは、アコスタがKTMの開発の最前線に立ち、新型エアロパーツの評価を実施した。このテストを通じて、彼は改めてKTMというマシンの本質を見つめ直すことになった。

アコスタの評価によれば、「KTMの強みは明確で、弱点も同様に明確である」という状況が続いている。つまり、KTMには確かに優れた部分が存在する一方で、他社との差を広げている明確な課題が存在するということだ。テストで試されたエアロパーツについては「いくつかのパーツはバイクをより完成されたものに感じさせてくれた」と述べており、開発の方向性には一定の手応えを感じている。しかし全体的には、現在のKTM RC16には、ワールドチャンピオンシップを目指すには足りない何かが存在しているというのが、アコスタの率直な評価なのである。

路面コンディションの影響で午前セッションがキャンセルされ、十分な走行時間が確保できなかったにもかかわらず、アコスタとKTM開発チームは優先順位を明確にしながら作業を進めた。テスト終了後、アコスタは「今日はたいして走れなかった割には、上手く作業できた」とコメントし、今後のセパンテストに向けての指針を得たことを示唆している。

KTMがアコスタ引き留めへ全力投球:空力性能開発に全てを賭ける

こうしたアコスタの率直な警告の背景には、KTMが直面する重大な事実がある。アコスタは将来有望なライダーであり、KTMのチャンピオンシップ獲得への切り札として期待されている存在だ。しかし、現在のマシンのポテンシャルが十分でなければ、アコスタが他のファクトリーチームへの移籍を決断する可能性も現実的な脅威となるのだ。

この状況を受けて、KTMはアコスタを引き留めるための一大プロジェクトを推し進めている。複数の関係者からの報告によれば、KTMの経営陣とテクニカルチームは、空力性能の大幅な向上に全てを賭けている状況にある。特に注目されているのは、2026年シーズンに投入予定の新型RC16の性能向上である。

セパンテストでの動向が極めて重要になる。KTMがセパンにおいて0.5秒程度の性能向上を実現できるRC16を投入できれば、アコスタを引き留める大きな材料となるだろう。この「0.5秒」という数字は、MotoGPにおいてはチャンピオンシップの勝敗を分ける大きな差である。もしKTMがこの目標を達成できれば、アコスタは現在のチームに留まり、来季以降のプロジェクトに全力で取り組む可能性が高まるのだ。

ペドロサの存在とアコスタの成長

こうしたKTMの開発努力の中で、元MotoGPライダーであり、現在KTMのアカデミック・アドバイザーを務めるダニ・ペドロサの存在が注目されている。業界関係者の多くが、アコスタのロケットが飛び立つことができたのは、ペドロサの支援があったからこそだと述べている。

アコスタ自身、2025年シーズンを通じて大きな成長を遂げた。シーズン中盤からは転倒の頻度を大幅に減らし、終盤6戦では安定した成績を残している。この成長過程の中で、ペドロサをはじめとするKTムの経験豊富なスタッフからのアドバイスが大きな役割を果たしているのだ。

アコスタの未来への決意

シーズンを終えたアコスタは、現在の状況について冷静に分析している。彼は「MotoGPに魔法なんてありません。自分の立ち位置がどこかを分かっていないといけません」と述べ、現実的なマシンの性能の差を認識している。

しかし同時に、アコスタは強い決意も示している。「チャンスはいつか必ず来ると思います」と語り、自分が真のチャンスを掴むための準備を続けることの重要性を強調している。現在のモチベーションを維持し、より良いライダーになっていくことが、最終的には自分自身と、そしてKTムの成功につながると確信しているのだ。

2025年のシーズンは、確かにアコスタにとって「無駄な1年」であったかもしれない。しかし、この1年間で得られた経験と教訓は、来季以降のアコスタの飛躍に向けた重要な基礎となるはずである。KTMが空力性能開発で大きな成果を挙げ、セパンテストで新しいRC16のポテンシャルを示すことができれば、アコスタ自身も、そしてKTM全体も、次の段階へと進むことになるだろう。

今後の焦点

MotoGP2026シーズンへ向けた開発は、既に本格的に動き始めている。セパンテストでのKTMとアコスタの動向は、来季のMotoGP戦線全体を占う上でも重要な指標となるに違いない。アコスタが「このバイクはまだ十分ではない」と指摘した課題を、KTMがどこまで克服できるのか。その答えが、2026年のシーズンを大きく左右することになりそうだ。

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