2025年度「正力松太郎賞」はホークス小久保裕紀監督、特別賞はドジャース山本由伸投手――球界の躍進を象徴する栄誉
プロ野球の頂点に立った指揮官と、海を渡った剛腕に贈られた伝統の賞
2025年11月13日、プロ野球界で最も権威ある賞のひとつである「正力松太郎賞」の受賞者が発表されました。今年度の本賞には福岡ソフトバンクホークスの小久保裕紀監督が、また特別賞には大リーグ・ロサンゼルス・ドジャースの山本由伸投手がそれぞれ選ばれました。いずれも現代日本プロ野球界を象徴する存在であり、その功績と背景には、今季の日本野球の発展と希望が明確に刻まれています。
正力松太郎賞とは――日本プロ野球草創の礎を称える伝統
正力松太郎賞は、プロ野球の発展に最も大きく貢献した監督や選手、関係者に毎年贈られる権威ある賞です。創設は1977年。読売新聞社の創業者であり、初代巨人軍オーナーとして日本プロ野球の発展に生涯を捧げた正力松太郎氏の名を冠しています。その年に最も華々しい成果を挙げた人物に送られるこの賞は、多くの名将・名選手たちの夢や努力の証明でもあり、球界の「現在地」を伝えるバロメーターでもあります。
小久保裕紀監督――チームビルディングで5年ぶり日本一へ
2025年の本賞受賞者に選ばれたのは、今年パ・リーグを制し、日本シリーズでも阪神タイガースを破って5年ぶりの日本一へと福岡ソフトバンクホークスを導いた小久保裕紀監督です。
- 今シーズン、ホークスは2年連続のリーグ優勝、5年ぶりの日本一を見事に勝ち取りました。
- 小久保監督は「全員がピースとなってくれた」「チームの総合力で頂点にたどり着いた」とシーズンを総括しています。
- 若手選手の積極登用やベテランとの融合、巧みな選手起用で新たなホークス野球を築き上げた点が評価されました。
- 選考委員の王貞治氏からは、「若い選手を思い切って使い、見事に応えさせた」と高く評価されました。
ホークスは伝統的に強豪球団とされていますが、ここ数年は簡単なシーズンばかりではありませんでした。そんな中で小久保裕紀監督は新体制の下、コーチ陣やフロントと連携しながら「全員野球」を体現、自らも積極的かつ誠実な姿勢でチームを率い続けました。
小久保監督は受賞コメントで「この賞は、チーム関係者、そしてファンの皆さま全員の努力と応援の結晶」と述べ、支えてきた仲間やファンへの感謝を強調しています。時に厳しく激励し合い、選手たちがそれぞれの役割を理解し、勝利を信じて戦い抜いた――その過程こそが、球団とファンの結束を高めた原動力だったことが伺えます。
ドジャース山本由伸投手――メジャーの舞台で証明した日本野球の力
もうひとつ特に注目されたのは特別賞の受賞者として選ばれたロサンゼルス・ドジャースの山本由伸投手です。彼は今季メジャーリーグに完全移籍し、日本人投手としては歴代2人目となるワールドシリーズMVPに輝くなど、シーズンを通じて圧倒的な活躍を見せました。
- レギュラーシーズンだけでなく、ポストシーズンでも圧巻のピッチングを続け、チームをワールドシリーズ制覇へ導きました。
- 選考委員会では「日本野球ここにありを見せてくれた」と、その成果が絶賛され、全会一致で選ばれました。
- 選考委員長の王貞治氏は「今年も大谷君(翔平)にあげたいと思うくらいの成績で、文句はない。しかし山本君のシーズン通した活躍とポストシーズンの躍動は、本当に素晴らしかった」と評しました。
山本投手の受賞は、近年の日本人メジャーリーガーの活躍がますます顕著になる中で、「世界で戦える日本野球の力」を広く示すものとなりました。彼の存在は、国内球界のみならず、野球を志す多くの若者たちにも大きな夢と希望を与えたはずです。
歴代受賞者とソフトバンクホークスの存在感
これまで正力松太郎賞を最も多く受賞しているのは工藤公康氏の5回、続く王貞治氏が4回など、球界のレジェンドたちが名を連ねています。また、球団別ではホークス(南海・ダイエー時代を含む)が11回で最多受賞となっており、今回の小久保監督の受賞がその歴史に新たな一ページを加えました。
また、近年ではメジャーで活躍した大谷翔平選手やイチロー選手など、「日本野球の顔」として世界に飛躍した名選手にも贈られることが多くなっています。昨年度は横浜DeNAベイスターズの三浦大輔監督と、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手への特別賞となりました。
受賞の裏側――選考委員の視点とエピソード
正力松太郎賞の選考は王貞治氏をはじめ、球界を象徴するレジェンドOBらによる選考委員会で行われます。2025年度は、都内で行われた選考会で、満場一致での小久保監督本賞、山本投手特別賞という結論に至りました。
特に印象的だったのは、王貞治委員長自らが若手起用について「小久保監督は1年間、若い選手を我慢して抜擢し、彼らに経験を積ませた。結果、育成した若手が大事な場面で応えてくれた」と、未来を見据えたチーム作りを高く評価したことです。
日本野球の未来へ――世代を超えて広がる夢と誇り
この1年、プロ野球は新星の躍進、ベテランの奮闘、そして世界に通用する選手たちの登場と、劇的なドラマに満ちていました。その中心に、小久保ホークスの快進撃と山本由伸投手のワールドクラスの投球がありました。
- 小久保監督は「個人の賞ではなく、組織の努力の結晶」であることを強調し、周囲への感謝を語りました。
- 山本投手は「全会一致」での特別賞選出という快挙となり、その圧倒的な記録と舞台裏での努力が称えられました。
正力松太郎賞の歴史は、日本の野球史そのものです。困難や壁を乗り越え、チームや選手たちが磨き上げてきた「日本野球の矜持」は、この賞によって未来の世代へと受け継がれていきます。今後も、このような活躍や感動が続いていくことでしょう。
まとめ
2025年は小久保裕紀監督と山本由伸投手が正力松太郎賞を受賞しました。日本プロ野球そして日本人メジャーリーガーの存在感が際立った年となり、「日本野球ここにあり」を世界にアピールしました。両者のこれからにも、日本野球界の発展と希望が託されています。



