17歳の新星・中井亜美、トリプルアクセルを武器にGPファイナルで五輪切符を狙う

フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルが12月4日、名古屋市のIGアリーナで開幕した。各種目シリーズ上位6人が集う頂上決戦に、日本の女子からは坂本花織、中井亜美、千葉百音、渡辺倫果の4人が出場している。来年2月のミラノ・コルティナ五輪の代表争いが大混戦となる中、この大会の結果が五輪切符の行方を大きく左右する重要な舞台となっている。

五輪シーズンの新星・中井亜美が示す輝き

特に注目を集めるのが、17歳の中井亜美選手(TOKIOインカラミ)だ。10月のGPシリーズ開幕戦であるフランス大会で、初出場ながら優勝を果たし、一躍五輪メダル候補として注目を集める存在となった。シニアデビューシーズンとなる今季、中井選手が目指すのはシニア初年度でのGPファイナル制覇である。

これが実現すれば、2005年の浅田真央、2018年の紀平梨花に次ぐ、日本勢3人目の快挙となる。12月3日に行われた公式練習では、17歳の中井選手は大技であるトリプルアクセル(3回転半)を着氷。順調な調整を印象づけ、「周りの選手と練習して楽しみな感じ」と笑顔で語った。

憧れから武器へ進化したトリプルアクセル

中井選手の最大の武器となっているのが、トリプルアクセルである。ジュニア時代には憧れの技だったトリプルアクセルが、シニアに上がった今、自分の武器として花開いている。本人も「友達みたいな感覚」と表現するほど、この技との関係性が親密なものへと進化している。

中井選手のコーチである中庭健介氏(44)からは、GPファイナルという大舞台に向けて「失うものはない」とハッパをかけられているという。ショートプログラムでは3本、フリープログラムでは7本、計10本のジャンプを飛ぶ構成を組んでいる中井選手にとって、この10本のジャンプの質を高めることが勝つための必須条件となっている。

トリプルアクセル以外のジャンプの流れやランディングへの工夫、さらには足元の滑りを使ったポーズなど、細かい技術面での向上が積み重ねられている。ジャンプだけに頼らず、全体的な表現力と技術力を磨いていく取り組みが、中井選手を次のステップへ導いている。

五輪代表選考に向けた重要な舞台

今回のGPファイナルは、来年2月に迫ったミラノ・コルティナ五輪の前哨戦としての位置づけである。日本勢で上位2枠に入ることができれば、競争が激しさを極める代表選考で一歩前進することになる。

中井選手本人も「順位も気にしてないわけではないけど、まずはトリプルアクセル着氷や自分が求めている演技をしたい」と強調している。シニア初年度での大舞台登場という、プレッシャーと期待が交錯する状況の中で、いかに自分の演技に集中できるかが重要になってくるだろう。

また、中井選手は「この緊張感を乗り越えたい」とコメントしており、ジュニア時代と比べて緊張感が高まっていることを認めている一方で、GPファイナルという舞台を通じて、全日本選手権で求められるような高度な緊張下での戦い方を学ぶ機会と捉えているという。

同門の先輩・渡辺倫果との相乗効果

興味深いことに、中井選手と同じコーチの下で練習している渡辺倫果選手(23)も、3年ぶりにGPファイナルへ戻ってきた。渡辺選手も公式練習ではトリプルアクセルを複数回着氷し、「あとは本番やるだけと言えるところまで練習を積んできた」と自信を口にしている。

渡辺選手は同門の後輩である中井選手についても、「良い相棒を持ったなと。相棒が頑張っているなら姉として頑張らないと」とジョーク交じりに喜びを語っている。二人の切磋琢磨する関係が、それぞれの演技レベルをさらに高めている可能性も十分に考えられる。

日本女子フィギュアの厚みを示す陣容

GPファイナルの女子シングルスには、日本からは坂本花織選手(25)、中井亜美選手、千葉百音選手(20)、渡辺倫果選手の4人が出場している。この陣容は、現在の日本女子フィギュアスケートの厚みを象徴している。

坂本選手は既に国際的な大舞台での実績を積んだベテラン、千葉選手も安定した実力者として知られ、そして中井選手という新星が加わることで、日本女子フィギュアはミラノ・コルティナ五輪に向けて、非常に競争力のある陣容を整えることができている。

自身の目標に向かって

中井選手にとって、GPファイナルはあくまで通過点に過ぎない。本人も「全日本選手権が一番大事な試合になってくる」と明言しており、グランプリファイナルもそこに向けての試合と位置づけている。

「少しずつでいいので、アクセルの確率だったりも高めていきたいし、他のジャンプの安定感だったりもしっかり確認したい」という言葉からは、着実に自分の実力を積み重ねていく姿勢が感じられる。

五輪シーズンに現れた新星・中井亜美選手が、どこまで駆け上がるのか。トリプルアクセルを武器に、自分の求める演技を貫こうとする17歳の挑戦から、目が離せない。

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