麻生太郎副総裁、「石破政権はどよーん」発言が波紋 高市政権との対比も強調
自民党の麻生太郎副総裁が、前政権である石破政権を「どよーんとした感じで、何にも動かないという感じがあった」と評した発言が、政界や世論で大きな注目を集めています。
この発言は、東京都内で開かれた会合でのあいさつの中で飛び出したもので、麻生氏は対照的に、現在の高市政権については「明るくなった雰囲気がある」「世の中のことが決まり、動いている感じがする」と高く評価しました。
東京都内の会合で飛び出した「どよーん」評価
麻生氏が問題の発言を行ったのは、東京都内で11日に開かれた会合の場でした。
会合のあいさつの中で、麻生氏は、発足から約1年で幕を閉じた石破政権について、次のような趣旨のコメントをしています。
- 「どよーんとした感じで、何にも動かないという感じがあった」
短い表現ながらも、「どよーん」「何も動かない」という言葉は、政権運営の雰囲気や決定力の欠如をにおわせる、かなり辛口の評価と受け止められています。
この発言は、速報やニュースサイトで相次いで報じられただけでなく、SNS上でも引用され、「『どよーん』という表現はどうなのか」「かなりストレートな批判だ」といった反応が広がっています。
なぜそこまで厳しい? 麻生氏と石破氏の“距離感”
麻生氏のコメントが注目される背景には、両者のこれまでの関係があります。
報道によれば、麻生氏は自らが首相だった時代に、当時党内で影響力を増していた石破茂氏から退陣を迫られた経緯があり、個人的にも距離があると指摘されています。
また、石破氏はかつて、麻生政権や安倍政権などに対して、党内から批判的な意見を述べることが多く、「後ろから鉄砲を撃つ」といったレッテルを貼られた時期もありました。
石破氏本人はラジオ番組の中で、この「後ろから鉄砲」批判に対して反論し、「物言わない自民党って何なのよ」という言い方で、「異論を封じる空気」への危機感を語っています。
しかし、党内での主流派・非主流派の対立の歴史を踏まえると、麻生氏の今回の「どよーん」発言も、単なる政策論争を超え、長年の確執や政局の記憶を背景にした“因縁”の延長線上と受け止める向きもあります。
高市政権は「明るくなった」 女性議員の活躍を強調
一方で麻生氏は、石破政権と比較する形で、現在の高市早苗首相が率いる政権を持ち上げる発言も行いました。
- 「高市政権では、高市早苗首相ら女性議員の活躍が目立っている」
- 「何となく明るくなった雰囲気がある」
- 「世の中のことが決まり、動いている感じもする」
このように、麻生氏は、高市政権の特徴として「女性議員の積極的な登用」「政策決定のスピード感」などを評価し、それを「明るさ」「動きのある政治」というイメージと結びつけて語っています。
結果として、
- 石破政権=「どよーん」「何も動かない」
- 高市政権=「明るい」「決まり、動いている」
という鮮明な対比が形作られ、発言自体が「石破政権批判」であると同時に、「高市政権支持」を分かりやすく打ち出すメッセージとなっています。
ネット上では「老害」「いつ辞めるのか」といった批判の声も
今回の「どよーん」発言だけでなく、麻生氏をめぐっては、かねてから失言や辛辣な物言いがたびたび話題となってきました。
石破首相(当時)の辞任をめぐる議論の中では、麻生氏の姿勢に対して、ネット上で「老害」「いつ辞めるのか」「もう黙っていてほしい」といったきつい言葉も投げかけられています。
ある報道では、
- 「石破おろしに奔走している姿が、『傲慢』『卑劣』と受け止められている」
- 「辞めるべきは総理ではなく、裏金議員たちの方だ」といった声が多く上がっている
と伝えられており、麻生氏の発言の一つ一つが、支持と反発の両方を呼びやすい“分極化した存在”になっていることもうかがえます。
石破氏側のスタンス:「物言わない自民党でいいのか」
批判を受ける側とされた石破茂前首相も、沈黙しているわけではありません。
石破氏はラジオ番組の中で、自身が「後ろから鉄砲を撃つ人」と言われてきた経緯について触れた上で、
- 「物を言わない自民党って何なのよということ」
- 「言ったら『後ろから弾打つのか、バカヤロー』みたいな話で、みんなが黙る」
- 「みんなが黙るってことで、日本はどんな歴史たどりましたか?」
と語り、「異論を許さない空気」や「同調圧力」に強い懸念を示しています。
この発言は、党内での議論のあり方をめぐる問題提起でもあり、「政権を批判すること=裏切り」という単純な図式への疑問を投げかけるものでもあります。
麻生氏の「どよーん」発言とあわせて見ると、両者の間には、政権運営や党内民主主義に対する根本的な考え方の違いが存在しているとも言えそうです。
政界ベテラン・麻生太郎の存在感と発言の影響力
麻生太郎氏は、元首相であり、現在も自民党副総裁として党内に大きな影響力を持つベテラン政治家です。
年齢を重ねてもなお、全国各地での講演や会合に精力的に出席し、自身の経験や持論を語り続けています。
別の講演では、自身の年齢に触れながら、人口減少問題や地方創生、インフラ整備など、幅広いテーマについて持論を展開しており、「政治には大きな力が必要」「何が必要かを地域の人々が考えることが大事だ」といったメッセージも発しています。
このように、麻生氏は、時に物議を醸す歯に衣着せぬ発言と、長年の経験に裏打ちされた重みを併せ持つ存在として、支持と批判の両方を受けながらも、依然として日本政治の一角を占めています。
「どよーん」発言が示すもの――政権評価と党内力学
今回の「どよーん」発言は、一見すると単なる前政権への辛口コメントのようにも見えますが、その背景にはいくつかのポイントが見て取れます。
- 前政権への手厳しい評価:石破政権の1年を「何も動かない」と総括する形になっており、政策決定の遅れや、政権の発信力不足への不満がにじんでいます。
- 現政権への明確な支持表明:高市政権を「明るい」「動いている」と強調することで、自民党内の力学において高市政権を支える立場を明確にしています。
- 長年の因縁の延長線:自身の首相時代に退陣を迫ってきた石破氏への“当てこすり”という側面も指摘されており、個人的な感情や過去の政局が影を落としているという見方もあります。
また、この発言をどう受け止めるかは、人によって大きく異なります。
- 「率直で分かりやすい」「政治家としての本音が見える」と前向きに評価する声
- 「品がない」「分断をあおる」「いつまで過去の因縁で批判を続けるのか」といった否定的な声
いずれにしても、麻生氏の発言は、単なる一政治家のコメントにとどまらず、
- 前政権への評価
- 現政権への支持
- 党内の主導権争い
- 政治家同士の長年の関係性
といった複数の要素が絡み合う、象徴的な出来事として受け止められています。
有権者に問われる「政治の見方」
今回のニュースは、私たち有権者にとっても、「政治家の発言をどう評価するか」「政権の良し悪しを何で判断するか」を考えるきっかけになり得ます。
- 「どよーん」「明るい」といったイメージ表現に引きずられず、具体的な政策や成果を見ること
- 党内の批判や異論が出ることを「裏切り」とだけ見るのではなく、「健全な議論」としての側面も踏まえること
- ベテラン政治家の経験に基づく指摘と、時に行き過ぎた攻撃的な物言いをどう切り分けて受け止めるか
こうした視点を持つことが、政局の表面的な「誰が誰を批判した」という話題にとどまらず、「日本の政治がどこへ向かっているのか」を見通すために大切になってきます。
麻生太郎氏の「石破政権はどよーん」発言は、単なる一言ではなく、今の自民党の内部事情や、日本政治のあり方を映し出す鏡のようなニュースだと言えるでしょう。




