戦争のかたちが変わる中で──ウクライナ戦争と中国・ロシアの動きから見えるもの

ウクライナでの戦争が長期化するなか、世界の軍事バランスや各国の戦い方は大きく変化しつつあります。

この記事では、

  • ウクライナ戦争から見えてきた中国軍機の行動パターン
  • ロシアが行っている夜間のデータ通信遮断と住民の反応
  • ロシアがイラン製「シャヘド」無人機に空対空ミサイルを搭載しようとしている狙い

という3つのニュースをもとに、「今の戦争」がどのように変わってきているのかを、なるべくわかりやすく解説します。

1. ウクライナ戦争から読み解く、中国軍機は有事にどう動くのか

ウクライナでの戦争は、中国にとっても「戦い方を研究するための大きな教材」になっています。とくに注目されているのが、航空戦力と無人機(ドローン)の使い方です。

中国がウクライナ戦争から学んだポイント

防衛研究機関などの分析によると、中国人民解放軍はウクライナ戦争を通じて、次のような点を重視するようになったとされています。

  • 航空優勢の獲得が想像以上に難しいことへの気づき
  • 長距離から精密に攻撃できるスタンドオフ兵器(巡航ミサイル・弾道ミサイルなど)の重要性
  • 有人機と無人機を組み合わせる「チーム戦」的な運用の強化
  • 強力な防空システムを整え、敵のミサイルやドローンを多層的に迎撃する必要性

中国はすでに、偵察・攻撃が一体となった大型ドローンや、ステルス型攻撃無人機を多数開発しており、航空ショーなどでその存在をアピールしています。ただし、それらがどこまで実際に配備されているかは、海外の軍事専門サイトなどは慎重に見ているとされています。

有事の中国軍機はどう動くと見られているか

安全保障を専門とするメディアの分析では、ウクライナ戦争でのロシア軍の失敗や苦戦ぶりをふまえ、中国軍機が有事にとるとみられる行動には、いくつかの特徴が指摘されています。

  • 平時には相手国の防空識別圏のギリギリまで接近し威嚇飛行を行うが、有事には同じ飛び方はできない可能性が高い
  • アメリカや台湾、日本の防空網を正面から突破するのは難しいため、遠距離からのミサイル攻撃などスタンドオフ攻撃に重点を置くと見られる
  • ステルス戦闘機J-20などの高性能機は、敵レーダーの隙間を突くような運用が想定される

つまり、これまでのように「数で押す」航空作戦だけでなく、

  • 電子戦、サイバー攻撃
  • 無人機による偵察・攻撃
  • 長距離ミサイルでの拠点攻撃

といった手段を組み合わせ、「相手にまともに動く余地を与えない」ことを狙う方向に、中国空軍の考え方がシフトしていると分析されています。

核と「戦略的威嚇」も重視

さらに、防衛省傘下の研究機関のレポートでは、ウクライナ戦争でロシアの核戦力がアメリカなどの直接参戦を抑止したとされる点に、中国は強い関心を持っていると指摘されています。

このため、中国は台湾有事などを想定し、

  • 核戦力の拡充
  • 弾道・巡航ミサイルなど長距離精密打撃能力の強化

を急いでいると分析されています。こうした動きは、戦争そのものだけでなく、「戦争を起こさせないための威嚇(抑止)」という文脈でも重要になってきます。

2. ロシアが夜間のデータ通信を遮断、無人機攻撃への備えと住民の不満

次に、ロシア国内で行われている夜間のデータ通信遮断のニュースです。これは、ウクライナ側などからの無人機(ドローン)攻撃に備えるために行われている措置と報じられています。

なぜ「夜間のデータ通信」を止めるのか

近年の戦争では、無人機がGPSや通信回線を用いて遠隔操作されるほか、ターゲット情報の送受信にもインターネットや携帯通信が使われます。

ロシアが夜間のデータ通信を制限している背景には、

  • 無人機を操縦・誘導するための通信経路を断つ
  • 攻撃を支える情報共有や座標送信を妨害する

という狙いがあると考えられます。このように、戦場だけでなく、一般市民が暮らすエリアでも通信の自由が制限されることは、現代の戦争の大きな特徴のひとつです。

住民からの不満が高まる理由

しかし当然ながら、データ通信の遮断は住民の生活に大きな影響を与えます。

  • オンラインでの仕事や学習ができない
  • 家族や友人との連絡が難しくなる
  • オンライン決済や配車サービスなどの日常的なサービスが使えない

といった不便が生じ、住民のあいだで不満やストレスが高まっていると報じられています。

戦争の影響は、前線だけでなく、国内の通信インフラや人々の生活の隅々にまで及びます。ロシアのこの例は、「安全対策」と「市民生活」のバランスをどう取るべきかという難しい問題を投げかけています。

3. ロシアがシャヘド無人機に空対空ミサイルを搭載、その狙いは

3つ目のニュースは、ロシアが使用するイラン製の「シャヘド」無人機空対空ミサイルを搭載しようとしている、というものです。

シャヘド無人機とは

「シャヘド」シリーズは、イランが開発した自爆型の無人機(ロイタリング・ミュニション)として知られています。比較的低コストで大量運用が可能で、ロシアはこれをウクライナへの攻撃に広く用いてきました。

これまでは主に、

  • 地上目標への自爆攻撃
  • エネルギー施設などインフラへの打撃

に使われてきましたが、ここに空対空ミサイルを搭載するという新たな試みが加わりつつあると報じられています。

なぜ無人機に「空対空ミサイル」を積むのか

ロシアが無人機に空対空ミサイルを装備しようとする狙いとしては、次のような点が考えられます。

  • 無人機を迎撃しに来るウクライナ側のヘリコプターや戦闘機を攻撃できるようにする
  • ウクライナ側の防空・迎撃コストをさらに引き上げる
  • 無人機自体を「移動する対空兵器」としても活用する

とくに注目されているのが、無人機が迎撃ヘリコプターにとって新たな脅威となりうる、という点です。従来、対空ミサイルからの攻撃を警戒していたヘリや戦闘機に対し、「見えにくい無人機からの空対空攻撃」が加わることになれば、迎撃任務はさらに危険になります。

戦場での「無人機対無人機」「無人機対有人機」の時代へ

中国の事例でも触れたように、ウクライナ戦争では無人機の役割が飛躍的に増大しました。ロシアによるシャヘド無人機の活用は、

  • 偵察
  • 攻撃
  • 対空戦闘

といった複数の任務を、無人機がこなす方向に進んでいることを示しています。

中国もすでに、有人機と無人機を連携させる「ロイヤル・ウイングマン」構想のような運用思想を取り入れ、ステルス無人機などの開発を急いでいると報告されています。これに対し、各国は対無人機防空システムの整備を競い合っている状況です。

4. 戦争の「見え方」が変わる時代に

ここまで見てきた3つのニュースは、それぞれ別の国・別の出来事ですが、共通しているのは、

  • 戦争における空と宇宙・サイバーの重要性が増していること
  • 無人機やミサイルが戦場の主役に近づいていること
  • その影響が一般市民の生活や通信にまで及んでいること

という点です。

中国はウクライナ戦争から多くを学び、航空戦力や無人機、ミサイル、さらには核戦力の強化に動いています。ロシアは、無人機攻撃を防ぐために自国の通信を制限したり、無人機自体を「空対空戦闘」に使おうとしたりするなど、従来とは異なるアプローチを試みています。

こうした動きは、戦争がますます「目に見えにくい」かたちで進み、情報・通信・無人機が複雑に絡み合う時代になっていることを示しています。

私たちにとっても、

  • ニュースで聞く「防空識別圏」「スタンドオフ攻撃」「対無人機防空」などの言葉
  • 通信障害やサイバー攻撃といった日常に近いリスク

が、じつは遠くの戦争と密接に関係している可能性があることを意識しておくことが大切だといえるでしょう。

参考元