米国政府閉鎖、未だ解決の糸口見えず ― トランプ大統領やジョンソン下院議長の対応とその影響

政府閉鎖の発生と現状

2025年10月1日(現地時間)、米国では2026会計年度(2025年10月1日から2026年9月30日)の歳出法案が成立しないまま、政府閉鎖に突入しました。これは、連邦議会がつなぎ予算案の成立に失敗したためであり、その後も連日のように上院で予算案の投票が行われましたが、賛成票が可決に必要な数に届かず、否決が続きました。閉鎖はすでに数日に及び、現時点では依然として解決への道筋が明らかになっていません

与野党の対立と社会保障政策

この政府閉鎖の大きな背景には、社会保障政策を巡る共和党と民主党の激しい対立があります。民主党は、2025年末で期限が切れる医療保険補助金の恒久的延長や、公的医療保険「メディケイド」の予算削減修正を求めています。一方、共和党はこれらをつなぎ予算に組み込まない方針を崩していません

これらの対立により、政府閉鎖は長期化のリスクを抱えています。過去の2018-19年の政府閉鎖は35日間続き、経済への打撃が大きかったとされ、その試算からも今回長期化した場合のリスクが懸念されています

政府閉鎖がもたらす具体的影響

  • 政府職員の一時帰休と給与支払い: 約75万人の政府職員に一時帰休が見込まれており、閉鎖中は無給となるものの、閉鎖終了後の給与支払いは保証されています
  • 経済指標公表の遅延: 米労働省や各政府機関による経済指標の公表が延期され、9月分の雇用統計の発表も遅れています。
  • 航空・交通分野: 連邦航空局(FAA)や運輸保安庁(TSA)は空の安全担当職員の継続勤務が求められており、航空管制官や空港保安検査官などは勤務を続けています。つまり、空港の安全基幹業務は維持されているものの、他の行政サービスや非必須業務には影響が広がっています
  • 観光や公共施設の影響: 国立公園や博物館など連邦政府が運営する施設の閉鎖が一部で発生しており、観光業界や関連事業にも影響が波及しています

トランプ大統領の対応

政府閉鎖の打開に向けて、トランプ大統領は共和・民主両党幹部との最終協議を重ねました。トランプ氏は「軍人たちの給与は必ず支払う」と強く表明し、軍関係者や国民の不安の軽減を試みています

しかし軍人給与のみを扱う個別法案には下院議長のジョンソン氏が反対し、議会内でも本予算成立を優先する立場が強まっています。このやりとりの中で、米国の軍人や公務員の生活への直接的な影響が注目されています。

マイク・ジョンソン下院議長への世論の圧力

政府閉鎖による生活への影響は米国民の日常にも及び、C-SPANの番組では、一般の視聴者からジョンソン下院議長へ「閉鎖の影響で子供たちが危険にさらされる」と直接訴える場面が放映されました。このような具体的な市民の声が、議会に対して社会的・政治的な圧力を増しています。

今後の展望

  • 現在、政府機関の閉鎖は一部に限られているため、社会保障や安全保障、医療保険といった基幹業務は継続されています。
  • 与野党双方とも、社会保障政策の協議を前提に予算成立へ動く可能性があります。ただし、状況が膠着した場合には、市民生活や経済、雇用にさらに大きな影響が広がるリスクがあります
  • 閉鎖長期化による国民の不満はトランプ政権、ひいては共和党側へ向かう可能性が高く、各党とも世論を意識した柔軟な対応が求められています
  • 前回の政府閉鎖が35日間続いたことから、今後も予断を許さない状況が続きそうです

経済への影響

前回の米政府閉鎖では、GDPが大幅に減少し、経済的損失が恒久的に残りました。仮に今回も長期化した場合、実質GDPは前期比年率0.6%下振れる計算がされており、米国内のみならず世界経済にも悪影響が拡大する懸念があります

国民・企業・市場に与える影響まとめ

  • 公務員: 一時帰休、給与遅延、安全保障などの基幹業務は継続
  • 企業: 観光・公共事業・航空・金融市場など幅広く影響
  • 市民生活: 行政サービスの遅延、社会保障・医療などへの不安
  • 市場: 株価・債券市場の不安定化、信用リスク拡大

政府閉鎖を巡る最新動向

上院では現在もつなぎ予算法案の投票が繰り返されているものの、今のところ可決には至っていません。もし、次回の投票でもつなぎ予算案が否決された場合、政府閉鎖は翌週以降も継続し、経済・社会的影響の深刻化が懸念されます

米国政府、議会、そして国民は、問題解決のための合意形成に注目しています。トランプ大統領の強いリーダーシップ、ジョンソン下院議長の政策手腕、市民の切実な声、どれも今後の展開を左右する重要な要素です。

政府閉鎖の長期化は、多くの業界や国民にとって困難な状況をもたらします。一日も早い予算成立と安定した行政運営が期待されます。

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