トランプ大統領のFRB理事解任権を巡る歴史的判決へ 最高裁が21日に口頭弁論
米連邦最高裁判所は1月21日、トランプ大統領によるFRB(連邦準備制度理事会)のリサ・クック理事の解任を巡る訴訟の口頭弁論を実施します。この裁判は、大統領の経済政策に関する権限とFRBの独立性という、米国の経済体制の根本に関わる重要な判例となる見通しです。
解任を巡る経緯
事の発端は2025年8月25日にさかのぼります。トランプ大統領はクック理事に対し、住宅ローン詐欺の疑いを理由として解任を通告しました。クック理事が2021年にジョージア州とミシガン州で不動産を購入した際、両方の物件を「主たる住居」として住宅ローン申請を行ったというのが、その根拠でした。
しかし、クック理事はこの解任を不服として提訴しました。クック理事の主張によれば、この疑惑は「根拠が薄弱」であり、実際にはFRBの政策決定に対する政治的報復であると指摘しています。
下級裁判所の判断
ワシントンの連邦地裁は、クック理事の主張を認めました。裁判所は、トランプ大統領の主張は解任の十分な理由にはならないとして、解任の差し止めを命じました。その後、連邦高裁もトランプ大統領の差し止め撤回要求を退けたため、大統領は最高裁に上訴する運びとなったのです。
最高裁も2025年10月にこの差し止めの維持を決定し、本格的な審理は2026年1月21日に設定されました。
憲法上の主要争点 「正当な理由」の解釈
この訴訟の中心争点は、FRB理事を解任するために大統領に必要な「正当な理由」とは何かという、法的に未確定の問題です。
トランプ政権側は、近年の最高裁判例、特にセイラ・ロー事件(Seila Law LLC v. CFPB, 2020)とコリンズ・イエレン事件(Collins v. Yellen, 2021)を論拠としています。これらの判例では、大統領の行政府に対する広い権限が認められてきました。
一方、クック理事側はFRBの独立性を強調しており、政策判断をめぐる不同意だけを理由に理事を解任できれば、中央銀行としての機能が損なわれる危険性を主張しています。
FRBの独立性が焦点
法律専門家からは、この訴訟がFRBの独立性の維持に重要な影響を与えるとの指摘が相次いでいます。
ブッシュ子政権下で司法省の弁護士を務めたジョン・ユー氏は、「最高裁は中央銀行の独立性の剥奪が経済に影響を及ぼし得ると懸念していると思う」と述べました。
コロンビア法科大学院のカスリン・ジャッジ教授は、この訴訟が「大統領が経済政策を一方的に決定できる範囲を決める上で極めて重要だ」と指摘。その上で、「連邦最高裁はこれまで大統領権限を拡大解釈する姿勢をとってきたが、無制限というわけではない」と述べています。
イリノイ大学シカゴ校の法律学教授、スティーブ・シュウィン氏も、「日を追うごとに、そしてトランプ政権がFRBを攻撃する度に、最高裁は独立したFRBが持つ価値への認識を高めているのではないか」と語っています。
経済政策への影響
この訴訟の結果は、米国の経済政策運営に大きな影響を及ぼす可能性があります。FRBが独立した金融政策を実施できるかどうかは、インフレーション対策や利金利決定など、重要な経済政策に直結しているのです。
最高裁の判断によっては、大統領がFRB理事を容易に解任できる権限を得ることになり、その場合、政治的考慮が金融政策に直接反映される可能性も考えられます。一方、FRBの独立性が維持されれば、データに基づいた科学的な金融政策の運営が継続されることになるでしょう。
今後の注視点
カリフォルニア大学バークレー法科大学院のアーウィン・チェメリンスキー学長は、クック理事の解任を巡る訴訟では、FRBの独立性を守ることへの最高裁の関心が極めて重要になると話しています。
21日の口頭弁論では、大統領の権限とFRBの独立性のバランスに関する両者の主張が展開されます。この歴史的な判決は、米国の経済体制と民主主義の根本に関わるものとして、国内外から大きな関心が寄せられています。
最高裁が下す判断は、今後の米国の金融政策と大統領権限の在り方を大きく左右することになるでしょう。



