スペイン首相が強調する「ガザのジェノサイド」――欧州の対応、その失敗と分断

はじめに

2025年9月現在、パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラエルによる軍事攻撃と深刻な人道危機が世界で大きな議論を呼んでいます。なかでも「ジェノサイド」(集団殺害)という言葉が欧州の指導者から明言されるようになり、欧州連合(EU)内外で激しい論戦や立場の違いが顕在化しています。本記事では、スペイン首相の主張と欧州各国の対応、その背景にある分断と課題をわかりやすく解説します。

スペイン・サンチェス首相が示した危機感

2025年6月、スペインのペドロ・サンチェス首相は、「ガザ地区はジェノサイドの壊滅的な状況にある」と明言しました。特にEUに対し、イスラエルとの連合協定の即時停止を求める強い立場を明確に取りました。この発言は、ガザ紛争における国際社会の対応、とりわけ欧州諸国の態度を一層問うものとなっています。

  • サンチェス首相は以前からガザへの軍事行動を厳しく批判
  • 今回は「ジェノサイド」という明確な表現を用い、国際法違反の疑いを指摘
  • この姿勢はスペイン国内外で賛否両論を巻き起こしている

さらに、スペインの首相は「ジェノサイド国家とは取引しない」と国会で明言しており、イスラエル政府がスペイン大使を呼び抗議するなど、波紋が広がっています。

欧州内で分かれる対応――失敗の指摘と二重基準

サンチェス首相は、欧州諸国のガザ対応について「完全に失敗した」と断言しました。これは単なる行動不足だけでなく、人権や国際法の価値における二重基準をも厳しく批判するものです。彼は「欧州の信頼性自体が損なわれかねない」と警鐘を鳴らしました。

  • イスラエルへの厳しい対応を求めるスペインやアイルランド、ベルギーなどが急進的な立場に
  • 一方でフランス、ドイツ、オーストリアなどは依然としてイスラエル擁護や中立の姿勢に傾きやすい
  • 結果としてEU27か国の足並みが揃わず、対イスラエル政策も事実上「各国判断」に委ねられている

このような温度差は、加盟国の歴史観や国内世論の違い、外交・安全保障政策の難しさを反映しています。

欧州諸国・各国の立場と反応

欧州各国の政府や主要都市の首長も独自の声明を発しています:

  • スペイン:G7やEU首脳会議、国会などあらゆる場で「ジェノサイド」認定を強調し、実効性ある制裁や経済関係の見直しを主張
  • オランダ(アムステルダム市長):政府に対し「ガザの飢餓阻止」を要求。市の枠を越え「人命救助の専念」を提言
  • イタリア:メローニ首相は「国際法に則らない行動は受け入れ難い」とイスラエルに自制を要求
  • ドイツ:メルツ首相が「早急な飢餓阻止」を明言。ワーデフール外相も対イスラエル新対応協議を公表
  • フランス・英国・カナダ:共同声明で「ガザ戦争終結とパレスチナ国家設立の道筋」をイスラエルに要請

EU外交――意見が分かれるガザ政策

EUの外相級の会合や特別首脳会議でも、「どのようにガザ危機に対処すべきか」を巡って加盟国の意見は平行線をたどっています。即時停戦、制裁、経済協定停止、イスラエルとの関係整理など、多様な政策が議論されながらも
「全会一致」による合意形成は困難を極めています。

特に「EU・イスラエル連合協定を停止する」というスペインの要求は、実現へのハードルが非常に高い状況です。

欧州上級副委員長・国際社会からの指摘

欧州の上級副委員長も、「ガザでのジェノサイドと見なされる事態」そして「欧州が目立った対応策を打てていない現状」の深刻さを懸念しています。国際人権団体も強い警告を発しており、ガザの状況は「生活そのものの破壊」と表現されています。

イスラエル・パレスチナ紛争をめぐる背景

2023年、イスラム組織ハマスによる攻撃を契機にイスラエル軍がガザ地区へ本格的な軍事行動を開始。それから2年以上が経過した現時点でも、ガザ地区は度重なる爆撃と封鎖、極度の食料・医療・生活物資不足に苦しんでいます。

  • イスラエル側は「自衛権」を主張しつつ、ガザの75%を軍事占領する計画を公表
  • 市民への被害規模が国際的な懸念・非難の的となる
  • 欧州諸国では政府・議会・市民社会で「イスラエル支持」と「人権重視」との間に根深い対立

特に欧州社会では、「ウクライナ問題」など他の紛争との対応の違いにも批判の目が向けられています。「ダブルスタンダード(二重基準)」という指摘は欧州の信頼性そのものを揺るがしかねません。

ガザ危機と国際世論——連帯・非難・期待

ガザ地区では現在も甚大な被害が続き、多くの市民が命、生活基盤を脅かされています。この危機的状況に対し、欧州だけでなく世界各国から様々な声明や人道支援がなされていますが、「根本的な解決策」「持続的な支援」といった観点では正面からの答えが出ていません。

  • EUや各国政府・国際機関には、即時停戦の呼びかけや人道回廊の確保、戦後の復興支援などが強く求められている
  • 同時に、国際社会全体の「信頼性」を問う声が高まりつつある

今後の展望と私たちへの問い

ガザで進む深刻な人道危機とそれをめぐる欧州の対応の失敗、そして「ジェノサイド」という深刻な表現を伴う批判は、国際社会全体が直面する重要な課題を象徴しています。

  • EUがいかなる役割を果たすべきなのか
  • 人道的価値と現実政治のはざまでどのような選択と連帯が必要なのか

これからも事態の推移と各国、それぞれの立場が人権と平和にどう向き合うかを注視し続ける必要があるでしょう。

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